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またもや呼び出しをくらう
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敵軍の援軍! こんなに早いとは。しかし、草薙は冷静だった。
「緊急戦略会議だ! 全員、作戦室に集まれ!」
「敵の増援がこれほど早く到着するとは予想外だった。どうすべきか」と作戦課の一人が焦った表情で言う。
「孫子の言葉に『兵は拙速を尊ぶ』というものがあります」と、俺は静かに口を開く。
「時間をかけすぎず、迅速に行動することが重要です。我々は今、迅速に補給基地を破壊し、敵の補給線を断つことに全力を注ぐべきです」
草薙が頷く。
「その通りだ。如月の言うとおり、時間をかける余裕はない。敵の増援が来る前に、補給基地の破壊を完遂する。現地部隊には、敵の増援が到着する前に補給基地を完全に破壊するよう指示を出せ」
作戦課のメンバーも納得の表情を見せる。「了解しました。爆撃部隊に速やかに命令を伝えます」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
数時間後、現地からの緊急通信が入った。
「補給基地の破壊は完了しました。しかし、敵の増援がすぐそこまで来ています!」
草薙が緊張した表情で言う。
「ここからが正念場だ。全員、全力で現地部隊を支援する準備をしろ!」
俺は内心で祈るように思った。この作戦が成功しなければ、全てが水の泡だ……。
次の瞬間、通信が途絶えた。部屋全体が緊張の空気に包まれる。息を呑むような静けさの中で、時間がゆっくりと過ぎていく。
「なんだ、通信が切れたぞ!」と作戦課の一人が焦りの声を上げる。
「冷静になれ。再接続を試みろ」と草薙が指示を出す。
しばらくの沈黙の後、再び通信が復活した。
「こちら現地部隊。補給基地の完全破壊を確認。増援の到着前に撤退します。繰り返します、作戦は成功しました!」
部屋中が歓声と安堵の声で満ち溢れる。草薙が微笑みながら言った。
「皆、お疲れ様。これで我々は一歩前進した」
俺も安堵の息をつきながら、心の中で喜びを噛み締めた。
「これでしばらくは敵の補給が滞るはずだ。次の一手に繋がる重要な勝利だ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺はまた上官の部屋に呼ばれた。間違いなく、先日の作戦で作戦課に口出しした件だろう。
「さて、今日呼んだ理由は分かっているだろう?」
「この前の戦闘で口出しした件ですね?」
「ふむ、反省していれば、この件は不問にふす」
あれ、あっさりと許されたぞ。では、何の用だ?
「君が暗号作成課にいたころ、アメリカ軍の暗号を解いた。しかし、最近になって向こうが最新の暗号を導入した。それを解読するのが次の指令だ」
新暗号か。待てよ、このタイミングはまずい。どんどんと1942年の5月が近づいている。運命の珊瑚海海戦まで1ヶ月を切っている。ここでアメリカ軍の情報がつかめなくては、歴史を変えることはできない。
「さあ、戻りたまえ。解読が終わり次第、報告をするように」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「その感じだと、新たな任務を言い渡されたって顔っすね」
情報課に戻ってそうそう、松田がのんきに言う。俺の身にもなって欲しい。
「それで、どんな任務なんだ?」と草薙。
手短に話すと「作戦課と連携すべきだな」と返事の提案。
「しかし、なぜ作戦課と連携を? 暗号の解読は情報課だけで十分なのでは?」
俺は純粋な疑問をぶつける。
「新しい暗号を解読するには、アメリカ軍の戦術と通信をセットで考えるべきだ。暗号文の文脈から考えるにはそれがベストだ」
いつのまにか道下が話に加わっていた。この何気なさ、スパイの方が向いているのでは? と思わないでもない。
では、作戦課と連携するなら、誰がいいだろうか。先の共同戦線からするに、仲がいいとは言えない。その時だった。作戦課で上司をいさめた人物を思い出したのは。結局名前を聞かずじまいだったが。協力してもらえるかは分からないが、一度話をしてみるか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
作戦課、ここだよな。俺は部屋の前で深呼吸をする。ドアノブに手をかけた、その時だった。後ろから声をかけられたのは。
「そんなところに突っ立ってどうした?」
振り返ってみると、そこにいたのは目的の人物だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なるほどね。分かった、手伝おう。俺は下っ端だから、どれくらい作戦の状況を入手できるか分からないけどな」
「助かるよ。えーと……」
そういえば、まだ名前を聞いていなかった。
「竹内だ。よろしくな、如月」
「よろしく。ところで、なんで名前を知ってるんだ?」
「そりゃあ、あれだけ目立てば名前を覚えない方がおかしい。さて、問題の暗号文だが、もしかしたらこちらの作戦概要などが漏れている可能性がある」と竹内。
「作戦が漏れている……?」
「ここのところ、アメリカ軍の動きがこちらの先手をとってくる。だが、もし暗号文を解読できれば、裏をかけるってわけだ」
アメリカ軍がこちらの作戦を知っている。もし、俺が向こうの暗号を解読できれば、偽の情報を流して、アメリカ軍を撹乱できる。
