愛しの My Buddy --イケメン准教授に知らぬ間に溺愛されてました--

せせらぎバッタ

文字の大きさ
上 下
4 / 31

プロローグ(4)

しおりを挟む
 お互いの息遣いが徐々におさまってくると、優しく腕枕をされた。コロンと汗の匂いが鼻腔をつく。

「感度がいいね。とても気持ちがよかったよ。イク時の膣の締まりに感動した」

 ああ、残念だ。こんなピロートークは期待していない。口がへの字になる。

「あれ、キミはよくなかった。そんなはずないよな。あんなに感じてたのに。ぐちゃぐちゃに濡れてたのは、演技?ホントは物足りなかった?」

 モンモンとする。優しく髪をなで、可愛いとか、好きとかいうのが王道でしょう?
 やった後悔はない。だけど。

 まあ、こんな奴とはわかっていた。1回やられて終わり。片思いがこんなカタチで終わるなんて。嘘でもいいから、今は恋人同士のような囁きが欲しかった。

「少し休んだら2回戦行こうか。今度は満足させるから、機嫌直して」

 狙っているのか、はずしているのか、額にキスをしながらのたまう。あいてる方の手は胸をなでまわしている。
 ああ、唇も手もこんなに優しいのに。黙ってれば最高なのになぁ。人間としては尊敬できるのに、男としてはクズ!!一夜の恋の余韻くらい与えてくれてもいいんじゃない。

「先生はどうして私を抱いたの」

 どうせ、抱きたかったから、とか言うんだろうな。今夜はやりたかったからとか。
 嫌われてはいないと思う。だからといって特別というわけではないだろう。
 いいとこ、セフレどまりかな。どうしよう。セフレで我慢する?
 わたしって、ただのバカなの。

「キミもありきたりの質問をするねぇ。その手の質問てさあ、『私と仕事と、どっちが大事なの』みたいだよね。意味がわかんない。そういうこと聞く人多いけどさ」

 そりゃ先生に一度抱かれたら、聞いてみたくもなるだろう。真面目な女子大生や結婚適齢期の女性だったら、先のことを確認したくもなるよ。

「ふたりはセックスしたくなったからした!それじゃ、だめなの?」

 最低!このクズ!クズ男とわかっているのにセフレでもいいかな。と思っちゃう。

「だって、わたしの一方通行の片思いだと思うと悲しくて」

 涙があふれてきた。もう、2回戦なんか無理!おうちに帰ろうかな。終電はまだ間に合うだろうし。
 まぶたにキスをされ、涙を丁寧に舌ですくいとられた。

「何で泣くの。俺、傷つけた?」
「先生のバカ、バカ」涙がジワッとまたあふれた。「でももっとバカはわたし!」

 胸をグーでポコポコ叩くと手首をつかまえられた。
「バカじゃないよ」

 伸は抱きしめながら、優しく髪にキスをした。
「どうしてバカだと思うんだ」

「だって、先生にとってはワンナイトラブ。今夜の相手がたまたまわたしだっただけ」

「こんなに大事にしているのに、そう思うんだ。心も身体もキミを向いているんだけどね。どうしてワンナイトって思うんだろう」

 甘くてとろけそうなキスの雨が降ってきた。満たされる。さっきまでの悲しみは簡単に消え、暖かい気分でいっぱいになる。

「伝わった?表情が柔らかくなったよ。キミはまだ若いし、魅力的だから身体だけのセックスの経験はないだろう」

 えっ?

「興味のない相手とのセックスは、マスターベーションと同じ。余韻も何もない。お互いにね。俺といてそう感じる?」

 全身で愛を感じたのは事実だ。熱っぽい視線に探るような指先。どれもこれも愛の行為にふさわしい。
 先生の特別な誰かになれる?

「じゃあ、またデートしてくれるんですか」
「キミさえ良かったらね」
「セフレですか?」
「セックス以外の時間も共有したいと思ってるよ」

 うん?つきあうってこと?

「彼氏になってくれるんですか?」
「う~ん、たぶんならない」

 玉砕した。ツーンと鼻の奥が痛くなり、風邪をひいたような声になってきた。

「彼女になりたいの?」

 セフレより特別感はあるけど、ポリアモリー?ハーレムの中のone of them?混乱してくる。
 どうしたらいいの?わたしはどうしたいの?

「俺は現代の男女におけるステディの関係はのぞまない。欺瞞だらけの、幸せ芝居だらけの、本能と進化を無視した現代のシステムにおける男女関係にまったく興味がない」

 菜穂はわからない。先生は何をいいたいんだろう。男と女は好き合ってセックスして結婚して子供ができて、一緒に老いていくんじゃないの?かけがえのない家族は人生の喜びなんでしょう?うちの両親だってなんだかんだで幸せそうだし。

「先生は自由でいたいんですね。一人の人に縛られたくない。自分が一番かわいいんですね」

「何いってるの?みんな適当にごまかしているけど、それが人間の本質なんじゃないのか。どこもかしこもパワーバランスがいびつで、誰かがどこかで合わせている。我慢している。得する人間、損する人間。支配する者。搾取される者。愛という宗教にまるめこまれてるだけだ」

 先生は深いため息をついて、「引き返すなら今だよ。キミの考える普通の恋愛に俺は向かない。キミしだいで、ワンナイトラブに終わる」

 なんかよくわからないけど、引導を渡された。選択権は自分にあるような、ないような。

『愛という宗教』。ひっかかる。誰かを好きになるのは自然の摂理。ふとしたはずみで心が揺れ、気がつくと夢中でその人を想う。そこを起点に人間の闇が次々とあぶりだされる。聖人にも悪魔にもなってしまう、愛とは何だろう。

 恋バナには事欠かないし、いろんな情報は洪水のように押し寄せる。メンヘラ、ヤンデレ、ストーカー、ロミオメール、親ガチャ、毒親。始まりは確かに愛だったのに。

「先生、それ、いったん保留にしといてもらえる?」

「先送りときたか。いいさ。べつに急いでないし。明日は授業があるのか?」
「最後の授業があるけど、午後から。先生は」
「俺は昼前までに行けばいいだけ。一限の授業は講師も生徒もつらいよな」

 はあ、こっちは4月から毎日1限なんですけど。

 あっというまの学生生活だったなぁ。おばあちゃんが、人生なんてあっという間よ、なんて言ってたけど、きっとそうなんだろう。これからどんな人生が待っているんだろう。まだいっぱい時間は残っているんだろうけど、どうやって生きていくんだろう。ちゃんと生きていけるかなぁ。

 好きな人ができて結婚して子供をつくって家を買って定年後に旅行に行く。
 ずっと独身で趣味を満喫しつつ、定年後に静かに暮らす。

 要約するとヒトの一生なんてそんなもんなんだろうな。その中にいっぱいドラマがあるんだけど。
 どんな老後が待っているんだろう。ちょっと早いけど。

「なあ、そろそろ2回戦いかないか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

警察官は今日も宴会ではっちゃける

饕餮
恋愛
居酒屋に勤める私に降りかかった災難。普段はとても真面目なのに、酔うと変態になる警察官に絡まれることだった。 そんな彼に告白されて――。 居酒屋の店員と捜査一課の警察官の、とある日常を切り取った恋になるかも知れない(?)お話。 ★下品な言葉が出てきます。苦手な方はご注意ください。 ★この物語はフィクションです。実在の団体及び登場人物とは一切関係ありません。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

処理中です...