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占い
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テーブルで、暁、夏央、それに草次さんと、由美子さん、天馬さんが何かに興じていた。ものすごく盛り上がっている。
「何してるのさ」僕は覗き込む。
「よっ、本の虫のご帰還だ!」暁がからかう。
「今ね、由美子さんが占いをしてくれているんだ!」
天馬さんの口調は明るい。どうやら父親がいないときはリラックスできるようだ。薫さんの判断は正しかったようだ。
「それで、どんな占いをしてるの?」机の上をのぞきこむ。
「これさ!」草次さんが机のカードを取り上げる。
トランプとは違い図柄が入っている。なんだろうか。
「タロット占いさ。周平も聞いたことくらいあるだろ?」と夏央。
「うーん、聞いたことはあるけど……。どんな内容かは知らないな」
自分は人より知識があると自負しているが、占いなどは信じていないので守備範囲外だった。
「タロットはね、それぞれのカードに図柄が入っているの。それを横に三枚並べることで、過去・現在・未来を占うの」由美子さんが静かに言う。
「もちろん、図柄を見て『こうだ!』って断定するんじゃないの。図柄や順番からインスピレーションで読み取るの」
「見てりゃあ分かるって! 次は相棒の番だぜ!」どうやら次は草次さんの番らしい。
暁の言うとおりだ。百聞は一見に如かず。黙って見ることにしよう。由美子さんはカードの束を丁寧にカットする。
「さあ、草次の結果は……過去から順に、『愚者』、『恋人』、『星』ね。これの意味するところは……まずは過去のカードの『愚者』ね」
「おい、愚か者は酷いだろ!」
カードには今にも崖から落ちそうな男が描かれている。男の視線は上の方を向いているので、あと一歩進めば崖から真っ逆さまだ。まさに愚か者といった感じだ。
「焦らないで、草次。『愚者』の意味には、はじまりや開放的っていう意味もあるの。うーん、この場合は……開放的っていう言葉が適切かしら」
「よかったな、相棒!」暁がニヤリとする。
「まあな!」
「静かにして。次は……『恋人』ね」
「これなら、素人にも分かるぜ。つまり、草次と由美子のことだな」
夏央の言葉に由美子さんは真っ赤になる。草次さんはまんざらでもなさそうだ。
「……そうなるわね。最後に未来。これは『星』のカードね」
かがみ込んだ女性の上に、無数の星が描かれている。
「で、俺の未来はどうなんだ?」草次は急かす。
「簡単さ。『死んでお星様になる』ってことさ!」暁が茶化す。
「そりゃないぜ、相棒」
「そうね、これは……平穏とか希望という意味だわ」由美子さんは二人のやりとりを無視して続ける。
「じゃあ、話は早い。恋人の次が希望や平穏だろ? つまり、草次は由美子と結ばれて幸せになるってことだ」インチキ占い師の夏央が言う。
「そうだといいんだけど……」
「まあ、全体としては悪くなさそうだな。愚か者はいただけないけれど。次は誰の番だ?」草次さんがあたりを見渡す。
「夏央なんかどうだ?」暁が指名する。
「夏央さんね。カードを切り直すから、ちょっと待って。……さて、どうなるかしら?」
由美子さんが三枚のカードを並べる。順に天使みたいな絵、輪っか、塔だ。
「最初は『節制』のカードね。これは健康とかバランスが良いって意味ね」
「お、いきなりいいカードが来たぞ! 続けてよ!」
「次は『運命の車輪』ね。つまり、そのまま運命とかターニングポイントって意味よ」
「それで、それで、未来はどうよ?」夏央は自分の番になると真剣に聞く。かなり前のめりになっている。
「『塔』のカードね。突然の変化、啓示、転落などの意味があるの」
「転落ぅ?あまりいい響きじゃないな……」夏央はため息をつく。
「でも、安心して。ターニングポイントの次だから、啓示を受けてひらめきが訪れるとも読み取れるわ。全体を通すと……バランスを保っていたところに、ターニングポイントが訪れて、ひらめきを得る、もしくは驚かされるって感じね」
「うーん、全体的に見れば可もなく不可もなくだな」夏央は肩をがっくりと落とす。もっといい結果を望んでいたようだ。
「次は相棒の番だ! 周平は最後だから、大人しく待ってろよ!」
草次さんは僕が最後と言った。そうなると、天馬さんはすでに占ってもらったということになる。
「さて、相棒よりいいカードを引くぞー」暁が張り切って肩を回す。
「あの、カードを引くのは由美子さんだと思うんだけど……」天馬さんがストップをかける。
しかし、暁が人の意見を聞くはずもなく、三枚のカードをえいや、と並べる。
「しょうがないわね、本来は占う本人が引くんだけど。最初は、『月』ね。想像力や幻影、戸惑いって意味があるわ」
「うーん、よく分からないな。次行こうぜ、次!」暁は真ん中のカードを指す。
なんか偉そうな人が書いてある。何かに乗っているようだ。
「これは『戦車』ね……勝利、意志などの意味よ。最後は――」
空気が凍った。
「デス――死、か……」暁が固まる。
「……確かに、そのまま読むと不吉だけど、違う意味もあるわ。移り変わりって意味もあるの。だから、今回の場合は……そうね、戸惑っていたけど意志が固まって、移り変わるってこと。だから、何か強い意志を実行して、状況が変わるってところじゃないかしら?」由美子さんがフォローする。
「……」
暁は心ここに在らずで、由美子さんの言葉が届いていないようだ。それにしても、死のカード番号が十三番だとは。かなり不吉だ。
僕は気づいた。タロットは占い師がカードからインスピレーションを得て占うものだ。つまり、解釈の仕方は占い師次第とも言える。由美子さんはみんなが悪いカードを引くたびに、ポジティブな解釈をしていた。彼女の優しさが伝わってきた。
「……まあ、気にすんなよ、相棒。もうすぐ夕飯の時間だぜ! シャキッとしろよ!」草次さんの声が虚しく広間に響いた。
「何してるのさ」僕は覗き込む。
「よっ、本の虫のご帰還だ!」暁がからかう。
「今ね、由美子さんが占いをしてくれているんだ!」
天馬さんの口調は明るい。どうやら父親がいないときはリラックスできるようだ。薫さんの判断は正しかったようだ。
「それで、どんな占いをしてるの?」机の上をのぞきこむ。
「これさ!」草次さんが机のカードを取り上げる。
トランプとは違い図柄が入っている。なんだろうか。
「タロット占いさ。周平も聞いたことくらいあるだろ?」と夏央。
「うーん、聞いたことはあるけど……。どんな内容かは知らないな」
自分は人より知識があると自負しているが、占いなどは信じていないので守備範囲外だった。
「タロットはね、それぞれのカードに図柄が入っているの。それを横に三枚並べることで、過去・現在・未来を占うの」由美子さんが静かに言う。
「もちろん、図柄を見て『こうだ!』って断定するんじゃないの。図柄や順番からインスピレーションで読み取るの」
「見てりゃあ分かるって! 次は相棒の番だぜ!」どうやら次は草次さんの番らしい。
暁の言うとおりだ。百聞は一見に如かず。黙って見ることにしよう。由美子さんはカードの束を丁寧にカットする。
「さあ、草次の結果は……過去から順に、『愚者』、『恋人』、『星』ね。これの意味するところは……まずは過去のカードの『愚者』ね」
「おい、愚か者は酷いだろ!」
カードには今にも崖から落ちそうな男が描かれている。男の視線は上の方を向いているので、あと一歩進めば崖から真っ逆さまだ。まさに愚か者といった感じだ。
「焦らないで、草次。『愚者』の意味には、はじまりや開放的っていう意味もあるの。うーん、この場合は……開放的っていう言葉が適切かしら」
「よかったな、相棒!」暁がニヤリとする。
「まあな!」
