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【伊藤博文・坂本龍馬】大日本帝国に敵はなし

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 坂本龍馬は勝海舟からの電報を受け取ると「やはり、そうなったか」と呟く。坂本龍馬率いる海軍はインドネシアを出発するとオーストラリアに向かう。いまや敵国となったイギリスの植民地へ。




 坂本龍馬がシドニーに着いたのは出発してから数日後だった。イギリスに反撃の準備をさせないには十分な速さだった。砲撃を開始して半日、港には早くも白旗が掲げられていた。これで勝先生にいい報告ができる。坂本龍馬は満足していた。あとは本土の伊藤博文に事の顛末を報告すればいい。


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 伊藤博文は執務室で報告を受けると「やはりな」と思った。インドに寄るようにイギリス側から話があったときから、何か裏があると感じていた。別にインドネシアからベトナム方面へ直接向かえばいいのだから。勝海舟への指示は正解だったのだ。伊藤博文は自身の頭の回転の速さを自画自賛していた。あとはオーストラリアをどうするかである。


 伊藤博文は以前からオーストラリアにも金鉱があることを知っていた。イギリス人によって掘り尽くされているかもしれないが、足しにはなるだろう。


 今回の日英同盟の解消で大日本帝国は再び孤独になった。そうは言っても、北米中米とインドネシアにオーストラリアが領土になっている。特にパナマ海峡を手に入れたのは大きかった。もし、フロリダの軍港が完成すれば、パナマを経由してイギリス本土へ攻め入ることもできる。そうなる日もそう遠くはあるまい。


 オーストラリアをどう活用するか。迷った伊藤博文は大久保利通を呼び出した。


「大久保、オーストラリアはどう使うのがいいと思う?」


「そうですね……。まずはイギリス人が反乱を起こさないように、徹底的に搾取すべきかと。アメリカの二の舞にならないように」


 確かにその通りだった。アメリカの反乱では自動式機関銃で抵抗されたという苦い経験をしている。あれだけは勘弁だった。そうなると、金鉱に残った金を採掘させつつ、弱らせるしかない。しかし、それだけでは本土が繫栄することには繋がらない。何かないかと考えたとき、思いだしたのは「タイプライター」の存在だった。それだ、タイプライターを本格的に導入すればいい。そうすれば、さらに女性の社会進出を後押しできる。富岡製糸場や電話交換手に続くように、女性にも活躍の場を与えればいいのだ。


 そこで伊藤博文はあることに気がついた。女性の社会進出が推進されると、必然的に共働きの世帯が増える。それでは子供を安心して育てられず、将来の担い手を失うことになる。それだけは避けたかった。では、こうしてはどうだろうか。ベビーシッターを雇うのに補助金を出せばいいのだ。現在はベビーシッターを雇用できるのは富裕層に限られている。裾野を広げればいい。これで経済は発展するだろう。


 伊藤博文は大久保利通を下がらせて側近に指示する。一人になったとき気づいた。北米中米とインドネシア、オーストラリアを手に入れた大日本帝国は世界最大級の領土を持つ国家になった。イギリスと同等かそれ以上に。まさに今、大日本帝国が「日出る国」から「日の沈まない国」になったのだ。
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