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4章 交渉編

94話 みんなの部屋を作ろう

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 ダンジョンを修復した後、残りDPで皆の部屋を作っていくことにした。
 個別の部屋が良いだろうということで手始めに一階層分購入して大きさを拡張する。
 まずは四人分のスペースをそれぞれ囲っていき木製の扉を設置。
 内装も最低限なベッドと椅子にテーブル、棚を一つ置いてシックな印象に仕上げてある。

「よし、一先ずは四人分の部屋が完成した。お次は天狐とノームの部屋を作ってっと」

 四人の部屋を作った後は天狐とノームの部屋で、今は対談部屋にて待機してもらっているので素早く作成していく。
 新設した階層の半分は既に埋まっているので、残り半分に二人分の部屋を先ほど同様に枠を囲って扉を付け最低限な内装をちょちょいと付け加えて完成だ。
 後は各部屋の微調整を画面を操作して行っていくがこれが中々面倒だ。

 こうしてみると部屋は全て同じ内装になっているので後は各自で個性を出していくだろう。
 といいつつもこのダンジョンに居る限りそれも難しいかもしれない。
 
「宝物庫とか作ってそこにガチャで当たった景品を投げ込んで好きに使ってもらうとかよさそうだけど、またもDP問題が浮上してきたよ」

 ダンジョン内に宝物庫を新たに作成してガチャの景品置き場にするのも悪くないと考えつつも、このDP問題を解決するべく早く安定的に稼げるようになりたい。
 その為にはやはり冒険者を呼び込むことが経験上最も効率がよく、近々ダンジョン周辺に街をつくるらしいのでそう遠くないうちに安定期が来るだろう。
 それまでは各階層にあったダンジョン強化やお宝の配置などが自ずと必要になって来る。
 必要になった時に考えるとして、あれこれ考えているうちにベヒモス以外の部屋が完成したので皆に声を掛けることにした。

「みんなちょっといい? 各部屋が出来たからみて見てよ! 階層は……対談部屋の下に移動しておいたから!」

 隅の方で先ほどから何やら話し合っている四人が此方の呼びかけに振り向くと真っ先に返事をしてくるのはエスタだ。
 このメンバーの中ではエスタがまとめ役兼リーダーという役目が自然と定着しつつある。
 配下にまとめ役がいると此方としても凄く助かるのでエスタに感謝したいくらいだ。

「部屋が出来たのか? よし、早速行ってみるか!」

 エスタはスタスタと歩いてベヒモスの横を通り過ぎるとそのまま進んで行く。
 そんなエスタに追随するように他の者を歩いて部屋がある隣の階層へ行ってしまった。
 最下層のコア部屋には体を支えてもらっているスラリンと目の前のベヒモスが残った。

「さて最後はベヒモスの部屋だけど、こんなに大きいと部屋も大きくなるよね」

 どんな部屋にするか検討していると胡坐に腕を組んでいるベヒモスが反応した。

「俺の部屋は適当でいいぞ、取り敢えずは場所さえあればそれでいい」

 ベヒモスは静かにそう言い沈黙した。
 皆の部屋に十万近く使い残りはそこそこ残っている為、作ろうと思えばできなくはない。
 だが今後何が起こるか分からない状況でなるべくなら少しでも残しておきたいというのが本音だ。
 本人は場所さえあればいいと言うが一応本当にいいのか確認を取ることにした。

「場所さえって言うけど、本当にいいの?」

「ああ、この体だ特に不自由はない。だが……」

 大きな体は筋肉質と呼んでいいのか甚だ疑問だが確かにあまり部屋の影響を受けにくそうだ。
 ベヒモスは最後の方に続きを濁す。

「だがなに?」

「だが、強いて言うなら光るものが欲しい」

 ベヒモスが司る内のひとつに貪欲とあるのでその影響からか光る物、即ち宝が欲しいという意味だろう。
 管理画面をタップして光る物があるか探してみると鉱石類がそれにあたる気がする。

「光るものって具体的にはお宝っていうこと?」

「まあそうだな」

「何でもいいの?」

「ああ構わない」

 取り敢えずは先にベヒモス専用の部屋を作ることにする。
 と言っても階層を追加して入口に大きな装飾残った扉を設置して終了だ。
 ベヒモスが光物が好きという事で大きな開閉式扉には少々DPを奮発して立派な意匠が施されたものを選ぶ。
 色調は青みがかってはいるが紋章が彫られた溝の所に宝石が埋め込まれており、この扉には侵入者弱体化の魔法が施されている。
 侵入してきた獲物を弱体化させたうえでタコ殴りにできるという凶悪な扉だ。

 この部屋は少々奥行きを長くして最奥にお宝を設置する祭壇を用意して、そこに今までガチャで当たったいらない景品を放り込んでいく。
 魔石類や武器類を中心にあまり使わなそうな道具も置いていく。
 その際、侵蝕者に対して奮闘した四人への報酬を思い出し、後で戻って来た時にでも渡すことにした。
 そんなこんなでベヒモス部屋兼宝物庫が完成した。

「取り敢えずは部屋を作ったから! 希望通りお宝を設置しておいたよ! 一応言っておくけど必要な時は取るからね? この部屋は宝物庫にするからベヒモスにはそこの門番をお願いするよ」

「ああ、わかった。宝物庫か……」

 ベヒモスはそう言って胡坐を解き振動を縦ながら立ち上がった。
 立ち上がったことに了解を得たと認識したので早々に宝物庫へ転移させることにした。

「あっ! それと門番以外にダンジョンの巡回もお願いするかも! その時はまた念話するから!」

「わかった!」

 ベヒモスの足元に転移陣を起動させ光が包むと宝物庫へと転移した。
 目先の問題を片付け一息つくと入口の方から皆の話し声が響いてきた。
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