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こちら、事件対策本部です
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僕と東雲さんは早速、学校の掲示板のいたる所に張り紙をした。「雪だるま破壊事件の目撃者は6年A組の事件対策本部まで」
「ねえ、真くん。この事件対策本部って何なの?」と東雲さん。
「もちろん、僕たちのことさ。その方が警察みたいでかっこいいでしょ? ほら、ドラマとかであるじゃん。殺人事件対策本部とか」
「でもね、ここには私たちの名前は書いてないわ。これじゃあ、目撃者がいても困るんじゃないかな」
その指摘は的を得ていた。僕は大急ぎで張り紙を替えて回った。
それにしても、小学校の中に目撃者はいるのだろうか。いくら雪だるま破壊事件が多くても、目撃者がいるかは怪しい。
数日後、事件のことを話してくれた海野さんが悲しげな表情をして何かの本を読んでいた。
「海野さん、何かあったの?」
本から顔を上げた海野さんの瞳はウルウルとしていて、今にも泣き出しそうだった。ちょっと、待ってよ。これじゃあ、僕が泣かせたことになりかねないぞ。
「ほら、ティッシュ。落ち着いたら、何があったか話してよ」
「あのね、ウサギさんがエサを食べてくれないの」
ああ、そういえば海野さんはウサギの飼育係だった。だからか。海野さんが読んでいた本のタイトルが『ウサギの習性』だったのは。
「最近ね、エサをあげても、食べてくれなくて。病気かもと思って先生に相談したんだけれど、健康だって。私のこと、嫌いになったのかな……」
「それは違うと思うけど。本当に嫌いなら、逃げたり隠れたらすると思うんだ。でも、不思議だなぁ。海野さんのエサがなくても健康なのは」
これもまたミステリーだ。雪だるま破壊事件と同じく。海野さんのエサを食べなくても健康ということは別の誰かがエサをあげていると考えるのが筋だろう。でも、誰が何のために? 頭の片隅に入れておこう。何かの拍子に解けるかもしれないから。
「真くん! 雪だるま事件の目撃者が現れたわ!」
声の主は東雲さんだった。誰かの手を握ってこっちに向かって走って来る。息を整えると、僕に紹介する。
「こちらは6年C組の美咲さん。それで、こちらが真くん」
まさか、事件の目撃者が現れるなんて! それに美咲さんと会うのは初めてではない。去年、同じクラスだったから。それだけではない。彼女は成績優秀で学年の模範だ。知らない人はいないだろう。
「それで、犯人はどんな人だったの?」
僕はシャーペンとメモを取り出す。まるで刑事みたいでかっこいい。
「そうね、あれは一昨日の朝だったかしら。近所の散歩をしていたら、ドスンって音がしたの。それで音の方を見ると、雪だるまの頭だけが壊されてたわけ」
なんだ、犯人を直接見たわけではないのか。これは目撃者と言えるか怪しいぞ。
「ちょっと、ここからが重要よ。犯人は子供だったわ。それにニット帽を被っていたんだけど、私たちが家庭科の授業に作ったものと同じだったの。それに校章が入っていたから、犯人は同級生で間違いないわ」
犯人は同級生!? これは意外な展開だぞ。美咲さんの証言のおかげで、捜索範囲がだいぶ絞り込まれた。
「じゃあ、私はこれで失礼するわ」
美咲さんが立ち去ってから、僕たちは犯人像をあれこれと想像していた。欲を言えば、男女のどちらかが絞り込めたらもっと良かった。
「そうそれと、東雲さんが目撃者を連れて来る間に、僕なりに雪だるま事件を考えてみたんだ。これを見て」
それは学区の地図だった。
「この赤いバツ印が雪だるま破壊事件の現場だ。実は現場はうちの学校を中心に円になっているんだ」
おそらく、これに気づいたのは僕の方が先だろう。物知りの東雲さんの上をいったんだ、これは一つの自慢話にできるぞ。
「すごいじゃない! さっきの証言と合わせると、やはり犯人は6年生の誰かね」
「問題はなんで頭だけ壊すのかなんだけれど……」
「それは事件を追い続ければ分かると思うの。そこに犯人の動機があると思うから」
「そうだね、東雲さんの言う通りだ」と僕は頷いた。
「犯人の動機を突き止めることが、この事件を解決する鍵になるはずだから」
僕たちは再度地図を見つめ、頭を悩ませた。犯人の狙いは一体何なのか? そして、次はどこで事件が起こるのか?