「静かにして。次は……『恋人』ね」
「これなら、素人にも分かるぜ。つまり、草次と由美子のことだな」
夏央の言葉に由美子さんは真っ赤になる。草次さんはまんざらでもなさそうだ。
「……そうなるわね。最後に未来。これは『星』のカードね」
かがみ込んだ女性の上に、無数の星が描かれている。
「で、俺の未来はどうなんだ?」草次は急かす。
「簡単さ。『死んでお星様になる』ってことさ!」暁が茶化す。
「そりゃないぜ、相棒」
「そうね、これは……平穏とか希望という意味だわ」由美子さんは二人のやりとりを無視して続ける。
「じゃあ、話は早い。恋人の次が希望や平穏だろ? つまり、草次は由美子と結ばれて幸せになるってことだ」インチキ占い師の夏央が言う。
「そうだといいんだけど……」
「まあ、全体としては悪くなさそうだな。愚か者はいただけないけれど。次は誰の番だ?」草次さんがあたりを見渡す。
「夏央なんかどうだ?」暁が指名する。
「夏央さんね。カードを切り直すから、ちょっと待って。……さて、どうなるかしら?」
由美子さんが三枚のカードを並べる。順に天使みたいな絵、輪っか、塔だ。
「最初は『節制』のカードね。これは健康とかバランスが良いって意味ね」
「お、いきなりいいカードが来たぞ! 続けてよ!」
「次は『運命の車輪』ね。つまり、そのまま運命とかターニングポイントって意味よ」
「それで、それで、未来はどうよ?」夏央は自分の番になると真剣に聞く。かなり前のめりになっている。
「『塔』のカードね。突然の変化、啓示、転落などの意味があるの」
「転落ぅ?あまりいい響きじゃないな……」夏央はため息をつく。
「でも、安心して。ターニングポイントの次だから、啓示を受けてひらめきが訪れるとも読み取れるわ。全体を通すと……バランスを保っていたところに、ターニングポイントが訪れて、ひらめきを得る、もしくは驚かされるって感じね」
「うーん、全体的に見れば可もなく不可もなくだな」夏央は肩をがっくりと落とす。もっといい結果を望んでいたようだ。
「次は相棒の番だ! 周平は最後だから、大人しく待ってろよ!」
草次さんは僕が最後と言った。そうなると、天馬さんはすでに占ってもらったということになる。
「さて、相棒よりいいカードを引くぞー」暁が張り切って肩を回す。
「あの、カードを引くのは由美子さんだと思うんだけど……」天馬さんがストップをかける。
しかし、暁が人の意見を聞くはずもなく、三枚のカードをえいや、と並べる。
「しょうがないわね、本来は占う本人が引くんだけど。最初は、『月』ね。想像力や幻影、戸惑いって意味があるわ」
「うーん、よく分からないな。次行こうぜ、次!」暁は真ん中のカードを指す。
なんか偉そうな人が書いてある。何かに乗っているようだ。
「これは『戦車』ね……勝利、意志などの意味よ。最後は――」
空気が凍った。
「デス――死、か……」暁が固まる。
「……確かに、そのまま読むと不吉だけど、違う意味もあるわ。移り変わりって意味もあるの。だから、今回の場合は……そうね、戸惑っていたけど意志が固まって、移り変わるってこと。だから、何か強い意志を実行して、状況が変わるってところじゃないかしら?」由美子さんがフォローする。
「……」
暁は心ここに在らずで、由美子さんの言葉が届いていないようだ。それにしても、死のカード番号が十三番だとは。かなり不吉だ。
僕は気づいた。タロットは占い師がカードからインスピレーションを得て占うものだ。つまり、解釈の仕方は占い師次第とも言える。由美子さんはみんなが悪いカードを引くたびに、ポジティブな解釈をしていた。彼女の優しさが伝わってきた。
「……まあ、気にすんなよ、相棒。もうすぐ夕飯の時間だぜ! シャキッとしろよ!」草次さんの声が虚しく広間に響いた。
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