4 / 44
【伊藤博文】それ、買います!
しおりを挟む
伊藤博文は自身の頭の良さに酔いしれていた。
カナダとは同盟国になったし、メキシコでは軍人派が選挙に勝った。これでアメリカも下手に手出しはできないはずだ。ただ、あくまでもけん制に過ぎない。あちらが本気を出せば、負ける可能性が高い。アメリカの軍備を大きく越える必要がある。
コンコンコン。ノックの音がする。
「入りたまえ」
「伊藤首相、パリの万博に派遣していた使節団が帰国しました」
パリ万博への使節団の派遣は、あくまでも他国との関係を悪化させないのが目的だ。使節団が帰ってきたことなど、どうでも良かった。それよりもアメリカをどうするかだ。
「もう一つ、ご報告がございます」
もう一つ?
「ヨーロッパを外遊していた使節団がダイナマイトなるものを持ち帰りまして」
「ダイナマイト? なんだ、それは」
「はあ、どうもトンネルを作るのに使う爆薬だとか」
トンネルを作るための爆薬。残念ながら、トンネルを作る計画はない。我が国には不要だ。待て、爆薬?
「それは、どのようにして爆発させるのだ?」
「火をつけると爆発するようです」
「つまり、ダイナマイトを埋めて、それを銃撃すれば爆発する、そう考えて問題ないな?」
「原理としては、そうなるかと。まさか、対アメリカ戦に使うおつもりですか?」
なんだ、凡人でも思いつく作戦だったか。
「それに、ダイナマイトの発明者は、アメリカとイギリスで売ろうと考えているとか」
アメリカとイギリスで流通する! それは何がなんでも避けねばならない。
「よし、もう下がって大丈夫だ。ついでに大蔵省の大久保にここへ来るように伝えてくれ」
「大久保、相談がある。我が国の財政はどうだ?」
「首相もご存知の通り、すべてうまくいっています。アラスカで採掘している金のおかげです」
「じゃあ、武器を買ったらどうなる? 問題ないか?」
「それは……ものによりますね」
伊藤博文は手短に説明した。
「世界は広いですな。面白い発明です。大丈夫です、買えます」
「それは、権利ごと買い上げてもか?」
大久保利通は飲んでいたお茶を盛大に吐き出す。
「ゴホン、今なんとおっしゃいましたか?」
「その発明者から権利ごと買い取るんだ。そうすれば諸外国は作れないし、我が軍は大きな武器を得ることになる」
「なるほど。試算してみます」
「試算? どれくらいかかるんだ、試算には」
「まあ、数週間あれば」
「数週間!? それでは遅い! 数日で終わらせろ。これは首相としての命令だ」
机をドンと叩くと湯呑が倒れ、辺りにお茶がこぼれる。「熱い!」と大久保。
「ひとまず、やってみます!」
「ひとまず? 全力で取り組め! 数日だ。それができなければクビにする!」
大久保利通は大慌てで執務室から飛び出した。「数日なんて無茶苦茶な」と叫びながら。
数日してからだった。伊藤博文のもとに試算結果が届いたのは。
悪くない報告だった。多少、予算をオーバーしそうだが、よしとしよう。我が国が発展するためなのだ。それに、他国を領土にできれば、帳消しになるだろう。
伊藤博文はダイナマイトの発明者ノーベルに一報を入れた。「権利ごと買わせてくれ」と。
カナダとは同盟国になったし、メキシコでは軍人派が選挙に勝った。これでアメリカも下手に手出しはできないはずだ。ただ、あくまでもけん制に過ぎない。あちらが本気を出せば、負ける可能性が高い。アメリカの軍備を大きく越える必要がある。
コンコンコン。ノックの音がする。
「入りたまえ」
「伊藤首相、パリの万博に派遣していた使節団が帰国しました」
パリ万博への使節団の派遣は、あくまでも他国との関係を悪化させないのが目的だ。使節団が帰ってきたことなど、どうでも良かった。それよりもアメリカをどうするかだ。
「もう一つ、ご報告がございます」
もう一つ?
「ヨーロッパを外遊していた使節団がダイナマイトなるものを持ち帰りまして」
「ダイナマイト? なんだ、それは」
「はあ、どうもトンネルを作るのに使う爆薬だとか」
トンネルを作るための爆薬。残念ながら、トンネルを作る計画はない。我が国には不要だ。待て、爆薬?
