大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹

文字の大きさ
上 下
13 / 13

最終話

しおりを挟む
 赤城は太平洋の波を切り裂きながら、ロサンゼルスに向かって進んでいた。山本五十六の目は鋭く、地平線の向こうに広がる敵の都市を見据えている。彼の心には冷徹な決意があり、戦局を見極める鋭い直感が働いていた。


 「井上率いる大和、南雲の高雄もすでに現地に到着している。これで、我が艦隊の準備は万全だ」


 山本は艦橋で戦況を把握しつつ、静かに言葉をつぶやいた。彼の中では、既に結論が見えていた。ロサンゼルスは、アメリカの航空産業の中心地であり、ここを攻撃すればアメリカは立ち上がる力を失う。


 「航空機産業を叩き潰せば、アメリカの反撃の芽を完全に摘むことができる。これで勝負が決まる」


 その時、空が唸りを上げ、零戦の編隊がロサンゼルス上空に飛来した。爆撃が開始され、炎が都市を飲み込んでいく。工場は次々と爆発し、煙が立ち昇る。地上ではパニックに陥った市民が逃げ惑い、軍事施設は無力化されていた。


 「攻撃は成功だな……」山本は遠くを見つめながらつぶやく。「これで終わりだ」


 その報告はすぐに大本営へと送られ、ルーズベルト大統領のもとへも届いた。アメリカ本土でこれほどの被害を受けたことは、これまで一度もなかった。西海岸は事実上の壊滅状態にあり、アメリカの防衛は脆弱になっていた。


 ホワイトハウスの執務室で、ルーズベルトは苦渋の決断を下す。軍事顧問たちが次々と報告を持ち込む中、彼は深く息を吸い込むと、静かに降伏の意思を表明した。


 「これ以上の戦闘は無意味だ……。我々は降伏する」


 その声は静かで、しかし決定的だった。瞬く間にその報告が世界中に伝わり、戦争は幕を下ろした。ドイツ、イタリア、日本の三か国は連合して勝利を収め、世界は新たな秩序のもとへと移り変わった。


 赤城の艦橋で、山本五十六は遠く水平線を見つめていた。彼の心の中には達成感と虚無感が入り混じりながらも、ただ一つの事実が刻まれていた。


 「勝った……。これが最後の戦いだった」


 目の前には静かな太平洋の海が広がっていた。戦火の終わりと共に、歴史は新たなページを刻み始めたのだった。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

ypaaaaaaa
2024.10.19 ypaaaaaaa

ハワイを取るのですか…またまた面白そうな物語ですね!これからもお待ちしております。あと米西戦争は898年ではなく1898年だと思います。

解除

あなたにおすすめの小説

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~

川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる …はずだった。 まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか? 敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。 文治系藩主は頼りなし? 暴れん坊藩主がまさかの活躍? 参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。 更新は週5~6予定です。 ※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

風を翔る

ypaaaaaaa
歴史・時代
彼の大戦争から80年近くが経ち、ミニオタであった高萩蒼(たかはぎ あおい)はある戦闘機について興味本位で調べることになる。二式艦上戦闘機、またの名を風翔。調べていく過程で、当時の凄惨な戦争についても知り高萩は現状を深く考えていくことになる。

蒼雷の艦隊

和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。 よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。 一九四二年、三月二日。 スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。 雷艦長、その名は「工藤俊作」。 身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。 これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。 これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。