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12.研究開始

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 俺はウルクの護衛を頼まれた日。寝ようにも考え事で目が覚めてしまい、屋敷の外に出ていた。

「……やっぱり確かめないと、気が済まない」

 月明かりに照らされて、道なりに進んで森林へと入る。
 まだ辛うじて屋敷が見える所で、足を止めた。

「ここら辺で良いかな……」

 俺は昼食後、ふと思い浮かんだことがあった。
 害虫駆除に使えるレモン水だ。

 これが暗黒バッタに効くかを試したかった。

 そのためには、暗黒バッタが必要なのだが……なぜかどこにもいない。それどころか、虫も見かけなかった。

「もしかして、レモン水の効果でここら一帯の虫が全部居なくなった……?」
 
 そこまで効果があるとは思えないが……。
 しばらく散策すると、ようやく一匹の暗黒バッタを見つけることができた。

 すぐに捕まえる。

「何をやっているんだ? アルト」
「へっ⁉」

 ひと気のない深夜の森林。突然声を掛けられれば、誰でも変な声がでるだろう。
 そこにはゆったりとした服装のウルクが居た。

 銀髪は纏めて、肩に流している。

「それは……暗黒バッタじゃないか」
「これは、その……ちょっとね……な、なんでここに?」
「寝付けずに窓を見ていたら、コソコソと怪しい動きをするアルトが見えてな……何か隠そうとしていないか?」
「隠そうってほどじゃないんだけど、確証がないから黙ってたことがあるんだ」

 ウルクになら話しても大丈夫だろうと、俺は事情を説明する。

「あ、暗黒バッタを駆除できるかもしれない⁉」

 驚いて声を荒げる。

「でも、レモン水は近寄らせないって言うだけで駆除はできないんだ。たぶん、それだと根本的な解決にはならないよね」

 ここに近寄らなくなっても、別の場所で大きな被害を出すのは目に見えて分かっていた。
 第一優先は、駆除だ。

 一時的に効果のあるレモン水では、その場しのぎでしかない。

「確かに……奴らは大移動をすることも可能だ。そこを考えれば、近寄らせなくても、違う街で被害が拡大するだけだろう」
「だから、何とかする方法がないかなって……」
「それを……こんな深夜にか?」

 呆気に取った様子で言う。
 怪しい行動と疑われても文句は言えない。

 俺は思い立ったら行動してしまうし、変に期待させたくなかった。

「お前は────相変わらず凄いことを考えるな!」
「えっ……」
「でもダメだぞ、一人で考え込むのは。せめて、私を頼ってくれ」

 ウルクが「一匹だと実験できないだろ。私も手伝うぞ!」と暗黒バッタを一緒に探して、五匹見つけることができた。
 飼育用の籠を持ってきて、中に入れる。屋敷に持ち帰った。
 
 俺は寝る前にノートを作り【暗黒バッタ研究記録】とこれからやるべきことを書いて行った。

 ・暗黒バッタの弱点を知る(外部からの刺激)。
 ・餌、または毒性のある食べ物を与えた場合、どういう影響がでるか(内部からの刺激)。
 ・また系統類縁種との関係

 この研究が進めば、ドラッド王国を救うことができるかもしれない。
 
 次の日、この研究のことは即座に広まり侯爵家の中で一躍話題となった。

 そして、イスフィール家の会議が始まった。
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