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3章 紛争編

31話 ナイトローズ

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 街の巡回警備から寄宿舎に帰って来ると交代要員のレニスとカロルを探す。
 寄宿舎は二階建ての広々としたもので、使い勝手や訓練にはとてもいい場所だ。
 
 寄宿舎の中を通り抜け、訓練場がある裏手にエルネットと共に向かうと遠くの方で鉄同士がぶつかる甲高い音が聞こえてきた。
 通りを抜け訓練場へやって来るとそこには、己の剣術を日々磨いている騎士が数名いた。
 その中には、交代要員のレニスとカロルも含まれている。

 向かい合っているレニスとカロルは互いに長剣を構え相手の出方を窺っているところだ。
 先に飛び出したのはレニスで右脇を締め、間合いを詰めると長剣を下から切り上げるがそれを防ぐのは水平に構えたカロルだ。
 水平に構えた剣を素早く切り下げ相手の剣を左へ弾くと、体を回転させた勢いで剣を振るう。
 勢いのついた剣を態勢を低くして躱したレニスは、すかさず懐に入ると剣を突き上げるが体をずらされ空振る。
 その隙をつくようにカロルは左から薙ぎ払うが、相手の剣で受け流された。
 
 暫くふたりの攻防が続くと互いの急所を狙われ相打ちになり訓練が終了した。
 エルネットと一緒に近づき声を掛ける。

「二人とも腕を上げたな」

  布で汗を拭きとるレニスとカロルが此方を振り返るとにこやかに返してきた。

「レオノール隊長ほどじゃないですけどね」

「確かに隊長と比べたら私達なんてまだまだですよ」

 金髪の髪を後ろで括り、スレンダーな体形をしたレニスと赤髪で肩口で切り揃えられ小さい体のカロルが一緒になって私と比べてくる。

「そんなに謙遜しなくていいと思うがな」

「隊長にそんな事言われても嬉しくないでよぉ」

 私にすかさず隣にいるエルネットが反論してくると私は溜息をつきたくなった。

「まあなんだ。二人とも着替えて巡回警備の時間だ」

 ここには警備の交代で立ち寄ったのだ。
 私も早く汗を流したいので二人をせっつくように言う。

「レニスいこっか? 隊長たちもそれじゃ!」

「そうだね。ではまた」

 手早く汗を拭きとると私とエルネットに挨拶をすると、巡回警備の支度をする為訓練場から出て行った。
 残された私達は、それぞれの私室に向かう。
 午後からは自由なのでいつもの本の続きを読む予定だ。

 訓練所から出てエルネットと別れてから、自室へと向かう。
 この寄宿舎は、二棟あり男女で分けられている。
 女子宿舎へ向かい自室に戻ると早々、巡回で汗まみれになった体を洗う為風呂へに向かう。
 共通の風呂で汗を流したあと、自室に籠り本の続きを読み始めた。

 夢中になって読んでいると辺りは暗くなり始めていることに気づき、本に栞を挟んで食堂に向かう。
 宿舎とは別の棟に食堂があり、日替わりの夕食を配給されると定位置が開いているか確認する。
 そこには私より先に隊員たちが集まって食事を始めていた。

「ん? 隊長遅かったですね。寝てました?」

 エルネットが私を見つけるとからかうように質問してきた。

「ちょっと本に夢中になってな遅くなった」

 定位置を確保していてくれた皆にお礼を言いながら私も食事にする。
 私以外に隊員は五人おり、エルネット、レニス、カロル、マドレア、カトリーヌを合わせた六名がこの隊の構成メンバーだ。
 マドレアとカトリーヌは今日は非番だったと思う。
 紫色の髪の毛でどことなく不思議なオーラを出しているのがマドレア。
 対して茶髪で顎下で切り揃えられた短髪が印象でエルネット同様、活発的なのがカトリーヌだ。

 皆が揃ったので派遣されてからの二回目の報告会をする。
 報告会と言っても巡回中に起こった事や気になった事など硬いものではない。

「食事をしながらでいいから聞いてくれ。皆も知っていると思うが今噂になっているカナリッジ共和国が攻めてくる事について私なりに考え考察してみたのだが、近いうち小競り合いが起こるのは間違いないだろう。具体的な期日は分からないがそう長くないと私は思っている。その際、私達ナイトローズ隊も出撃することになるだろうがいつも道理小規模なものだと予想されるが、各人いつ出撃してもいいように武器の手入れや防具の調整などは怠るなよ」

 ある程度いいたい事は言ったので食事を再開するとカトリーヌから質問があがった。

「隊長、巷の噂ではカナリッジが仕掛けてくる日時は四日後と囁かれていますがどう思います? 流石に私も鵜呑みにはできないと思うのですが」

「そうだな確かにそのようなことも噂されている。だが常日頃から警戒しておけば何時だろうと対応はすぐできる」

「確かにそうですね」

 食事を再開したカトリーヌを見て私も夕食を食べていく。
 食べ終わった後、再び注意喚起を行い各人自室にもどって行った。

(さて自室で本の続きでも見るとするか)

 配膳皿を返却し自室で武装の手入れをした後、再び読書を再開した。
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