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3章 紛争編
30話 国境線上のオラクトリア
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大都市ペルナインを北西へ馬車を走らせて10日程行った場所に都がある。
名前はオラクトリアという。
大きな湖がありとても美しい都市だ。
だがそこは、美しさと反して小競り合いが絶えない場所でも有名である。
何故なら湖の都オラクトリアは他国との境界線付近にあるからだ。
オラクトリアでは今とある『噂』が広まっている。
それは近々他国が攻めてくるというものだ。
「レオノール隊長、あの噂は本当なんですかね?」
私の部下であるエルネットが訊ねてくる。
「噂とはあれか、近々小競り合いがあるというやつか?」
オラクトリアの中央通りを辺りを警戒しながら歩き返答する。
周辺には鍛冶を打つ者や服を乾かす者、売り子に勧誘など色々な者が見え、私達が通りを歩くと視線を向ける者、逸らす者、胡散臭い視線を向ける者など様々だ。
「そうですそうです。やっぱり知ってましたか」
「こんだけ噂になっているんだ知らない方が少ないだろう」
(巷を賑わす噂は尾ひれが付くものだ。噂を鵜呑みにしては職務に支障がでるだろうに)
国境線沿いにあるこのオラクトリアは、向かい側のカナリッジ共和国と頻繁に小競り合いを起こしている。
共和国と謳っているが実際は、一部の権力者によって独裁され国が運営されており、領地奪還といいながら民を騙し侵略を続けている。
そんな汚い国の境界線沿いにあるオラクトリアは常に標的にされ狙われているというわけだ。
私達は他国の侵略から守る為、ここ湖の都に駐屯している。
(それもこれもあの忌々しい国の所為でだ)
本来ならぺトラ侯爵領にて警備の任に就いているのだが、近々攻めてくるという報を受け派遣された。
ぺトラ侯爵領は、他国との隣接する場所が多い。
隣のルネス侯爵とは、出兵やら物資の支援やらを頻繁にするほど親睦が深いと聞く。
この都には私を含め数十人派遣されており、現地の者と連携を取って警戒に当たっている。
隣を歩くエルネットもその一人だ。
髪を短く切りそろえた髪型に愛くるしいクリッとした目が印象的で若干私より背は低い。
他の男性兵からの人気も高く『エルちゃん』の愛称で呼ばれることも少なくない。
規則で恋愛は禁止だが本人はそれなりに上手くやっているのだろ。
(色気のない私とは大違いだ)
自傷気味な事を考えているとエルネットから再び質問が飛んでくる。
「隊長的には何時頃攻めて来ると思います?」
今の情勢だと何時攻めて来てもおかしくはない。
毎回の如くちょっかいを掛けてくる程度だと今回も私は予想している。
「さて、どうだろうな。いつ攻めて来てもおかしくない状況だというのは確かだ」
私の返事に左手を顎に当て考える仕草をする。
(こういう仕草をするところが男共には人気なのだろうな)
試しに私も真似て見ようと一瞬思ったがやっぱりやめた。
(私がしたところで可愛くはないだろう)
私の容姿自体はまともだと思っている。
これでも男爵家の長女として生まれ、両親とも文句ないほど美形だ。
そんな私も男爵という地位はそこまで高くないが色々な縁談があった。
その中には伯爵家の次男という優良物件もあったが、私はすべて蹴って騎士の道を選んだ。
私が騎士の道を歩むきっかけを作った人がいる。
現将軍の地位に居るロマーリア将軍だ。
容姿端麗で頭も良く剣術もずば抜けており、非の打ち所がない人だ。
私はロマーリア将軍を追いかけ騎士の道に進んだ。
始めは厳しい訓練に何度泣いたことか。
それでもロマーリア将軍を心の支えにし厳しい訓練に耐え抜き、小隊を率いる隊長にまで上り詰めた。
その所為かエルネットには『性格が硬い』『人が近づきにくいオーラが出ている』『もっと柔らかくお淑やかに』と常々言われている。
だが騎士になった以上そのような事は必要ないと諦めており、好いている殿方もいるわけもないし生涯このままだろうと私は思っている。
中央通りを歩きながら周辺の警戒を怠らない。
私の尊敬してやまないロマーリア将軍のお言葉をいつも思い出す。
将軍曰はく、『いつ何時も気を許してはならない。それは騎士にあらず、唯の兵士と変わらない。騎士としての誇りを持ち任務を遂行せよ』という言葉が私の一番のお気に入りの台詞だ。
美しく可憐で一度牙を剥けば凛々しく雄々しい。
それが私が将軍に抱いている印象だ。
(いつになったらロマーリア将軍と一緒に任務ができるのだろうか)
少々欲望に駆られたが、余計な事を考えないで任務に集中する。
