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5章 開拓編

106話 村の様子

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 タイラントマウンテンを設置するフロアの拡張に使うDPを冒険者から稼いでいる間、暇を持て余してしまったのでVRキューブを使って探索することにした。
 名目上は探索と言っているが実のところやることがなく暇なのだ。
 侵入中の冒険者を偵察するか、村の様子を見に行くかぐらいしか今のところ選択しはなく、どうせならもう一度村の様子を確認して状況を把握しておけばいざという時何かしらの手助けができるかもしれない。

「んじゃ、もう一度村へレッツゴー!」

 ダンジョン入口の階段を勢いよく上っていくと丁度、冒険者と思われる者達とがすれ違う。
 装備からして駆け出し冒険者であろう者達は、和気あいあいと話をしながら我がダンジョンへと繰り出していった。

「ほほぉー、なかなか良いペースで冒険者が入ってるなぁ。これも街建設の影響かな?」

 冒険者がこれほどまでに出入りが増えたのは、一概に村づくりが始まったお陰だろう。
 仮設小屋と思われる場所には複数人が出入りをしており、大よそ半分が冒険者と思われる。
 少々興味があり、その仮説小屋に近づいてみると案の定、冒険者が何やらやり取りしていた。

「これが今回の魔石だ! 他にもドロップアイテムとかあるから色を付けてくれよな!」

「おう見せて見ろ……ふむ、悪くないな。やはりこのダンジョンの魔石は他のダンジョンと比べて良質なものが採れる」

 小屋の手前にある仮設テントから話し声は聞こえ、中には髭を生やした如何にもという巨漢が魔石をいろんな角度から見つめていた。
 どうやら魔石の質を計っているようで、右手に虫メガネ或いはルーペのようなものを持って真剣な表情で魔石を覗き込んでいる。
 袋の残りを木製のテーブルに敷かれた革の上へひっくり返し魔石や角、水晶などが現れ次々鑑定していく。
 因みに鑑定を受けている冒険者は三人組で男二人に女一人で、皆まだ十代半ばと言ったところだろうか。

「鑑定終わったぞ。意外と集めてきたな、それにドロップアイテムも多いみたいだしカイル達にしちゃーよく頑張ったな!」

「おうよ! 今日はゴブリンが多かったぜ! まぁ俺達に掛かればこんなもんよ! それで幾らくらいになる?」

 自慢げに言う薄い赤色が入った茶髪がカイルというらしく、革鎧を着こみ腰にはロングソードを携えている。
 そんなカイルの隣から会話に割って入って来る者がいた。

「またカイルは自慢げにぃ、あんたゴブリンにやられそうになったじゃない!」

「う、うるせぇ。あっあれは急に出てきたから驚いただけで、ゴブリンなんか屁でもねぇ」

「ふぅ~ん! なら今度からはカイルの持ち分増やしてもらおっかなぁー」

「えっ! あぁいいぜ! 幾らでも切るまくってやらぁー!」

 割って入ってきたのは甘栗色の髪にこげ茶色のローブ、それに杖を持った少女。
 背丈はカイルより低いがすばしっこそうな見た目と違って、後衛職の魔法使いのようだ。

「二人とも相変わらずだね。続きは後にして早く報酬を受け取ろ? 列できてるみたいだしさ」

 そんな二人を諫めるように言うのは背の高いほっそりした冒険者で、腰にショートソードと背中に弓を装備している。
 その冒険者の言う通り、後ろには数人の冒険者と思われる者が並び鑑定を待っているようだ。
 後ろに視線を向け列になっていることを確認した二人は、慌てた様子で報酬を貰うべく、鑑定士の男の下へとやってくる。

「……それで、今回の報酬は銀貨4枚に銅貨6枚だ。受け取ってくれ」

「えっ! 銀貨4枚もか!?」

「ああ、多少色を付けてある。このドロップアイテムの分と合わせたらその位にはなる」

「おおぉー、マジか!! このダンジョン美味いなぁー」

「受け取ったらさっさとどいてくれ、後が詰まってっからな」

「おう」

 三人組冒険者は仮設テントから移動して脇にずれると早速話し合いに移った。
 今回の報酬が銀貨四枚と銅貨六枚なのでこれを三等分れば各人の報酬になるわけだ。
 此方の貨幣価値がどの位になるのか分からないが、情報を手に入れる為にも駆け出し冒険者であるカイルのパーティーへと近づいていく。
 話を聞いているとどうやら貨幣に関しては、十枚で一繰り上がることがわかった。
 今回で言えば銀が四枚なので銅貨に換算すると四十枚になる。
 そうなると銀貨4枚銅貨6枚だと三人で等分した時余りが出るが、その辺は冒険者、うまくやるだろう。

「さてと、他には面白そうなのはないか……あっ!」

 周辺を見渡し他に変わったことがないか首を振ると仮設テントや小屋の通りを真っ直ぐ行った先に何やら高く積まれている物を発見した。
 通りを抜け近くまで歩み寄り高く積まれていた物の正体を確認する。

「うげぇっ! 魔物の死体? まさか、これ全部狩ったってこと?」

 余りの光景に思わず鼻を押さえてしまうが、VR中は匂いを感じることができない仕様だ。
 興味本位で近づいたことに今更後悔し始めたが遅かったようだ。
 気を取り直して他に見ていない場所を散策して時間を潰すとしよう。
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