「まあ、つまりはお前の双肩に日本の未来がかかっていると言っても過言ではない」
俺は途端に自分の任務の重要性を感じた。もし、アメリカ軍の暗号を解読できなければ……。
「緊急戦略会議だ! 全員、作戦室に集まれ!」
「敵の増援がこれほど早く到着するとは予想外だった。どうすべきか」と作戦課の一人が焦った表情で言う。
「孫子の言葉に『兵は拙速を尊ぶ』というものがあります」と、俺は静かに口を開く。
「時間をかけすぎず、迅速に行動することが重要です。我々は今、迅速に補給基地を破壊し、敵の補給線を断つことに全力を注ぐべきです」
草薙が頷く。
「その通りだ。如月の言うとおり、時間をかける余裕はない。敵の増援が来る前に、補給基地の破壊を完遂する。現地部隊には、敵の増援が到着する前に補給基地を完全に破壊するよう指示を出せ」
作戦課のメンバーも納得の表情を見せる。「了解しました。爆撃部隊に速やかに命令を伝えます」
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数時間後、現地からの緊急通信が入った。
「補給基地の破壊は完了しました。しかし、敵の増援がすぐそこまで来ています!」
草薙が緊張した表情で言う。
「ここからが正念場だ。全員、全力で現地部隊を支援する準備をしろ!」
俺は内心で祈るように思った。この作戦が成功しなければ、全てが水の泡だ……。
次の瞬間、通信が途絶えた。部屋全体が緊張の空気に包まれる。息を呑むような静けさの中で、時間がゆっくりと過ぎていく。
「なんだ、通信が切れたぞ!」と作戦課の一人が焦りの声を上げる。
「冷静になれ。再接続を試みろ」と草薙が指示を出す。
しばらくの沈黙の後、再び通信が復活した。
「こちら現地部隊。補給基地の完全破壊を確認。増援の到着前に撤退します。繰り返します、作戦は成功しました!」
部屋中が歓声と安堵の声で満ち溢れる。草薙が微笑みながら言った。
「皆、お疲れ様。これで我々は一歩前進した」
俺も安堵の息をつきながら、心の中で喜びを噛み締めた。
「これでしばらくは敵の補給が滞るはずだ。次の一手に繋がる重要な勝利だ」
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俺はまた上官の部屋に呼ばれた。間違いなく、先日の作戦で作戦課に口出しした件だろう。
「さて、今日呼んだ理由は分かっているだろう?」
「この前の戦闘で口出しした件ですね?」
「ふむ、反省していれば、この件は不問にふす」
あれ、あっさりと許されたぞ。では、何の用だ?
「君が暗号作成課にいたころ、アメリカ軍の暗号を解いた。しかし、最近になって向こうが最新の暗号を導入した。それを解読するのが次の指令だ」
新暗号か。待てよ、このタイミングはまずい。どんどんと1942年の5月が近づいている。運命の珊瑚海海戦まで1ヶ月を切っている。ここでアメリカ軍の情報がつかめなくては、歴史を変えることはできない。
「さあ、戻りたまえ。解読が終わり次第、報告をするように」
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情報課に戻ってそうそう、松田がのんきに言う。俺の身にもなって欲しい。
「それで、どんな任務なんだ?」と草薙。
手短に話すと「作戦課と連携すべきだな」と返事の提案。
「しかし、なぜ作戦課と連携を? 暗号の解読は情報課だけで十分なのでは?」
俺は純粋な疑問をぶつける。
「新しい暗号を解読するには、アメリカ軍の戦術と通信をセットで考えるべきだ。暗号文の文脈から考えるにはそれがベストだ」
いつのまにか道下が話に加わっていた。この何気なさ、スパイの方が向いているのでは? と思わないでもない。
では、作戦課と連携するなら、誰がいいだろうか。先の共同戦線からするに、仲がいいとは言えない。その時だった。作戦課で上司をいさめた人物を思い出したのは。結局名前を聞かずじまいだったが。協力してもらえるかは分からないが、一度話をしてみるか。
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「そんなところに突っ立ってどうした?」
振り返ってみると、そこにいたのは目的の人物だった。
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「なるほどね。分かった、手伝おう。俺は下っ端だから、どれくらい作戦の状況を入手できるか分からないけどな」
「助かるよ。えーと……」
そういえば、まだ名前を聞いていなかった。
「竹内だ。よろしくな、如月」
「よろしく。ところで、なんで名前を知ってるんだ?」
「そりゃあ、あれだけ目立てば名前を覚えない方がおかしい。さて、問題の暗号文だが、もしかしたらこちらの作戦概要などが漏れている可能性がある」と竹内。
「作戦が漏れている……?」
「ここのところ、アメリカ軍の動きがこちらの先手をとってくる。だが、もし暗号文を解読できれば、裏をかけるってわけだ」
アメリカ軍がこちらの作戦を知っている。もし、俺が向こうの暗号を解読できれば、偽の情報を流して、アメリカ軍を撹乱できる。
「まあ、つまりはお前の双肩に日本の未来がかかっていると言っても過言ではない」
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