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【伊藤博文】迷います。少し考えさせてください

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 突然フランスから持ち掛けられた話に、伊藤博文は困惑していた。フランスは日英同盟を知っているはずだ。そして、イギリスとフランスはアフリカをめぐって争いが続いている。今、フランスと手を組めば、イギリスへの反逆行為になってしまう。イギリスに歯向かえば、間違いなくインドを拠点に攻め入ってくるだろう。フランスへの回答は決まった。「イギリスとの同盟を破るわけにはいかない」と。


 フランスからは「仕方がない」との返事が返ってきた。一歩間違えると、戦争になりかねなかったので、伊藤博文はホッとした。フランスも切羽詰まっているに違いない。なにせロシア帝国、ドイツ、オーストリアに包囲されているのだから。藁にもすがる思いなのだろう。


 伊藤博文は次の政策を考えていた。女性の社会進出によって、国内の経済も安定してきた。やはり、ここは軍備の拡大をすべきだろう。しかし、平和な時に軍用品の開発は反対にあうかもしれない。なにかいい方法はないか。そうだ、最近発明されたシネマとやらを使おう。噂によれば、撮影した映像を投影できるものだという。内容はすでに決まっている。




 映画公開初日。伊藤博文は現地に入ると、盛況ぶりに満足した。この観客すべてを虜にする自信があった。


「しかし、うまくいくでしょうか?」


 側近が小声で尋ねてくる。


「何を弱気になっている。成功するに決まっているだろう」


「そうだといいんですが……」




 側近の考えは杞憂に終わった。やはり、自分の考えが正しかったのだ。伊藤博文は最高の気分だった。公開後、新聞では内容が褒めちぎられていた。「我が国の領土アメリカ観光のすすめ」「わが軍の大活躍を見よう」という記事で。そう、伊藤博文の目的は一つ。戦争への機運を高めるために「領土が増えるとどういうメリットがあるか」「軍隊の勇姿を見せること」だった。これで世間は戦争に乗り気になるだろう。伊藤博文は自分のプロパガンダがうまくいったことに満足していた。次のターゲットは決まっていた。間違いなく勝てる。そう思うと、伊藤博文は笑いが止まらなかった。
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