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それゆけ!大阪ブラック・タイガース!

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西暦2022年秋。
人気低迷する日本プロ野球に喝をいれるべく、日本を愛し、日本野球を愛する
S・ジョブズ2世は、プロ野球の東西に新球団を設立する事にした。
東京のチームは、【アップル・東京・ブラック・ジャイアンツ】パ・リーグ所属。
大阪のチームは、【アップル・大阪・ブラック・タイガース】セ・リーグ所属。

球団創設の挨拶に立ったS・ジョブズ2世は、黒のトレーナーに
黒のジーンズという黒々したシンプルないでたちで、
並みいる記者達に淡々と語った。
『この2チームは、日本の野球を世界最恐レベルに引き上げるだろう』

S・ジョブズ2世は同時に多額の資金を使って日本プロ野球機構を買収、
その制度にあった【外国人枠制度】を廃止させた。
最高のプロスポーツというものは、最高の選手によって行われるべきであり、
そこに国籍や人種の壁などあってはならない。

さて、新球団大阪ブラック・タイガースには、バリー・ボンズ氏が監督として
就任する事が発表され、監督就任の記者会見が行われた。
この就任会見でボンズ新監督は早速吠えた。

『我がチームのモットーはスピード&パワーだ!』
『我がチームの評価は、打者はホームラン数、投手は奪三振数で決める!
打率だと?俺に割り算なんかやらせるな!
ヒットはホームランの打ち損じだ!』
『我がチームでは、球速150㌔以下のボールをチェンジアップと定める。
よってチェンジアップしか投げられない投手は採用しない!』

この方針で入団契約交渉が行われた結果、選手は全員黒人になってしまった。
文字通りのブラック・タイガースである。

そうして2023年3月30日。新年度の日本プロ野球が開幕した。

以下は、このシーズンにおける大阪ブラック・タイガース選手のコメントである。

対阪神タイガースの開幕戦先発、20奪三振を奪うも被本塁打8本、
完投したジョン・ドナルドソン投手は記者のインタビューにこう答えた。
『調子は最高だ!20個も三振を取ったからな。
被本塁打8本?たいしたことじゃない』
試合は17対9でブラック・タイガースの勝利。

開幕第2戦は9回表まで18対18の超乱打戦、
同点の9回表、ノーアウト1塁の場面、マン振りで空振り三振をした
ウイリー・メイズ選手。
送りバントのサインはなかったのですか?という記者の質問に対して、
『バントだと?我がチームにそんなサインは存在しない!』
試合は19対18で阪神タイガースの勝利。

開幕第3戦、4打席4安打のブラック・タイガース、ハンク・アーロン選手。
絶好調ですね!との記者の言葉に対して、
『ガッデム!俺はホームランしか狙ってないんだ!』
試合は18対0でブラックタイガースの勝利。

こうしてブラック・タイガースは3試合とも打ちまくってシーズンをスタートした。
1番から9番まで、全選手が全打席マン振りである。

このシーズン途中、調子を上げて来たクール・パパ・ベル選手。
出塁すると100%盗塁する事で有名になる。
その事について記者に質問されると…。
『塁に出たら走るのが当たり前だ!なんで走らないのか?
そっちの方が俺にはわからない』

8月の蒸し暑い夏。
巨人戦に先発したサチェル・ペイジ投手は、27連続奪三振の完全試合を記録。
その日4打席連続ホームランを放って、
ヒーローインタビュー受けたジョシュ・ギブソン選手は語った。
『サチェル?奴は野球が下手くそだ!わがチームでは一番下手くそな奴が
ピッチャーって決まってるんだ。当たり前だろう、みんな打ちたいんだ!』

また、その試合を決める4本のホームランを打ったギブソン選手の打順が、
何故9番だったのか?との記者の質問に対して、彼は平然と答えた。
『打順は試合前にじゃんけんで決める。一番公平だろう?
今日は運が悪かったのさ…』

そのシーズン、100試合に登板し、98試合に完投。
100勝0敗、防御率0.01のサチェル・ペイジ投手。
投球の秘訣について…
『最近のピッチャーは滑ったり曲がったり落ちたりするボールを
多投し過ぎる。いくら変化したって中途半端なスピードのボールは、
所詮打たれる。もっとストレートとチェンジアップを磨くべきだ。
ストレートは165㌔を越えればど真ん中で十分だ。
チェンジアップは100㌔以下が望ましい。
俺かい?ストレートは平均170㌔、チェンジアップは90㌔ってところだな』

さて、その年の日本シリーズは、
東京ブラック・ジャイアンツと大阪ブラック・タイガースとの対戦になった。
最終戦までもつれた結果、最終戦はブラック・ジャイアンツがボブ・ギブソン、
ブラック・タイガースはサチェル・ペイジ両投手の先発となり、
息を飲む投手戦になった。

9回表、4番ジョシュ・ギブソンの一撃はピッチャーの股間を抜いたかと思うと、
そのまま急上昇してセンターのバックスクリーンを直撃。
その裏、この1点リードを守るべく、サチェル・ペイジは最後の打者、
バック・レオナードに挑む。2ストライク後の
サチェルの3球目、ど真ん中のストレートをバック・レオナードはマン振り!
物凄い風圧と共に空気を切り裂く凄まじい爆音の空振りで試合は終わった。

球速の表示…180㌔…。
世界新記録達成である。

『よう、サチェル!お前はピッチャーにしては野球が上手い方だ…』
笑顔のジョシュ・ギブソンとサチェル・ペイジは固い握手をする。

こうして日本の野球は新時代へと進んで行くのであった…。


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