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負け戦を回避せよ
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こちらの作戦が漏れている可能性がある。そして、アメリカ軍が暗号でやりとりしているかもしれない。これは安請け合いしてしまったかもしれない。もし、暗号が解けなければ……。いや、考えるのはよそう。
「こっちの会議室で打合せだ」
意図が分からず首を傾げていると「作戦課に入ったら、追いだされるだけだぞ」と竹内。
それもそうか。俺はアメリカ軍の最新の暗号が書かれた文書を机に広げる。前と同じで頻出する文字を手掛かりにすれば、解けるかもしれない。まあ、敵も同じ手順をとるほど馬鹿ではないだろうが。
「さて、これが最近の作戦一覧だ。これと頻出ワードを照らし合わせればどうだ?」
竹内から作戦名とざっくりとした概要が書かれた書類を受け取る。漏れ出したと思われる時期の作戦を見ると、暗号文に同じ単語が使われているのに気づいた。おそらく、戦場、戦力、タイミングなどが書かれているに違いない。だが、今回は解読の難易度が圧倒的に違う。待てよ、必ずしも解く必要はないのでは? 作戦が漏れているのなら、偽の情報を流せばいい。
「なあ、竹内。今度の作戦ではどこを攻めるんだ?」
「オーストラリア付近の珊瑚海だ。しかし、詳細は教えられない」
珊瑚海! これが史実通りなら、もうすぐ一つ目のターニングポイントが迫っていることになる。
「なあ、竹内。俺が今から言うことを信じてくれるか?」
「聞いてから判断だな」
俺は自分がいくつかの時代で暗号を解いてきたこと。本当は未来人であること。そして、暗号の女神という存在のこと。最後に珊瑚海海戦が持つ大きな意味を。
「おいおい、それを信じろってのは無理があるぞ。仮にそうだとして――俺以外のみんなをどうやって信じさせるんだ?」
「そこがネックなんだ。だから、こういうことにしてくれないか。俺が暗号を解いて、その上であえて偽の情報を流すということに」
これは一か八かだ。おそらく、うまくいくはず。だが、アメリカの暗号を解いたわけではないので、絶対の保証はない。
「じゃあ、如月が知っている情報をすべて話せ。こちらが投入する戦力、タイミングなんかを。それが作戦案と一致していれば、お前の言うことを信じてやる。できるか?」
そこまでは暗号の女神に教えてもらっていない。その時だった。急に睡魔に襲われたのは。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺は気がつくと、見覚えのある場所にいた。そう、以前に女神とあった場所に。
「お困りのようですね」
声の聞こえた方を向くと、そこには暗号の女神がいた。
「まさか、さっきの睡魔は……?」
「そう、私があなたに情報を与えるためです。珊瑚海海戦の情報が必要なのでしょう?」
「しかし、なんで情報をくれるんだ? 前の――古代ギリシャの時は手助けはなかったぞ」
「それは、今まではあなたが数々の暗号を解いてきたからです。総当たりという方法でしたが。私の本来の目的は正しい歴史にすることです」
「正しい歴史?」
「そうです。日本が負けるというのは、私と真反対の存在、邪神が作り上げたものです。本来なら日本が勝つはずなのです」
「じゃあ、今までの転生も……?」
「そうです。邪神の影響で私は力が制限されていました。暗号に関してだけにしか干渉できないという。しかし、あなたが歴史の数々を正してきたおかげで、邪神の力が弱まり、詳細な情報提供が出来るようになったのです」
まさか、そんなことがあったとは。
「さて、今回あなたが欲しい情報はこれです。残念ながら、今回は紙として渡せません。目の前に人がいますからね」
つまり、今回は暗記するしかないわけだ。俺は目の前の情報を頭に叩き込む。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ふと目が覚めると、どうやら横たわっていたらしい。竹内が上から見下ろしている。
「おーい、大丈夫か?」
竹内に返事をしようとしたが、それより前にやることがある。机の上の紙きれに必死に覚えた情報を書き込んでいく。隣で竹内が呆然としている。空母祥鳳を中心とした戦力。5月に決行されることなど。
「どうだ、これで信じてくれるか?」
「……。すべて作戦と一致している。そんな馬鹿な」
「さあ、約束通り信じてもらうぞ。アメリカ軍が珊瑚海海戦の情報を知っている可能性が高い」
「もし、そうなら珊瑚海作戦で偽の情報を流せばいい。偽情報で釣り出してから、奇襲すればいい」と竹内。
「いや、それは違うな。珊瑚海を攻めると見せかけて、ハワイを攻める」
「ハワイ!?」
「珊瑚海を攻めるメリットは小さい。ならば、アメリカ本土に近いハワイを攻撃すべきだ。真珠湾攻撃のように奇襲で」
竹内が驚愕の表情を浮かべたその時、ドアが勢いよく開かれた。
「如月、緊急会議だ! 上層部が新たな作戦案を求めている。今すぐ来てくれ!」
そこには草薙の姿があった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
会議室に入り、上層部の厳しい目線を感じながら俺は提案を始めた。
「今回の作戦ですが、珊瑚海ではなく、ハワイを攻撃するべきです。珊瑚海を攻めると偽情報を流した上で」
