8 / 13
【南雲忠一】海上封鎖を成し遂げろ
しおりを挟む
南雲のもとには「井上成美がマッカーサーをソロモン諸島へ追いやった」という情報が入ってきていた。南雲は頭の中で、いかにしてトラック島を迅速に攻略するかを考えていた。
「なあ、西本。君ならトラック島をどう攻略するかね」南雲はサンゴ礁に囲まれたトラック島を前に西本に問いかける。
南雲の問いかけに西本は考え込んでいたが、「機雷で動きを封じるのはいかがでしょうか」と意見した。
「機雷の設置? なぜ、そう考える」と南雲。
「オーストラリア北部での海戦により、マッカーサーはソロモン諸島へ逃げたと聞いています。我々が迅速に駆け付けなければ、奴を挟み撃ちにできません。そして、トラック島で戦力を消費するのも、よろしくないと考えます」
「なるほど、確かにここでまともに戦っては、兵も疲弊する。機雷の利用は実に合理的だ」
南雲はあごに手をやって、思考を巡らせる。素早くソロモン諸島へ到着するには、機雷敷設部隊と南雲が乗艦している高雄を中心とした艦隊と別行動をするのが最善だ。
では、誰に機雷の敷設を任せるべきか。南雲の頭の中では、すでに答えが出ていた。西本だ。彼はグアムでの上陸作戦を見事に成し遂げた。敵陣での任務にも関わらず、持ち前の冷静な判断で成功させている。西本以外に適任はいないだろう。
「西本、君に空母の指揮をとってもらいたい」南雲はゆっくりと切り出した。
「私にですか?」西本は南雲の指名に驚いたのか、目を丸くしている。
「そうだ、君だ。この艦隊には機雷敷設が可能な航空機を載せた空母がある。それの指揮を君に委ねる。敷設している間に我々はソロモン諸島目指して南下する。君は機雷を設置次第、こちらに追いついて欲しい」
「空母で高雄に追いつく!? いくら速度が近いとはいえ、無茶苦茶です。機雷を設置するのですから、時間がかかります」
「追いつけというのは、それくらいの速度で機雷設置を頼む、ということだ。君なら出来ると思うがね」
南雲の期待を受けて「成功させて見せます」と、西本は決意表明をする。
「そんなに固くなる必要はない。君なら完遂すると信じいている。健闘を祈る」南雲はそう言うと、西本の肩をポンと叩いた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
西本はトラック島の海上封鎖に苦労していた。自ら進言しておきながら、あまりにも機雷の設置範囲が広かったのだ。南雲に指名されたからには、期待を裏切るわけにはいかない。
「準備ができ次第、順次発進! 速やかに機雷を設置せよ!」西本が号令をかけるが、航空機は発進するそぶりを見せない。
「一体、どうなっている! 我々は高雄に追いつくためにも、本作戦を成功させねばならないのだぞ!」西本は整備兵を怒鳴りつける。
「こっちも全力で取り組んでいますよ! いくら命令とはいえ、限界があります。我々のことも考えてください。ロボットじゃないんですから、ローテーションで休憩をとる必要があるんです!」整備兵はスパナを振り回しながら、怒り狂っている。
西本はそう言われてハッとした。グアムでの上陸作戦を成功させて、今回も南雲から期待されている。西本は気づかないうちに「南雲の期待に応えなくては」と、自身を追い詰めていたのだ。そして、部下にプレッシャーを与えていた。これでは、事はうまく進まない。
「……。悪かった。慎重に、かつ、確実に設置してくれ。時間は気にするな。全責任は俺が取る!」
しかし、ソロモン諸島の戦闘が彼の肩にのしかかる。果たして、間に合うのか――。高雄の艦影が消えかける中、西本は最後の指示を整備兵に告げた。
「なあ、西本。君ならトラック島をどう攻略するかね」南雲はサンゴ礁に囲まれたトラック島を前に西本に問いかける。
南雲の問いかけに西本は考え込んでいたが、「機雷で動きを封じるのはいかがでしょうか」と意見した。
「機雷の設置? なぜ、そう考える」と南雲。
「オーストラリア北部での海戦により、マッカーサーはソロモン諸島へ逃げたと聞いています。我々が迅速に駆け付けなければ、奴を挟み撃ちにできません。そして、トラック島で戦力を消費するのも、よろしくないと考えます」
「なるほど、確かにここでまともに戦っては、兵も疲弊する。機雷の利用は実に合理的だ」
南雲はあごに手をやって、思考を巡らせる。素早くソロモン諸島へ到着するには、機雷敷設部隊と南雲が乗艦している高雄を中心とした艦隊と別行動をするのが最善だ。
では、誰に機雷の敷設を任せるべきか。南雲の頭の中では、すでに答えが出ていた。西本だ。彼はグアムでの上陸作戦を見事に成し遂げた。敵陣での任務にも関わらず、持ち前の冷静な判断で成功させている。西本以外に適任はいないだろう。
「西本、君に空母の指揮をとってもらいたい」南雲はゆっくりと切り出した。
「私にですか?」西本は南雲の指名に驚いたのか、目を丸くしている。
「そうだ、君だ。この艦隊には機雷敷設が可能な航空機を載せた空母がある。それの指揮を君に委ねる。敷設している間に我々はソロモン諸島目指して南下する。君は機雷を設置次第、こちらに追いついて欲しい」
「空母で高雄に追いつく!? いくら速度が近いとはいえ、無茶苦茶です。機雷を設置するのですから、時間がかかります」
「追いつけというのは、それくらいの速度で機雷設置を頼む、ということだ。君なら出来ると思うがね」
南雲の期待を受けて「成功させて見せます」と、西本は決意表明をする。
「そんなに固くなる必要はない。君なら完遂すると信じいている。健闘を祈る」南雲はそう言うと、西本の肩をポンと叩いた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
西本はトラック島の海上封鎖に苦労していた。自ら進言しておきながら、あまりにも機雷の設置範囲が広かったのだ。南雲に指名されたからには、期待を裏切るわけにはいかない。
「準備ができ次第、順次発進! 速やかに機雷を設置せよ!」西本が号令をかけるが、航空機は発進するそぶりを見せない。
「一体、どうなっている! 我々は高雄に追いつくためにも、本作戦を成功させねばならないのだぞ!」西本は整備兵を怒鳴りつける。
「こっちも全力で取り組んでいますよ! いくら命令とはいえ、限界があります。我々のことも考えてください。ロボットじゃないんですから、ローテーションで休憩をとる必要があるんです!」整備兵はスパナを振り回しながら、怒り狂っている。
西本はそう言われてハッとした。グアムでの上陸作戦を成功させて、今回も南雲から期待されている。西本は気づかないうちに「南雲の期待に応えなくては」と、自身を追い詰めていたのだ。そして、部下にプレッシャーを与えていた。これでは、事はうまく進まない。
「……。悪かった。慎重に、かつ、確実に設置してくれ。時間は気にするな。全責任は俺が取る!」
しかし、ソロモン諸島の戦闘が彼の肩にのしかかる。果たして、間に合うのか――。高雄の艦影が消えかける中、西本は最後の指示を整備兵に告げた。
2
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
蒼雷の艦隊
和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。
よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。
一九四二年、三月二日。
スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。
雷艦長、その名は「工藤俊作」。
身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。
これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。
これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。
皇国の栄光
ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年に起こった世界恐慌。
日本はこの影響で不況に陥るが、大々的な植民地の開発や産業の重工業化によっていち早く不況から抜け出した。この功績を受け犬養毅首相は国民から熱烈に支持されていた。そして彼は社会改革と並行して秘密裏に軍備の拡張を開始していた。
激動の昭和時代。
皇国の行く末は旭日が輝く朝だろうか?
それとも47の星が照らす夜だろうか?
趣味の範囲で書いているので違うところもあると思います。
こんなことがあったらいいな程度で見ていただくと幸いです
日は沈まず
ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。
また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。
日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。
戦国三法師伝
kya
歴史・時代
歴史物だけれども、誰にでも見てもらえるような作品にしていこうと思っています。
異世界転生物を見る気分で読んでみてください。
本能寺の変は戦国の覇王織田信長ばかりではなく織田家当主織田信忠をも戦国の世から葬り去り、織田家没落の危機を迎えるはずだったが。
信忠が子、三法師は平成日本の人間が転生した者だった…
戦神の星・武神の翼 ~ もしも日本に2000馬力エンジンが最初からあったなら
もろこし
歴史・時代
架空戦記ファンが一生に一度は思うこと。
『もし日本に最初から2000馬力エンジンがあったなら……』
よろしい。ならば作りましょう!
史実では中途半端な馬力だった『火星エンジン』を太平洋戦争前に2000馬力エンジンとして登場させます。そのために達成すべき課題を一つ一つ潰していく開発ストーリーをお送りします。
そして火星エンジンと言えば、皆さんもうお分かりですね。はい『一式陸攻』の運命も大きく変わります。
しかも史実より遙かに強力になって、さらに1年早く登場します。それは戦争そのものにも大きな影響を与えていきます。
え?火星エンジンなら『雷電』だろうって?そんなヒコーキ知りませんw
お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる