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3章 紛争編
35話 王国会議‐後‐
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会議が終わり宛がわれた部屋に戻ると晩餐会の支度を行う。
窓の外は既に日が落ち暗闇が辺りを包む。
マリベルとロマーリアもドレスに着替え晩餐会の準備を始めた。
この時、女とは色々準備があって面倒だなと思いながらも自分の支度を済ませ、晩餐会の会場へ行くと他の主賓やら関係者が勢揃いしていた。
儂が現れると他の者達が数名挨拶に来たので、適当に相槌を打ちながら受け流す。
程なくして宰相が現れ晩餐の挨拶をを述べ始めた。
「この度は御集り頂き恐悦至極に存じます。細やかではありますがごゆっくり歓談ください」
短く挨拶を述べた宰相は、そのまま別室へ行ってしまった。
(相変わらず忙しい男だな)
右手に持ったグラスに口をつけワインを含むと仄かな酸味が口いっぱいに広がる。
(ここの酒はいつ飲んでも美味いな)
暫くグラスを傾けていると、後ろから声が掛かり振り向くと晩餐用の礼服をきたルネス卿がいた。
「ぺトラ卿、彼方で話でもどうですかな?」
ルネス卿の視線を辿るとそこはパーティー会場のテラスがある。
「ええ、勿論いいですとも」
儂はグラスを変えると共にテラスへ向かった。
その際、連れのマリベルとロマーリアは気を遣って他の者と雑談しに離れて行った。
テラスからは街の光が無数に見えとても美しい。
夜風を受けながらワイン飲んでいると先に話し始めたのはルネス卿だ。
「話とは言ったが世間話だと思ってくれて構わん。最近、カナリッジ共和国に動きがあったと聞いたが?」
「ふむ、性懲りもなくまた攻めてくるつもりでいるのだろう。毎年の事なので気にはしていないが警戒は怠ってはおらんよ」
「そうか……救援が必要な時は遠慮などしなくてよいからな」
「そうはならない事を祈るばかりじゃよ」
暫し他愛無い話を続けていると急に話を変えたルネス卿。
「実はな……最近、我が領内でダンジョンが現れてな今はそちらの対応に追われているところだ」
「!!」
ワインを飲みながら夜景を楽しんでいるとまさかの爆弾発言に吹き出しそうになるが、何とか持ち堪えることに成功した。
一息入れてから向き直ると返答をする。
「ダンジョンとはまたいい話ではないか! これで二つ目になるのか……勿論調べたのだろ? それでどっちの方だったのだ?」
つい勢い込んで聞いてしまった。
「なに、最近報告が上がってきたばかりでな、詳しい調査をしてはいないんだが恐らく成長型のダンジョンだと報告にはあった」
「成長型か……羨ましい限りだの。儂のとこなど固定型ダンジョンしかないわい」
儂の領内には三つ程があるがどれも固定型ダンジョンであまり収入は見込めていない。
「そうなのだが……その報告に気掛かりな事が書かれていてな」
「ふむ? 気掛かりとな、いったい何が書かれておったんじゃ?」
促すように言葉を掛けた。
「それが、そのダンジョンを調査した者によるとダンジョンマスターに会ったと書いておってな」
「ふむ、ダンジョンマスターと言えば確かルステンは骸骨の魔物だと聞き及んでいるが……まさかとんでもない化け物がダンジョンマスターとかか?」
焦らすように言葉を発するルネス卿に少々思うところはあるが辛抱強く聞く。
「いや、そこまで強そうではなかったらしい。だがそのダンジョンマスター……どうやら言葉を話すらしい」
「…………儂には言葉を話すと聞こえたんじゃが間違えではないよの?」
「うむ、確かにそう言った」
「何かの間違いではないのか? それか人に化ける魔物とか」
今までそのような事例は一切なく、そもそも成長型ダンジョン自体が少ない。
それ故、ダンジョンマスターも比例して少ないのは普通だ。
嘗ての黄金ダンジョンも急速な発展を遂げた後衰退して消滅したとある。
それでも言葉を話すダンジョンマスターではなかったと書物には書かれていた。
(もしそれが事実なら……)
ゴクリと喉が鳴り気づくと口の中はカラカラであった。
右手にもつグラスを一気に煽り飲み干す。
「それがちゃんとした人型だと報告にはあってな、その報告をしてきたのが嘗て共にパーティーを組んでいたもので、今は近くの都市でギルドマスターをしている。そのような者の報告書だ、切り捨てる訳にもいくまい?」
(ギルドマスターとな……そのような者が自ら報告してくるとなると本格的な調査が必要になってくるな)
「なるほど、なら今後はそのダンジョンについて詳しく調査する必要があるな。それなら儂のところからロマーリアを向かわせよう。正直、今でも信じられない思いだ。仮に知能をもつダンジョンマスターだったとしたら……どうするのだ?」
「……今はそれで頭を悩ませておる。国に報告すれば恐らく取り上げられるだろう。悩ましところだ」
「確かに、だがそれだと大々的に活用できなくなるのでは?」
(本国へ報告しないとなると誤魔化しながらダンジョン活用することになるが……)
「そこは固定型だと偽れば問題ないであろう。だが問題があるとすればダンジョンマスターの方だ。どういった性格をしているか分からない内は、公にはできないと考えておる」
