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とある山荘での殺人

眠れぬ夜

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 殺人事件が起きたのだ、僕は神経が高ぶって寝るどころではなかった。リビングに行くと梶田がいた。おそらく事件について考えているに違いない。

「それで、この事件どう思う? やっぱり発火装置を使って殺したのかなぁ」
「まだ分からない。そうかもしれないし、違うかもしれない。情報が少ない段階で推理すると先入観から間違った結論を出してしまう。ただ、あの死体は気になるところがあった」
「気になるところ?」
「ああ。もし、発火装置で体を焼かれたら、どうなると思うかい?」
「そりゃあ、熱さのあまり悶えて……」
 想像するだけで身震いがする。
「そう、熱さのあまり暴れまわるはずだ」
「確かに、言われてみれば、あの死体にそんな様子はなかったな」
「つまり、犯人が睡眠剤を飲ませたか、死因が焼死じゃないか、のどちらかだろうさ」


 とうとう太陽が昇るまで一睡もすることができなかった。梶田はそうでもなかったらしい。暖炉の前で椅子に座って眠りこけていた。



「今日の朝食です」
 佐々木さんがみんなの前に料理を並べ出す。昨日の賑やかさはどこへやら、しーんと静まり返っている。そんな中、鹿島刑事だけがいつも通りだった。

「この朝食を食べ終わったら、大事な話がある」
「もしかして、刑事さんの名推理が聞けたりするのかな。アニメみたいでなんだかワクワクしてきたよ」田口さんが不謹慎な発言をする。
「さぁて、どうかな? もしそうなったら、隣の奴はどんな顔をするのかな」
 刑事は梶田の方を見るが、彼は黙々とご飯を食べていた。


「さあ、朝食も終わった。さて、俺の推理を聞いてもらおうか」

 「犯人は冴島って奴に違いない」「いや、オーナーだろ」と飯田さんと田口さんが口にする。人を犯人呼ばわりなんて、とんでもない奴だ。

「静粛に。俺は焦らすつもりはない。ズバリ犯人は――オーナーの佐々木、お前だ」
 鹿島刑事は指で佐々木さんを指す。彼を見ると明らかに動揺していた。
「ちょっと待ってください! 私は犯人じゃないです。まさか、発火能力だからなんて理由ですか?」
「そうだ。現場には発火装置があった。簡単なトリックで誰でも犯行が可能と見せかけて、お前が発火能力でやったんだ!」
「そんな理不尽な!」
「あの、もちろん他にも佐々木さんが犯人だという証拠があるんですよね?」
 恐る恐る聞く。
「そんなものは必要ない! 俺の推理に間違いはない」
 そんなバカな。

「刑事さん、あなたは論理的思考をお持ちではないようだ」
 沈黙を貫いていた梶田がボソッと言う。
「俺の推理のどこに穴がある!」
「穴だらけじゃないか。今から論理的思考で犯人を指摘してみせようか」
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