その時、校内放送が流れた。
「6年A組の生徒はすぐに教室に戻るように」との指示だった。僕たちは顔を見合わせた。
「何だろう? 大事な話でもあるのかな」と東雲さんが言った。
「とにかく行ってみよう。もしかしたら、何か新しい情報が得られるかもしれない」
僕たちは急いで教室に向かうと、担任の先生が待っていた。先生は少し緊張した様子で話し始めた。
「みんな、急に呼び出してごめんね。実は、校内でちょっとした問題が起きていて、みんなに注意してほしいことがあるんだ」
僕たちは耳を傾けた。
「最近、学校の周りで雪だるまの破壊が続いているのを知っている人もいると思う。もし何か見たことがある人がいたら、必ず先生に教えてほしい」
僕は東雲さんと視線を交わしながら、事件がいよいよ大事になってきたことを実感した。
「ねえ、真くん。この事件対策本部って何なの?」と東雲さん。
「もちろん、僕たちのことさ。その方が警察みたいでかっこいいでしょ? ほら、ドラマとかであるじゃん。殺人事件対策本部とか」
「でもね、ここには私たちの名前は書いてないわ。これじゃあ、目撃者がいても困るんじゃないかな」
その指摘は的を得ていた。僕は大急ぎで張り紙を替えて回った。
それにしても、小学校の中に目撃者はいるのだろうか。いくら雪だるま破壊事件が多くても、目撃者がいるかは怪しい。
数日後、事件のことを話してくれた海野さんが悲しげな表情をして何かの本を読んでいた。
「海野さん、何かあったの?」
本から顔を上げた海野さんの瞳はウルウルとしていて、今にも泣き出しそうだった。ちょっと、待ってよ。これじゃあ、僕が泣かせたことになりかねないぞ。
「ほら、ティッシュ。落ち着いたら、何があったか話してよ」
「あのね、ウサギさんがエサを食べてくれないの」
ああ、そういえば海野さんはウサギの飼育係だった。だからか。海野さんが読んでいた本のタイトルが『ウサギの習性』だったのは。
「最近ね、エサをあげても、食べてくれなくて。病気かもと思って先生に相談したんだけれど、健康だって。私のこと、嫌いになったのかな……」
「それは違うと思うけど。本当に嫌いなら、逃げたり隠れたらすると思うんだ。でも、不思議だなぁ。海野さんのエサがなくても健康なのは」
これもまたミステリーだ。雪だるま破壊事件と同じく。海野さんのエサを食べなくても健康ということは別の誰かがエサをあげていると考えるのが筋だろう。でも、誰が何のために? 頭の片隅に入れておこう。何かの拍子に解けるかもしれないから。
「真くん! 雪だるま事件の目撃者が現れたわ!」
声の主は東雲さんだった。誰かの手を握ってこっちに向かって走って来る。息を整えると、僕に紹介する。
「こちらは6年C組の美咲さん。それで、こちらが真くん」
まさか、事件の目撃者が現れるなんて! それに美咲さんと会うのは初めてではない。去年、同じクラスだったから。それだけではない。彼女は成績優秀で学年の模範だ。知らない人はいないだろう。
「それで、犯人はどんな人だったの?」
僕はシャーペンとメモを取り出す。まるで刑事みたいでかっこいい。
「そうね、あれは一昨日の朝だったかしら。近所の散歩をしていたら、ドスンって音がしたの。それで音の方を見ると、雪だるまの頭だけが壊されてたわけ」
なんだ、犯人を直接見たわけではないのか。これは目撃者と言えるか怪しいぞ。
「ちょっと、ここからが重要よ。犯人は子供だったわ。それにニット帽を被っていたんだけど、私たちが家庭科の授業に作ったものと同じだったの。それに校章が入っていたから、犯人は同級生で間違いないわ」
犯人は同級生!? これは意外な展開だぞ。美咲さんの証言のおかげで、捜索範囲がだいぶ絞り込まれた。
「じゃあ、私はこれで失礼するわ」
美咲さんが立ち去ってから、僕たちは犯人像をあれこれと想像していた。欲を言えば、男女のどちらかが絞り込めたらもっと良かった。
「そうそれと、東雲さんが目撃者を連れて来る間に、僕なりに雪だるま事件を考えてみたんだ。これを見て」
それは学区の地図だった。
「この赤いバツ印が雪だるま破壊事件の現場だ。実は現場はうちの学校を中心に円になっているんだ」
おそらく、これに気づいたのは僕の方が先だろう。物知りの東雲さんの上をいったんだ、これは一つの自慢話にできるぞ。
「すごいじゃない! さっきの証言と合わせると、やはり犯人は6年生の誰かね」
「問題はなんで頭だけ壊すのかなんだけれど……」
「それは事件を追い続ければ分かると思うの。そこに犯人の動機があると思うから」
「そうだね、東雲さんの言う通りだ」と僕は頷いた。
「犯人の動機を突き止めることが、この事件を解決する鍵になるはずだから」
僕たちは再度地図を見つめ、頭を悩ませた。犯人の狙いは一体何なのか? そして、次はどこで事件が起こるのか?
その時、校内放送が流れた。
「6年A組の生徒はすぐに教室に戻るように」との指示だった。僕たちは顔を見合わせた。
「何だろう? 大事な話でもあるのかな」と東雲さんが言った。
「とにかく行ってみよう。もしかしたら、何か新しい情報が得られるかもしれない」
僕たちは急いで教室に向かうと、担任の先生が待っていた。先生は少し緊張した様子で話し始めた。
「みんな、急に呼び出してごめんね。実は、校内でちょっとした問題が起きていて、みんなに注意してほしいことがあるんだ」
僕たちは耳を傾けた。
「最近、学校の周りで雪だるまの破壊が続いているのを知っている人もいると思う。もし何か見たことがある人がいたら、必ず先生に教えてほしい」
僕は東雲さんと視線を交わしながら、事件がいよいよ大事になってきたことを実感した。
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