大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹

文字の大きさ
上 下
12 / 13

【山本五十六】キスカ島を奪取せよ

しおりを挟む
「いよいよ、キスカ島が見えてきたか」


 それは、氷霧に覆われて、不気味な雰囲気をまとっている。山本五十六の行く末を暗示するかのようだった。


「悪天候が作戦の邪魔になりそうだ」山本五十六がつぶやくと、部下の一人が進言する。


「恐れながら申し上げます。ミッドウェー島での作戦のように、敵の視界は奪われているので、このまま零戦で爆撃してはいかがでしょうか」


「いや、そうはいかない。悪天候では、こちらの航空部隊にも不利に働く。アメリカ側はそれを利用して陸上戦に持ち込むはずだ。氷霧に隠れてゲリラ攻撃を仕掛けてくるかもしれん」


 氷霧。それは、敵味方どちらにも大きな影響を与える。山本五十六はこの氷霧を味方につけられることができれば、航空戦のみでキスカ島を陥落させられるかもしれないと考えた。


「氷霧、氷霧。待てよ、この作戦なら……。おい、君。偵察機に水を大量に載せて、キスカ島の敵基地上空に振りかけるように、航空兵に伝達を頼む」


 山本五十六の頭の中には、アメリカ軍を無力化させる作戦が出来上がっていた。




「順番完了しました!」


「よし、偵察機が水を振り撒き次第、順次零戦を発進させろ!」


「ちょっとお待ちください! 先ほど、氷霧が邪魔になると……」


「発想の転換だ。氷霧に水を振りかけて、地面を凍らせるんだ。そうすれば、アメリカ軍の動きを乱すことができる。その隙に敵を爆撃する、これが本作戦の趣旨だ」


「なるほど、それならば必ずや成功するでしょう」


「その言葉は勝つまで取っておきたまえ。戦いは勝敗が決まるまで、何が起こるか分からないからな」そう言う山本五十六も笑みを隠すことが出来ずにいた。




 数時間後、山本五十六たちが上陸すると、氷の地と化したキスカ島で足を滑らせるアメリカ兵という滑稽な光景が広がっていた。まるで、初めてスケートをした子供のように。


 山本は静かにその光景を見つめ、風に混じる氷霧の冷たさを感じながら、つぶやいた。


「勝つためには何でも使う。自然であろうと、策であろうと……」


 その時、通信兵が駆け寄ってきた。「山本長官、無線通信が入りました! 『アメリカ本土の都市ロサンゼルスを攻撃せよ』との命令です!」


 山本は冷静に頷き、キスカ島の氷霧の向こうに広がる次なる戦場を見据えた。


「いよいよだ……次はアメリカ本土か」


 彼の目に、一瞬の覚悟と決意が浮かんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~

川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる …はずだった。 まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか? 敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。 文治系藩主は頼りなし? 暴れん坊藩主がまさかの活躍? 参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。 更新は週5~6予定です。 ※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

風を翔る

ypaaaaaaa
歴史・時代
彼の大戦争から80年近くが経ち、ミニオタであった高萩蒼(たかはぎ あおい)はある戦闘機について興味本位で調べることになる。二式艦上戦闘機、またの名を風翔。調べていく過程で、当時の凄惨な戦争についても知り高萩は現状を深く考えていくことになる。

蒼雷の艦隊

和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。 よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。 一九四二年、三月二日。 スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。 雷艦長、その名は「工藤俊作」。 身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。 これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。 これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

処理中です...