暫く警戒しながら歩いて行くと、私達が駐屯している宿舎が見えてくる頃だ。
それからエルネットと噂について談義をしながら進むと寄宿舎が見えてきた。
名前はオラクトリアという。
大きな湖がありとても美しい都市だ。
だがそこは、美しさと反して小競り合いが絶えない場所でも有名である。
何故なら湖の都オラクトリアは他国との境界線付近にあるからだ。
オラクトリアでは今とある『噂』が広まっている。
それは近々他国が攻めてくるというものだ。
「レオノール隊長、あの噂は本当なんですかね?」
私の部下であるエルネットが訊ねてくる。
「噂とはあれか、近々小競り合いがあるというやつか?」
オラクトリアの中央通りを辺りを警戒しながら歩き返答する。
周辺には鍛冶を打つ者や服を乾かす者、売り子に勧誘など色々な者が見え、私達が通りを歩くと視線を向ける者、逸らす者、胡散臭い視線を向ける者など様々だ。
「そうですそうです。やっぱり知ってましたか」
「こんだけ噂になっているんだ知らない方が少ないだろう」
(巷を賑わす噂は尾ひれが付くものだ。噂を鵜呑みにしては職務に支障がでるだろうに)
国境線沿いにあるこのオラクトリアは、向かい側のカナリッジ共和国と頻繁に小競り合いを起こしている。
共和国と謳っているが実際は、一部の権力者によって独裁され国が運営されており、領地奪還といいながら民を騙し侵略を続けている。
そんな汚い国の境界線沿いにあるオラクトリアは常に標的にされ狙われているというわけだ。
私達は他国の侵略から守る為、ここ湖の都に駐屯している。
(それもこれもあの忌々しい国の所為でだ)
本来ならぺトラ侯爵領にて警備の任に就いているのだが、近々攻めてくるという報を受け派遣された。
ぺトラ侯爵領は、他国との隣接する場所が多い。
隣のルネス侯爵とは、出兵やら物資の支援やらを頻繁にするほど親睦が深いと聞く。
この都には私を含め数十人派遣されており、現地の者と連携を取って警戒に当たっている。
隣を歩くエルネットもその一人だ。
髪を短く切りそろえた髪型に愛くるしいクリッとした目が印象的で若干私より背は低い。
他の男性兵からの人気も高く『エルちゃん』の愛称で呼ばれることも少なくない。
規則で恋愛は禁止だが本人はそれなりに上手くやっているのだろ。
(色気のない私とは大違いだ)
自傷気味な事を考えているとエルネットから再び質問が飛んでくる。
「隊長的には何時頃攻めて来ると思います?」
今の情勢だと何時攻めて来てもおかしくはない。
毎回の如くちょっかいを掛けてくる程度だと今回も私は予想している。
「さて、どうだろうな。いつ攻めて来てもおかしくない状況だというのは確かだ」
私の返事に左手を顎に当て考える仕草をする。
(こういう仕草をするところが男共には人気なのだろうな)
試しに私も真似て見ようと一瞬思ったがやっぱりやめた。
(私がしたところで可愛くはないだろう)
私の容姿自体はまともだと思っている。
これでも男爵家の長女として生まれ、両親とも文句ないほど美形だ。
そんな私も男爵という地位はそこまで高くないが色々な縁談があった。
その中には伯爵家の次男という優良物件もあったが、私はすべて蹴って騎士の道を選んだ。
私が騎士の道を歩むきっかけを作った人がいる。
現将軍の地位に居るロマーリア将軍だ。
容姿端麗で頭も良く剣術もずば抜けており、非の打ち所がない人だ。
私はロマーリア将軍を追いかけ騎士の道に進んだ。
始めは厳しい訓練に何度泣いたことか。
それでもロマーリア将軍を心の支えにし厳しい訓練に耐え抜き、小隊を率いる隊長にまで上り詰めた。
その所為かエルネットには『性格が硬い』『人が近づきにくいオーラが出ている』『もっと柔らかくお淑やかに』と常々言われている。
だが騎士になった以上そのような事は必要ないと諦めており、好いている殿方もいるわけもないし生涯このままだろうと私は思っている。
中央通りを歩きながら周辺の警戒を怠らない。
私の尊敬してやまないロマーリア将軍のお言葉をいつも思い出す。
将軍曰はく、『いつ何時も気を許してはならない。それは騎士にあらず、唯の兵士と変わらない。騎士としての誇りを持ち任務を遂行せよ』という言葉が私の一番のお気に入りの台詞だ。
美しく可憐で一度牙を剥けば凛々しく雄々しい。
それが私が将軍に抱いている印象だ。
(いつになったらロマーリア将軍と一緒に任務ができるのだろうか)
少々欲望に駆られたが、余計な事を考えないで任務に集中する。
暫く警戒しながら歩いて行くと、私達が駐屯している宿舎が見えてくる頃だ。
それからエルネットと噂について談義をしながら進むと寄宿舎が見えてきた。
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