部屋が静まり返り、重々しい沈黙が続いた後、司令官が静かに言った。
「これは一大決断だ……。受け入れるかどうか、今夜中に結論を出す」
俺たちはその場を後にし、竹内が小声で囁いた。「果たして、上層部はこの大胆な提案を受け入れてくれるのか……?」と。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次の朝、俺は早くに目覚めた。今日の上層部の判断ですべてが決まる。頼む、ハワイ攻撃を選択してくれ。
「こっちの会議室で打合せだ」
意図が分からず首を傾げていると「作戦課に入ったら、追いだされるだけだぞ」と竹内。
それもそうか。俺はアメリカ軍の最新の暗号が書かれた文書を机に広げる。前と同じで頻出する文字を手掛かりにすれば、解けるかもしれない。まあ、敵も同じ手順をとるほど馬鹿ではないだろうが。
「さて、これが最近の作戦一覧だ。これと頻出ワードを照らし合わせればどうだ?」
竹内から作戦名とざっくりとした概要が書かれた書類を受け取る。漏れ出したと思われる時期の作戦を見ると、暗号文に同じ単語が使われているのに気づいた。おそらく、戦場、戦力、タイミングなどが書かれているに違いない。だが、今回は解読の難易度が圧倒的に違う。待てよ、必ずしも解く必要はないのでは? 作戦が漏れているのなら、偽の情報を流せばいい。
「なあ、竹内。今度の作戦ではどこを攻めるんだ?」
「オーストラリア付近の珊瑚海だ。しかし、詳細は教えられない」
珊瑚海! これが史実通りなら、もうすぐ一つ目のターニングポイントが迫っていることになる。
「なあ、竹内。俺が今から言うことを信じてくれるか?」
「聞いてから判断だな」
俺は自分がいくつかの時代で暗号を解いてきたこと。本当は未来人であること。そして、暗号の女神という存在のこと。最後に珊瑚海海戦が持つ大きな意味を。
「おいおい、それを信じろってのは無理があるぞ。仮にそうだとして――俺以外のみんなをどうやって信じさせるんだ?」
「そこがネックなんだ。だから、こういうことにしてくれないか。俺が暗号を解いて、その上であえて偽の情報を流すということに」
これは一か八かだ。おそらく、うまくいくはず。だが、アメリカの暗号を解いたわけではないので、絶対の保証はない。
「じゃあ、如月が知っている情報をすべて話せ。こちらが投入する戦力、タイミングなんかを。それが作戦案と一致していれば、お前の言うことを信じてやる。できるか?」
そこまでは暗号の女神に教えてもらっていない。その時だった。急に睡魔に襲われたのは。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺は気がつくと、見覚えのある場所にいた。そう、以前に女神とあった場所に。
「お困りのようですね」
声の聞こえた方を向くと、そこには暗号の女神がいた。
「まさか、さっきの睡魔は……?」
「そう、私があなたに情報を与えるためです。珊瑚海海戦の情報が必要なのでしょう?」
「しかし、なんで情報をくれるんだ? 前の――古代ギリシャの時は手助けはなかったぞ」
「それは、今まではあなたが数々の暗号を解いてきたからです。総当たりという方法でしたが。私の本来の目的は正しい歴史にすることです」
「正しい歴史?」
「そうです。日本が負けるというのは、私と真反対の存在、邪神が作り上げたものです。本来なら日本が勝つはずなのです」
「じゃあ、今までの転生も……?」
「そうです。邪神の影響で私は力が制限されていました。暗号に関してだけにしか干渉できないという。しかし、あなたが歴史の数々を正してきたおかげで、邪神の力が弱まり、詳細な情報提供が出来るようになったのです」
まさか、そんなことがあったとは。
「さて、今回あなたが欲しい情報はこれです。残念ながら、今回は紙として渡せません。目の前に人がいますからね」
つまり、今回は暗記するしかないわけだ。俺は目の前の情報を頭に叩き込む。
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ふと目が覚めると、どうやら横たわっていたらしい。竹内が上から見下ろしている。
「おーい、大丈夫か?」
竹内に返事をしようとしたが、それより前にやることがある。机の上の紙きれに必死に覚えた情報を書き込んでいく。隣で竹内が呆然としている。空母祥鳳を中心とした戦力。5月に決行されることなど。
「どうだ、これで信じてくれるか?」
「……。すべて作戦と一致している。そんな馬鹿な」
「さあ、約束通り信じてもらうぞ。アメリカ軍が珊瑚海海戦の情報を知っている可能性が高い」
「もし、そうなら珊瑚海作戦で偽の情報を流せばいい。偽情報で釣り出してから、奇襲すればいい」と竹内。
「いや、それは違うな。珊瑚海を攻めると見せかけて、ハワイを攻める」
「ハワイ!?」
「珊瑚海を攻めるメリットは小さい。ならば、アメリカ本土に近いハワイを攻撃すべきだ。真珠湾攻撃のように奇襲で」
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「これは一大決断だ……。受け入れるかどうか、今夜中に結論を出す」
俺たちはその場を後にし、竹内が小声で囁いた。「果たして、上層部はこの大胆な提案を受け入れてくれるのか……?」と。
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