(これは戦争どころの話ではなくなってきたな)
それから暫く夜景を眺めながらダンジョンについて意見を交わす。
窓の外は既に日が落ち暗闇が辺りを包む。
マリベルとロマーリアもドレスに着替え晩餐会の準備を始めた。
この時、女とは色々準備があって面倒だなと思いながらも自分の支度を済ませ、晩餐会の会場へ行くと他の主賓やら関係者が勢揃いしていた。
儂が現れると他の者達が数名挨拶に来たので、適当に相槌を打ちながら受け流す。
程なくして宰相が現れ晩餐の挨拶をを述べ始めた。
「この度は御集り頂き恐悦至極に存じます。細やかではありますがごゆっくり歓談ください」
短く挨拶を述べた宰相は、そのまま別室へ行ってしまった。
(相変わらず忙しい男だな)
右手に持ったグラスに口をつけワインを含むと仄かな酸味が口いっぱいに広がる。
(ここの酒はいつ飲んでも美味いな)
暫くグラスを傾けていると、後ろから声が掛かり振り向くと晩餐用の礼服をきたルネス卿がいた。
「ぺトラ卿、彼方で話でもどうですかな?」
ルネス卿の視線を辿るとそこはパーティー会場のテラスがある。
「ええ、勿論いいですとも」
儂はグラスを変えると共にテラスへ向かった。
その際、連れのマリベルとロマーリアは気を遣って他の者と雑談しに離れて行った。
テラスからは街の光が無数に見えとても美しい。
夜風を受けながらワイン飲んでいると先に話し始めたのはルネス卿だ。
「話とは言ったが世間話だと思ってくれて構わん。最近、カナリッジ共和国に動きがあったと聞いたが?」
「ふむ、性懲りもなくまた攻めてくるつもりでいるのだろう。毎年の事なので気にはしていないが警戒は怠ってはおらんよ」
「そうか……救援が必要な時は遠慮などしなくてよいからな」
「そうはならない事を祈るばかりじゃよ」
暫し他愛無い話を続けていると急に話を変えたルネス卿。
「実はな……最近、我が領内でダンジョンが現れてな今はそちらの対応に追われているところだ」
「!!」
ワインを飲みながら夜景を楽しんでいるとまさかの爆弾発言に吹き出しそうになるが、何とか持ち堪えることに成功した。
一息入れてから向き直ると返答をする。
「ダンジョンとはまたいい話ではないか! これで二つ目になるのか……勿論調べたのだろ? それでどっちの方だったのだ?」
つい勢い込んで聞いてしまった。
「なに、最近報告が上がってきたばかりでな、詳しい調査をしてはいないんだが恐らく成長型のダンジョンだと報告にはあった」
「成長型か……羨ましい限りだの。儂のとこなど固定型ダンジョンしかないわい」
儂の領内には三つ程があるがどれも固定型ダンジョンであまり収入は見込めていない。
「そうなのだが……その報告に気掛かりな事が書かれていてな」
「ふむ? 気掛かりとな、いったい何が書かれておったんじゃ?」
促すように言葉を掛けた。
「それが、そのダンジョンを調査した者によるとダンジョンマスターに会ったと書いておってな」
「ふむ、ダンジョンマスターと言えば確かルステンは骸骨の魔物だと聞き及んでいるが……まさかとんでもない化け物がダンジョンマスターとかか?」
焦らすように言葉を発するルネス卿に少々思うところはあるが辛抱強く聞く。
「いや、そこまで強そうではなかったらしい。だがそのダンジョンマスター……どうやら言葉を話すらしい」
「…………儂には言葉を話すと聞こえたんじゃが間違えではないよの?」
「うむ、確かにそう言った」
「何かの間違いではないのか? それか人に化ける魔物とか」
今までそのような事例は一切なく、そもそも成長型ダンジョン自体が少ない。
それ故、ダンジョンマスターも比例して少ないのは普通だ。
嘗ての黄金ダンジョンも急速な発展を遂げた後衰退して消滅したとある。
それでも言葉を話すダンジョンマスターではなかったと書物には書かれていた。
(もしそれが事実なら……)
ゴクリと喉が鳴り気づくと口の中はカラカラであった。
右手にもつグラスを一気に煽り飲み干す。
「それがちゃんとした人型だと報告にはあってな、その報告をしてきたのが嘗て共にパーティーを組んでいたもので、今は近くの都市でギルドマスターをしている。そのような者の報告書だ、切り捨てる訳にもいくまい?」
(ギルドマスターとな……そのような者が自ら報告してくるとなると本格的な調査が必要になってくるな)
「なるほど、なら今後はそのダンジョンについて詳しく調査する必要があるな。それなら儂のところからロマーリアを向かわせよう。正直、今でも信じられない思いだ。仮に知能をもつダンジョンマスターだったとしたら……どうするのだ?」
「……今はそれで頭を悩ませておる。国に報告すれば恐らく取り上げられるだろう。悩ましところだ」
「確かに、だがそれだと大々的に活用できなくなるのでは?」
(本国へ報告しないとなると誤魔化しながらダンジョン活用することになるが……)
「そこは固定型だと偽れば問題ないであろう。だが問題があるとすればダンジョンマスターの方だ。どういった性格をしているか分からない内は、公にはできないと考えておる」
(これは戦争どころの話ではなくなってきたな)
それから暫く夜景を眺めながらダンジョンについて意見を交わす。
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