「それは、どのようにして爆発させるのだ?」
「火をつけると爆発するようです」
「つまり、ダイナマイトを埋めて、それを銃撃すれば爆発する、そう考えて問題ないな?」
「原理としては、そうなるかと。まさか、対アメリカ戦に使うおつもりですか?」
なんだ、凡人でも思いつく作戦だったか。
「それに、ダイナマイトの発明者は、アメリカとイギリスで売ろうと考えているとか」
アメリカとイギリスで流通する! それは何がなんでも避けねばならない。
「よし、もう下がって大丈夫だ。ついでに大蔵省の大久保にここへ来るように伝えてくれ」
「大久保、相談がある。我が国の財政はどうだ?」
「首相もご存知の通り、すべてうまくいっています。アラスカで採掘している金のおかげです」
「じゃあ、武器を買ったらどうなる? 問題ないか?」
「それは……ものによりますね」
伊藤博文は手短に説明した。
「世界は広いですな。面白い発明です。大丈夫です、買えます」
「それは、権利ごと買い上げてもか?」
大久保利通は飲んでいたお茶を盛大に吐き出す。
「ゴホン、今なんとおっしゃいましたか?」
「その発明者から権利ごと買い取るんだ。そうすれば諸外国は作れないし、我が軍は大きな武器を得ることになる」
「なるほど。試算してみます」
「試算? どれくらいかかるんだ、試算には」
「まあ、数週間あれば」
「数週間!? それでは遅い! 数日で終わらせろ。これは首相としての命令だ」
机をドンと叩くと湯呑が倒れ、辺りにお茶がこぼれる。「熱い!」と大久保。
「ひとまず、やってみます!」
「ひとまず? 全力で取り組め! 数日だ。それができなければクビにする!」
大久保利通は大慌てで執務室から飛び出した。「数日なんて無茶苦茶な」と叫びながら。
数日してからだった。伊藤博文のもとに試算結果が届いたのは。
悪くない報告だった。多少、予算をオーバーしそうだが、よしとしよう。我が国が発展するためなのだ。それに、他国を領土にできれば、帳消しになるだろう。
伊藤博文はダイナマイトの発明者ノーベルに一報を入れた。「権利ごと買わせてくれ」と。
33
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
明日の海
山本五十六の孫
歴史・時代
4月7日、天一号作戦の下、大和は坊ノ岬沖海戦を行う。多数の爆撃や魚雷が大和を襲う。そして、一発の爆弾が弾薬庫に被弾し、大和は乗組員と共に轟沈する、はずだった。しかし大和は2015年、戦後70年の世へとタイムスリップしてしまう。大和は現代の艦艇、航空機、そして日本国に翻弄される。そしてそんな中、中国が尖閣諸島への攻撃を行い、その動乱に艦長の江熊たちと共に大和も巻き込まれていく。
世界最大の戦艦と呼ばれた戦艦と、艦長江熊をはじめとした乗組員が現代と戦う、逆ジパング的なストーリー←これを言って良かったのか
主な登場人物
艦長 江熊 副長兼砲雷長 尾崎 船務長 須田 航海長 嶋田 機関長 池田
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)
俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。
だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。
また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。
姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」
共々宜しくお願い致しますm(_ _)m
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
第二艦隊転進ス 進路目標ハ未来
みにみ
歴史・時代
太平洋戦争末期 世界最大の46㎝という巨砲を
搭載する戦艦
大和を旗艦とする大日本帝国海軍第二艦隊 戦艦、榛名、伊勢、日向
空母天城、葛城、重巡利根、青葉、軽巡矢矧
駆逐艦涼月、冬月、花月、雪風、響、磯風、浜風、初霜、霞、朝霜、響は
日向灘沖を航行していた
そこで米潜水艦の魚雷攻撃を受け
大和や葛城が被雷 伊藤長官はGFに無断で
作戦の中止を命令し、反転佐世保へと向かう
途中、米軍の新型兵器らしき爆弾を葛城が被弾したりなどもするが
無事に佐世保に到着
しかし、そこにあったのは………
ぜひ、伊藤長官率いる第一遊撃艦隊の進む道をご覧ください
ところどころ戦術おかしいと思いますがご勘弁
どうか感想ください…心が折れそう
どんな感想でも114514!!!
批判でも結構だぜ!見られてるって確信できるだけで
モチベーション上がるから!
自作品 ソラノカケラ⦅Shattered Skies⦆と同じ世界線です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる