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「どうだった?」
「あまりの遥香の積極性に骨抜きになったよ。そのうちおもちゃとか買いだして、さすがに遥香もおかしいと気がついたらしくて、その男とはすぐ別れてた。相手がストーカーみたいになって、会社も辞めて引っ越しもしてた」

「ああ、それは聞いてる。美央がらみだったのか。その男、よく別れてくれたね。美央はこんなに魅力的なのに」
「うん、遥香が別れたがっていたから、協力してあげたんだ。まっ、わたしが悪かったから罪滅ぼしもあったんだけど。たいした男じゃなかったし。遥香は男を見る目がないんだよな。優しくされるとすぐなびいちゃう」
「協力って?」
 ああ、といって、美央はその時のことを話してくれた。


 部屋の中で掃除をしていると玄関のチャイムが鳴った。今はキッチンの戸棚の拭き掃除をしている。無視しようとしたが、執拗に鳴らされた。仕方なく手を洗いドアスコープを覗くと、別れを告げたはずの男が立っていた。
 ドア越しに怒鳴る声に負け、ドアを開けた。ここで遥香と入れ替わった。

 入るなり男は美央を抱きしめた。耳元で繰り返される罵りの言葉にうんざりした。好きな女性に真逆の言葉を吐き続けるとはどういうことなのか。これは愛ではなく執着なのだろう。

「あがって」
 男を部屋に招き入れ、美央はベッドに腰かける。スルスル服を脱ぎ全裸になると、乳房を両手で揉みながら笑いかけた。
「早くきてよ」

 男がスーツの上着とスラックスを脱ぎ、続いてボクサーパンツを乱暴に膝まで下げた。屹立したペニスに手を添え、美央の顔面に突き立てる。

「咥えろよ。ほら、おまえの大好きなもんだぜ。悪い子にはお仕置きが必要だよな」

 頭を押さえられ、強引に咥えさせられた。喉の奥まで深く飲み込まされ、さすがの美央も涙目になる。
 腰が激しく動き、苦しくなった。
 こういうところがイヤなんだよ。
「ちょっと待って。あんまり激しくしないでよ」

 男はギラギラした目で無言のまま美央の身体を四つん這いにさせた。濡れてるかどうかも確認せず、いきなりぶち込んできた。

「激しいのが好きなんだろう。ふだんは猫をかぶってるくせに、本性はメス豚なんだから。遥香は俺の下僕だ。ご主人様のいうことは何だって聞けるだろう。ほら、いきなりだって、こんなに濡れてきた」

 男が真正のSになってきたことに気がついた。
 スイッチ入れちまったか。前回はここまでやり放題にさせてはいない。無視していたことでかえって妄想が膨れ上がってしまったのか。

「もっとイジメて欲しいか?俺のこと無視しやがって。悪い子だよなぁ。俺がどれだけ愛しているかわからせてやる。ああ、俺にはおまえしかいない」

 男が美央の尻を叩く。バシン、バシンと力をこめて。
 痛みと屈辱で美央は唇をキュッと噛む。
 SMバーにでもいけよ。

「ますます濡れてきたぞ。おまえもこれが欲しかったんだな。ああ、ビッチなメス豚だ。ほら、もっと腰を振れよ。ご褒美だぞ、これは。いいだろう、俺のは」

 女体は防御のために異物が混入されると条件反射で身体が濡れることがある。いくら説明しても無駄だろう。美央はいつものように意識を切り替えた。自分はセックス担当なのだから。

「ああ、それ、いい」
 乳首を乱暴につままれ、美央はますますよがる。男の好みに合わせてとっておきの声をあげる。

「そんなに気持ちいいか。ああ、おまえは俺がいないとダメなんだ。俺がついててやるから。今度は首輪を持ってくるぜ。俺のメス犬」

 男はますます興奮し、背中に覆いかぶさってきた。イク時に背中を齧られた。痛みと快楽で美央は一瞬気を失った。
 ベッドで目が覚めると男のフニャッとしたペニスが目の前にあった。

「ほら、咥えろよ。ご褒美だ。二人っきりの時は、上か下の口のどっちかにずっと入れっぱなしにしてやる」
 無理やり咥えさせられた。見上げると、だらしなく開いた口でサディスティックに燃える瞳が見下ろしていた。

「ほら、ほら。ご主人様のいうことを聞けよ。早く勃たせろよ」
 頭を股間に押さえられ、美央は反射的に顎が落ち、歯が当たった。
「イテ、何するんだよ。ええ?力関係わかってないな」
 頬を張り飛ばされた。怒りで真っ赤になった男の顔はふるふる震えていた。

 夢中でキッチンに逃げた。いくらセックス担当でもこんなのやってられない。遥香の男を見る目にはうんざりだ。都合が悪くなると中に引きこもってしまい、メンドクサイことを押し付けてくる。だったら初めからそうならないようにすればいいだけなのに。
 仕方ないか。そうやって生きてきたんだから。でも、どこかやりきれない。

 美央はキッチンの引き出しから包丁を取り出した。
「近寄らないで」
 胸に突きつけるように前に出す。
「遥香よせ、」
 男が少しずつ近寄ろうとする。
「それ以上近づいたら刺すから。さっさと着替えて出て行って」
 男はヘラリと笑い、なおも近づこうとする。
「悪い子だなぁ。そんなにお仕置きされたいのか」

 包丁を突きつけたまま玄関に移動する。いざとなったら外にでて助けを求めればいい。全裸なのは恥ずかしいが、構いはしない。

「裸で外に出ていこうというのか?俺から逃げられると思っているのか?」
 男が間合いを詰めてきた。切っ先の向きを変え、自分の首筋に包丁を当てる。

「これ以上近づいたら、首を切るよ。あんたは殺人未遂。ああ、運が悪ければ殺人事件になるのかしら。膣の中にある精子がレイプの証拠。それでもいいのね」

 刺し違えてもいい覚悟で言葉を放った。
 さすがに男の顔がゆがんだ。もともと気も器も小さい男だ。服を手早く身に着けると、逃げるように去っていった。

 あれだけ脅せば二度と近づいてこないだろう。次があったらその時は録画し、警察に突き出す。
 問題は遥香をどうするか。
 少し考えて美央は包丁を思いきり床に突き立てた。

 そこまで話し終え、美央は疲れたようにため息をはいた。
 徹は美央を抱きしめ、辛かったね、もう大丈夫だからと何度も同じ言葉を繰り返した。

「それからは、人恋しくなると美央が寝た後、フラフラと繁華街をうろついて、セックスできる相手を探してた。お金をくれる奴もいたし、楽しかったよ。たまに記憶がなくなって遥香は怖がっていたけど。で、そのうち淳に会ったんだけどね」

「俺が時々記憶を失った時に偶然会ったというわけか」
 徹は美央をかき抱いた。
「良かった。淳と美央で良かったよ」

 美央も遥香も秘密を共有できる貴重な存在だ。二人がいなかったら自分はどうなっていただろう。淳を飼い殺せるわけでもなく、常にリスクに怯えるだけの人生だったかもしれない。

「俺が残業している時、電話くれたよね。あれで二人のことがわかったんだけど」
「ああ、あれね。淳が遅いから電話してみたんだけど。徹だったからすぐ切ったの。で、二人とも履歴を消し忘れちゃったの。まあ、よくあることだけど」
「淳としたセックスは気持ち良かった?」
「最高だった。わたし達相性がいいんだよ。徹と遥香もいいでしょ」

 なんとも返答に困る。確かに先日の遥香とのセックスは良かったが。それまでは自分の欲望もわからなかったし、どこまで激しく抱いていいかもわからなかった。遥香はどこまでも受け身で、それはそれで可愛かったが、物足りなかったのも事実だ。

「美央は淳とのセックスもいいけど、俺ともしたくなったんだ」
「そう、教えがいがあるし、遥香にももっと楽しんでもらいたかったから」
「教えがい?美央は俺を調教してるの?そういう悪い子にはお仕置きしないとな」
 徹は美央の性器に手を伸ばす。導かれるように指が一点に吸われていく。

「ああ、そこいい。遥香の感じるところを教えてあげてるのよ。同じ場所が気持ちいいはずだから」
 教えられるがまま、美央の感じるところをまさぐった。たっぷり濡れたヴァギナは指を飲み込んで、さらに奥へと誘おうとしている。

 今でこそ遥香は濡れるが最初はそれほどでもなかった。同じ女性なのに。やはり、精神的なモノに左右されるのだろう。

「美央はセックス以外で好きなことはなに」
「そうねぇ。遊んでいる時かな。最近はいつもベッドの上だから、たまには外で遊びたいなぁ。前は夜繁華街の近くの公園でビール片手に鼻歌歌ってた。街灯の側の桜の樹の下で、街の灯りをぼんやり見てたり。あの時の桜はすごいきれいだったなぁ」
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