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秋といえば
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俺は学校の帰り道、歩道を歩きながら思った。なぜ、街路樹にイチョウを植えるんだろうか。確かに黄色に色づいたイチョウは綺麗だが、その副産物の銀杏はいただけない。足元に注意しながら歩く。
家の門扉を開けるといい匂いが漂ってきた。今日は美里さんは女友達とディナーを楽しんでくると言っていた。そんなわけで今日の料理は舞さんが作るのだが、住み込みを始めて以来、美里さん以外の二人が料理をしているところを見たことがなかった。不安がないと言えば嘘になるが、この匂いなら大丈夫だろう。少なくとも焼き焦げた料理が出てくることはなさそうだ。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
舞さんが迎えに出てくる。エプロン姿で。
「いい匂いがしますけど、今日の晩御飯は何ですか?」
「見てのお楽しみよ」と舞さん。
手洗いをしてダイニングに向かうとそこには和食が並んでいた。魚にかぼちゃの煮付けそして謎の器に入った料理。
「舞さん、これは何ですか?」
「じゃじゃーん」
舞さんが器の蓋を開けると現れたのは銀杏の入った茶碗蒸しだった。茶碗蒸しはかなり作るのが難しいはずだ。舞さんの料理の腕は確かなようだ。そういえば、街路樹はイチョウだったっけ。銀杏という副産物も悪いところばかりではないな。
そんなことを思いながら舌鼓を打っていると、美里さんが帰ってきた。
「あら、今日の夕飯は和食なのね。舞も料理が上手くなってきたわね」
そう言う美里さんは手に何やら薄く四角いものを持っている。
「舞が『食欲の秋』なら、私は『芸術の秋』ね」
美里さんが手に持っていたものの包装を剥がすと現れたのは風景画だった。イチョウ並木の風景画たが、そこには俺の姿も描かれていた。
「これって、いつだか美里さんと散歩に出かけた時のですね。でも、よく描けましたね。普通は風景を見ながら描くものだと思っていたのですが」
「あら、写真を撮ったのを忘れているのかしら?」
美里さんの手にはスマホが握られていた。そういえばそうだった気がする。
「あれ、お母さん帰ってたんだ」
茜が目をこすりながらやってきた。この様子だと昼寝、いや夕寝をしていたのだろう。
「『食欲の秋』に『芸術の秋』かぁ。じゃあ、わたしも」
残るは「スポーツの秋」か「読書の秋」だ。読書は二人でするものではないし、スポーツだろう。明日運動したら、筋肉痛になるに違いない。
「お兄ちゃん、ちょっと待っててね」
しばらくして茜が持ってきたのは数冊の本だった。「読書の秋」を選んだらしいが、読み聞かせでもするつもりだろか。
「私は『読書の秋』! 私がオススメする本を持ってきたから、好きなタイミングで読んでね! 絶対お兄ちゃんの部屋で読んでね」
変な条件付きだ。読書は好きな方だから苦ではない。三人に別れを告げるとさっそく本の束を見る。恋愛系が多いな。そんな風に考えていると一冊の本が目を引いた。可愛らしい背表紙には「茜の日記」と書かれている。サブタイトルは「お兄ちゃんが来てから」とある。これは気になる。茜は間違って本の束に入れたに違いない。気が引けるが中身を拝見しよう。ドキドキしながら表紙をめくると……そこには「お兄ちゃん、ドキドキした? 私の気持ちが知りたかったら、直接聞いてね!」と書かれていた。
一杯食わされた。今頃茜はニヤニヤしているに違いない。直接聞くなんて……できるわけがないだろ。そう思いながらベッドに寝っ転がった。
家の門扉を開けるといい匂いが漂ってきた。今日は美里さんは女友達とディナーを楽しんでくると言っていた。そんなわけで今日の料理は舞さんが作るのだが、住み込みを始めて以来、美里さん以外の二人が料理をしているところを見たことがなかった。不安がないと言えば嘘になるが、この匂いなら大丈夫だろう。少なくとも焼き焦げた料理が出てくることはなさそうだ。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
舞さんが迎えに出てくる。エプロン姿で。
「いい匂いがしますけど、今日の晩御飯は何ですか?」
「見てのお楽しみよ」と舞さん。
手洗いをしてダイニングに向かうとそこには和食が並んでいた。魚にかぼちゃの煮付けそして謎の器に入った料理。
「舞さん、これは何ですか?」
「じゃじゃーん」
舞さんが器の蓋を開けると現れたのは銀杏の入った茶碗蒸しだった。茶碗蒸しはかなり作るのが難しいはずだ。舞さんの料理の腕は確かなようだ。そういえば、街路樹はイチョウだったっけ。銀杏という副産物も悪いところばかりではないな。
そんなことを思いながら舌鼓を打っていると、美里さんが帰ってきた。
「あら、今日の夕飯は和食なのね。舞も料理が上手くなってきたわね」
そう言う美里さんは手に何やら薄く四角いものを持っている。
「舞が『食欲の秋』なら、私は『芸術の秋』ね」
美里さんが手に持っていたものの包装を剥がすと現れたのは風景画だった。イチョウ並木の風景画たが、そこには俺の姿も描かれていた。
「これって、いつだか美里さんと散歩に出かけた時のですね。でも、よく描けましたね。普通は風景を見ながら描くものだと思っていたのですが」
「あら、写真を撮ったのを忘れているのかしら?」
美里さんの手にはスマホが握られていた。そういえばそうだった気がする。
「あれ、お母さん帰ってたんだ」
茜が目をこすりながらやってきた。この様子だと昼寝、いや夕寝をしていたのだろう。
「『食欲の秋』に『芸術の秋』かぁ。じゃあ、わたしも」
残るは「スポーツの秋」か「読書の秋」だ。読書は二人でするものではないし、スポーツだろう。明日運動したら、筋肉痛になるに違いない。
「お兄ちゃん、ちょっと待っててね」
しばらくして茜が持ってきたのは数冊の本だった。「読書の秋」を選んだらしいが、読み聞かせでもするつもりだろか。
「私は『読書の秋』! 私がオススメする本を持ってきたから、好きなタイミングで読んでね! 絶対お兄ちゃんの部屋で読んでね」
変な条件付きだ。読書は好きな方だから苦ではない。三人に別れを告げるとさっそく本の束を見る。恋愛系が多いな。そんな風に考えていると一冊の本が目を引いた。可愛らしい背表紙には「茜の日記」と書かれている。サブタイトルは「お兄ちゃんが来てから」とある。これは気になる。茜は間違って本の束に入れたに違いない。気が引けるが中身を拝見しよう。ドキドキしながら表紙をめくると……そこには「お兄ちゃん、ドキドキした? 私の気持ちが知りたかったら、直接聞いてね!」と書かれていた。
一杯食わされた。今頃茜はニヤニヤしているに違いない。直接聞くなんて……できるわけがないだろ。そう思いながらベッドに寝っ転がった。
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