愛しの My Buddy --イケメン准教授に知らぬ間に溺愛されてました--

せせらぎバッタ

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 モーテルに入り、ベッドにダイブするように横になると、お互い競うように服を脱いでいった。生まれたままの姿になり、もみ合うように夢中で愛撫しあう。

 もったりとした汗ばんだ乳房は、皮膚に吸い付き、からめた脚は空を舞う。陰部に触れると腰が揺れ、ヴァギナに誘われた指が膣口をとらえた。ぬるっとした感触を確認しざらざらした内側を指でとらえると、ノーラの喘ぎ声がますます激しくなった。

 指を引き抜き、丹念に舌を這わせる。フルーティな味を愉しみながら、濃縮されたノーラの臭いを思いきり吸い込んだ。後から後から湧き出る愛液はいくら舐めても尽きることはない。

 ノーラのプリーズのかすれ声を耳にし、伸はペニスを挿入した。深い満足感と達成感を感じながら、全身で彼女の快楽をサポートした。ベッドはきしみ、瞳を合わせて微笑みあい、官能の波を共有する。同時に果てた時は、言い知れぬ充足感を感じ、抱きしめたノーラへの深い愛を感じた。

 やっと手にすることができた。

 大学院生活は多忙を極めた。ディスカッション中心の授業、レポート提出、予習復習で寝る間も惜しいくらいだ。同じ日本人留学生に比べれば英語のアドバンテージはあれ、専門用語を覚えるだけでなく咀嚼していくのも一苦労。

 ノーラを存分に抱けるのはマシューがいない週末だけ。共同親権が当たり前のアメリカでは週末ごとに過ごす相手が違っていたりする。ネイサンはニューヨーク勤務なので月に1回ということで双方が落ち着いた。

 ネイサンとは会いたくないようだったが、まだ幼いマシューを独りで行かせるわけにはいかない。帰りはネイサンがボストンまで送り届けてくれていた。

 片時も離れていたくなかったが、これも仕方がない。会えた時は浴びるように愛し合った。ドライブしたり、映画を見たり、ディナーはノーラの家で二人でつくったり。飽きることなく喋り、笑い、そして抱いた。

 もっと一緒に過ごしたいがために、伸は大学院を中退して働くから、結婚しようと、思いつきで言ったりもしていた。そのたびにピシャリとノーラにはねつけられた。

「出会った時の年の差は大きかったけど、今だと全然関係ないね」
「う~ん、どうかなぁ」ノーラは笑いを含んだ顔でいう。
「あっ、また子供扱いして。俺が大人の男だってわからせてやる」
「あ、あん」

 伸のいたずらに甘い声が返ってくる。仔猫のようにシーツにくるまりじゃれあう。
 肩を抱き寄せながら、サイドテーブルに置いたコーヒーを飲み、外の景色を二人でよく眺めていた。

 シトシトと雨が降っていた。ニューイングランドのひとつ、ボストンの紅葉が見頃を迎えていた。窓から通りを眺めれば街路樹が雨にけぶり、一幅の絵のような美しさだった。

 ノーラとのつきあいも3年になろうとしていた。無事修士課程を終え、現在は博士課程。ノーラは働きながらコツコツとCPAに必要な単位を取り、この度、めでたくUSCPA(米国公認会計士)の資格をとった。お互い勉強漬けの日々だ。

「伸、あのね、大事な話があるの」
 ノーラがためらいがちにいった。表情が固い。

「えっ、今日のディナーの話かな」
 わざとおどけて言ってみた。気持ちがザワザワし、落ち着かない。こんな表情を見たことなかったし。

「わたし達、もう会うのよしましょう」
「どういうこと。別れたいの?」
「結果的にそうなるかな。伸はまだ学生だし、まだ若い。わたしはもう30才過ぎで、ようやくマシューは小学校2年生。二人の将来を真剣に考えた結果よ」
「俺抜きで考えた結論だけどね。二人のことなのに」
 口調がぶっきらぼうになる。「いつまで俺の保護者気取りなんだ」
「ちがう、そういう意味じゃないわ」
「だったらどうして。俺は年齢なんて気にしない。いくつになろうが、ノーラはノーラだ。今だって十分魅力的だよ。そりゃ、俺は頼りないかもしれないけど」

 無理やり唇をあわせた。熱い抱擁をかわしたはずなのに、ノーラは顔をそむけ口をとがらした。
「急にこんな話をして悪かったわ。でもね、大事なことなの。
 わたし、USCPAをとったことをビジネス系のSNSに書いたの。それをニューヨーク時代の元同僚が見て、会社から正式にオファーがきたわ。わたしにも野心があるの。自分の足で立って、自分の人生を実り豊かなものにしたいの。伸は学業、わたしはキャリア。これからもっと忙しくなるわ」

「ニューヨークにいたってつきあうことはできる。たまにだって会うこともできるさ。画像付きのスカイプで毎日連絡を取ることもできる。そうだろう」
「伸、あなたはどんな仕事をしたいの。あなたは何がやりたいの。今あなたがしなければいけないことは、ドクターを目指すこと。他にないでしょ」
「ドクターを取ったら、結婚してくれよ。俺の望みはアメリカで就職先を探して、ノーラとマシューと暮らすことだ。他には何もいらない。頼むから、別れるなんて言わないでくれよ。何でもするから」

 胸にうずくまる伸の背中を、ノーラは優しくなでた。雨の中、通りを走り去るタイヤの音がやけに耳についた。

「わたしは大学を卒業して経理スタッフとして働いていた。ネイサンを愛していたわ。とても愛していた。マシューが生まれ、ちょっと病気がちの子だったから仕事を辞めて子育てに専念したんだけど。幸せなはずなのにどこか満たされなかった」

 ノーラは唇を噛んだ。
「わたしは、ネイサンを愛していたから、愛していたから、いつのまにか自分がなくなってしまったの。何でも彼のいうとおり、言いなり。わたしが勝手に描く家族のカタチを押し付け、幸せにしてあげてたと思い込んでいた。自分を捧げるだけならまだいい。ただ依存していただけ。重たい女」

 伸は返事をしない。どうせ話すことは別れを正当化する言葉の塊にちがいないのだから。

「そんな女、つまんないわよね。彼はだんだんイライラするようになって、つまらなくなったんだと思う。帰りも遅くなって。浮気してたわ。ヒステリックに泣き叫ぶわたしに、彼、こういったの。
『ノーラ、きみはいったい誰なんだい?』

 思い返せば、ネイサンも努力していたの。何とかわたしを立たせようと、仕事を始めてみたらとか、サークルとか、いろいろ言ってた。よけいなお世話だと思った。愛し合って結婚すればなんでも許されると思っていた。事態を放置していたのはわたし。
 わたしは家族という小さな部屋で、ネイサンを待ってただけ。二人で築き上げなきゃならないのに、全部任せっぱなし。修復不可能とわかって離婚したわ。『性格の不一致』ってことで」

 伸は突っ伏したまま、ノーラの乳首をいじっていた。セックスへの渇きで話が中断することを期待して。

「いくら愛していても、自分がなくなったら愛も終わるの。仮にネイサンとわたしが同化が可能だったとしても、お互い満たされない何かを持つと思う。違っているからこそ惹かれあうのに。同じになったらダメなのよね」

 伸は上体を起こし、ノーラを搔き抱いた。
「俺たちは独立した大人の男女でうまくいってるじゃないか。ネイサンの時とはちがう!そりゃ、学生と社会人だけど」
「わかってる。わかってるわ」

 言うか言うまいか、ノーラの唇がわなないた。
「伸は、わたしに依存し始めている!」

 ふいをつかれた。ノーラに相談することは多々あった。だって、そうだろう。アメリカに詳しくて経験のある年上の女性なんだから。自分なんか無くなったっていい。ノーラが気に入ること、喜ぶことだったら何でもしてあげたい。それが愛というものじゃないのか。
 ノーラがいない世界なんてあり得ない。

「依存しているつもりはない。ノーラは俺とつきあうことの何が不安なの?将来?だったら、大学院を辞めてすぐ仕事を探すよ」

「そういうところよ!」
 ノーラが叫ぶように言った。

「お願い、伸。あなたの世界を大事にして。わたしに影響を受けるのはいい。でも、わたしの言いなりじゃダメなのよ。あなたにしか作れない世界をわたしは見たいの」
「意味がわからない」

 24才の未来の定まらない、しょせん青二才。大学院だってあと何年かかるかわからない。下手をすればドロップアウトだ。未熟な自分はどうあがけばいいんだ。

「理由はそれともうひとつ、」この世の終わりのような顔をする。
「もうひとつ?」

「他に好きな人ができたわ」
 脳天をハンマーで殴られたような衝撃が走った。思わず頭を抱えた。怒りと哀しみで顔が歪んでいく。

「いろいろ言ってたけど、結局そういうこと?なら、最初からそう言ってくれよ。
 ノーラはネイサンとの愛をまちがえたんだろうけど、優しさも時々まちがえる。かえって残酷だよ。気になる人って誰?まさかネイサンと復縁?もう寝たの?そいつは俺よりも情熱的に抱いたの?ノーラの背中が弱いって知ってるの?」

「ごめんなさい。伸。わかって、あなたのこと大好きよ」
「保護者としてね」

 後から、後から嫌味な言葉が浮かんでくる。クソビッチというのだけはこらえた。ああ、こういうところが頼りないんだろうか。でも、正解ってなんだ?愛の正解ってなんだ?

 手早く服を身に着け、玄関のドアに手をかけた。追ってこないノーラに悔しくて拳を握る。このまま外にでるか。
 できなかった。振り返った。

 ノーラは手のひらで顔をおおいながら、肩を震わせている。

「キミのだした結論を祝福するよ。CPA資格と就職が決まったこと、ああ、それと恋人ができたことも、まとめておめでとう」

 視線をあげたノーラの顔は涙で真っ赤になっていた。
 我慢できなくなった。駆け寄り、ノーラを思いきり抱き締めた。両頬を手で挟み、キスを繰り返しながら、「笑って、ノーラ笑って。最後にキミの笑顔を刻みつけたい」
 ノーラが無理やり笑おうとする。

 泣かせるつもりはなかった。泣くつもりもなかった。

「愛してる」
 生れて初めて言った言葉が別れの言葉となった。
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