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集結
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「魔王討伐のために集まったプレイヤーの数は、と。ざっと五十人ってところね。多いのか少ないのか分からないわ」
「僕はどれだけ人数を集めても勝てる気がしないな。この前実力を見て感じたよ。それに魔王を弱らせたとき用の『スリープ』もないし」
ブレスレットを見ると「スリープ」の隣にゼロと表示されている。
「まあ、魔王を眠らせるなんざ、無理だろうし、ないものはないんだ。全力を尽くすだけさ。って、おいお前アカリじゃねえか!」
「誰? ああ、マサムネね。久しぶり」
アカリという女性はマサムネさんの知り合いらしい。髪を耳にかけながらこっちに歩み寄る。
「こいつはな、俺と同じくテスターなんだ。それに『あふれ出る魔力』が使える!」
「『あふれ出る魔力』? なにそれ」
「聞いて驚くな、この魔法の効果は『他の魔法の残数を復活できる』だ。俺の言いたいことは分かるな? アカリ、『あふれ出る魔力』の残数はいくつだ? 確かレベルアップでは回復しない魔法だったが……」
テスター。それはこの世界を開拓した人々。そして、テスターは「スリープ」を連発できたとマサムネさんが言っていた。「あふれ出る魔力」もその一種だろう。強力が故に回数が制限されているはずだ。
「あと一回よ。でも、どの魔法に使うのかしら。よっぽどのことがない限り使えないわ。最後の希望だもの」
「希望ならある。アキラ、ブレスレットを見せろ」
「あら、『スリープ』が使えるのね。あなた、見たことない顔だけど、テスターなの?」
「違うんです」
僕はこれまでの経緯を説明する。
「なるほどねぇ、かなりラッキーね。マサムネ、あなたは『スリープ』の残数を戻したいわけね? でも、魔王に効くかしら? 強力な魔法なのは間違いないけれども……」
「じゃあ、逆に聞くが『スリープ』以外に魔王に対抗できそうな技を知ってるか? この前奴と戦ったが、こちらの技はすべていなされた。それも赤子の手をひねるようにな」
「うーん、まずはここにいる有志の技を見てから決めたいところね」
それじゃあ、と言うとアカリさんは人混みに消えた。
「まあ、あの女戻ってくるに違いないわ。『スリープ』より強い技なんて、ありえないもの。アキラの命をかけてもいいわ」
「ちょっと、勝手に人の命かけるなよ!」
「その空気いいな。ここしばらくは緊張の連続だったからな。リラックスも大事だ」
「あら、噂をすればなんとやらよ。あの女戻って来たわ」
「ダメね。『スリープ』以上に可能性を秘めた技は見当たらなかったわ」
アカリさんは首を振る。
「じゃあ、決まりね。さっさと済ませなさいよ。もう、魔王との戦闘がいつ始まってもおかしくないのよ」
「分かってるわ。それじゃあ、いくわよ」
アカリさんの腕が清らかな光を放つ。そのまぶしい光は僕のブレスレットに触れると消え去ってしまった。ブレスレットを見る。「スリープ」の残数が一回になっていた。
「最後の希望よ。いざという時まで使わないでね」
「スリープ」の使用可能回数、残り一回。
「僕はどれだけ人数を集めても勝てる気がしないな。この前実力を見て感じたよ。それに魔王を弱らせたとき用の『スリープ』もないし」
ブレスレットを見ると「スリープ」の隣にゼロと表示されている。
「まあ、魔王を眠らせるなんざ、無理だろうし、ないものはないんだ。全力を尽くすだけさ。って、おいお前アカリじゃねえか!」
「誰? ああ、マサムネね。久しぶり」
アカリという女性はマサムネさんの知り合いらしい。髪を耳にかけながらこっちに歩み寄る。
「こいつはな、俺と同じくテスターなんだ。それに『あふれ出る魔力』が使える!」
「『あふれ出る魔力』? なにそれ」
「聞いて驚くな、この魔法の効果は『他の魔法の残数を復活できる』だ。俺の言いたいことは分かるな? アカリ、『あふれ出る魔力』の残数はいくつだ? 確かレベルアップでは回復しない魔法だったが……」
テスター。それはこの世界を開拓した人々。そして、テスターは「スリープ」を連発できたとマサムネさんが言っていた。「あふれ出る魔力」もその一種だろう。強力が故に回数が制限されているはずだ。
「あと一回よ。でも、どの魔法に使うのかしら。よっぽどのことがない限り使えないわ。最後の希望だもの」
「希望ならある。アキラ、ブレスレットを見せろ」
「あら、『スリープ』が使えるのね。あなた、見たことない顔だけど、テスターなの?」
「違うんです」
僕はこれまでの経緯を説明する。
「なるほどねぇ、かなりラッキーね。マサムネ、あなたは『スリープ』の残数を戻したいわけね? でも、魔王に効くかしら? 強力な魔法なのは間違いないけれども……」
「じゃあ、逆に聞くが『スリープ』以外に魔王に対抗できそうな技を知ってるか? この前奴と戦ったが、こちらの技はすべていなされた。それも赤子の手をひねるようにな」
「うーん、まずはここにいる有志の技を見てから決めたいところね」
それじゃあ、と言うとアカリさんは人混みに消えた。
「まあ、あの女戻ってくるに違いないわ。『スリープ』より強い技なんて、ありえないもの。アキラの命をかけてもいいわ」
「ちょっと、勝手に人の命かけるなよ!」
「その空気いいな。ここしばらくは緊張の連続だったからな。リラックスも大事だ」
「あら、噂をすればなんとやらよ。あの女戻って来たわ」
「ダメね。『スリープ』以上に可能性を秘めた技は見当たらなかったわ」
アカリさんは首を振る。
「じゃあ、決まりね。さっさと済ませなさいよ。もう、魔王との戦闘がいつ始まってもおかしくないのよ」
「分かってるわ。それじゃあ、いくわよ」
アカリさんの腕が清らかな光を放つ。そのまぶしい光は僕のブレスレットに触れると消え去ってしまった。ブレスレットを見る。「スリープ」の残数が一回になっていた。
「最後の希望よ。いざという時まで使わないでね」
「スリープ」の使用可能回数、残り一回。
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