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2章 侵入者編

20話 実は運が良かったようです

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 ダーツイベントが始まりはや四日が過ぎ、もう直ぐ開催終了の期日が迫っていた。

 [イベント]タブの画面には大きなボタンがでかでかと表示されており、あたしはそのボタンを無心でタッチし続ける。
 この四日で分かったことがある。
 イベント設定という項目の中にボタン感触設定というのがあり、チェックを入れボタンをタッチすると感触が返ってくる。
 ムニュっとしたスラリンより硬めの感触だということがわかった。

 只今、スラリンは白ボードへとダーツを投げており、着々とスコアを稼いでいる。
 それとこの裏ボードと言える白と黒のボードは三色ボードと違いスコアが十倍となっているようだ。

 (ヤバい1時間を切った!! 白と黒の方は全然取れてないんだけどどうしよう……正直、毎回変わる点を狙うとか正気じゃないんだが)

 今のところ白ボードの〈スキル券〉しか取れていない。
 奇跡的に刺さった時は声を上げて喜んだ。

 それからボタンを連打しつつスラリンの様子を窺うと、ダーツを複数本取り込みボードへ飛ばすが点の的には刺さらない。

 結局、時間いっぱいスコアを稼いだだけに留まった。

「うがぁぁああああ。マジかぁああ!! ああぁーイベントが終わってしまった……」

≪レイお疲れぇ~それとスラリンもお疲れぇー≫

 唯一、タマちゃんだけが何もしていないのでとても元気だ。

(多分スキル券取れたのが一番の要因だろうけど)

 白ボードにある〈スキル券〉を獲得した時、一番騒いでいたのがタマちゃんだ。
 それから一時間程で集計が終わり結果が表示される。

――――――――――――――――――――――――
 第2回イベント  ブラックオンダーツ結果発表
――――――――――――――――――――――――

       ~~~成績発表~~~

      累計スコア:23894790pt

    ダーツ投擲本数:148356本

    累計タップ回数:8984561回

       コンプ数:3

       ~~~獲得報酬~~~
         〈DP5000pt〉
         〈召喚券〉
         〈蛇鞭ステピア〉
         〈魔槍グレブニル〉
         〈レベルup券〉
         〈VRキューブ〉
         〈SP3pt〉
         〈減衰‐3pt〉
         〈召喚券‐7‐〉
         〈半減券〉
         〈魔剣ラマ〉
         〈聖剣テラ〉
         〈疾風帽〉
         〈隠密マント〉
         〈スキル券〉
         〈オートマタ-α‐〉
         〈解放券〉

     ~~~お疲れ様でした~~~

 *スコアpt換算値は「1DP=10pt」になります。
 *獲得された報酬は随時配布されます。
――――――――――――――――――――――――

(ふむ、悪くない……寧ろ前回より総獲得DPがめっちゃ増えた!!)

 暫く画面を眺めているとあることに気づいた。

(あれ? このオートマタ-α‐ってのが入ってるけどいつ取ったんだろ?)

≪レイぃーはやく見せてよぉ~≫

 タマちゃんが催促して来たので画面を調節して見せる。

≪おおぉースキル券がある!! 早く使おう!! はやく!!≫

「まだ送られてきてないってタマちゃん」

≪あっ! そっかぁ忘れてた≫

 相当タマちゃんは〈スキル券〉にご執心のようだ。
 それも分からないこともない。

(実はあたしも気になってるのがあるんだよねぇこの〈VRキューブ〉ってのが特に気になる)

 報酬の中に〈VRキューブ〉とあるがいったい何なんだろうか。
 それと今回から追加された〈減衰-1pt〉などもある。

(これがあるからイベントは楽しんだよねぇ~)

 画面のアイテムボックスに報酬が送られてきた。
 DPも共に付与され今の総DPが239万5681ptだ。

(さて、まずはスキル券でタマちゃんを黙らせますか)

 アイテムボックスに送られてきたイベント報酬を上から順に受け取ると、次に[アイテム]タブに移り〈スキル券〉を押し使用確認の表示が出現する。

「それじゃースキル券使うよ?」

≪おおぉー早く早く使って使って!!≫

 興奮した様子のタマちゃんに促されながらスキル券を使うと、画面には前回と同じく『5×5』のカードが表示される。

「タマちゃん、選んでいいよ。成るべく早くね」

≪それじゃーど真ん中で!!≫

 中心のガードをタップすると裏返った。

【軽減-小-を獲得しました】

 獲得したスキルを確認する。

「ええっとスキル名は『軽減‐小‐』効果は、消費軽減20%、持続時間半日で再使用は5日だってさ」

≪うぅーんと、どれどれ……ほうほうこれが二つ目のスキルかぁ使っていい?≫

(始まったよ……)

 心の中で溜息を吐きながらタマちゃんに使用許可を出すと祭壇上のコアが数秒ほど光った。

≪どう?≫

 管理画面を確認するとスキル欄に『軽減‐小‐』と表示された下に効果時間が刻まれ、他のタブをみて見ると消費できるものがすべて20%軽減されていた。

(ふむ、魔物も20%オフならこの機会に階層と魔物を増やすか。DPに余裕があることだし)

 それから〈レベルup券〉〈SP3pt〉〈減衰-3pt〉を一気に使用する。
 
 ステータスptの振り分けはタマちゃんと協議した結果、活性2pt、成長1pt、吸収1pt、限界1ptへそれぞれ振った。
 減衰ptは、活性、召喚、迎撃へそれぞれ振り分けた。

 この際〈召喚券〉も使おうという話になる。

「それじゃーまずレア度5以上確定の召喚券から使うからね! ほい」

 確認画面をタップすると目の前に金色の魔法陣が現れる。
 黒いものが形作り始めると丸い形になっていき、最終的に魔法陣から出てきたのは球体の周辺に平たい三角形の物質を回転させたよくわからない魔物だった。

「タマちゃん、この魔物ってなんだかわかる?」

≪おおぉぉーー!! レベルメンターだぁ~レイは本当に運がいいね!!≫

(レベルメンターってなに? こんな魔物見たことないんだけど)

 宙に浮いた球体の周りを三角形の物体が回っている。
 球体の色は濃い青色で周囲を回っている物質が薄緑色だ。

「それでそのレベルメンターだっけ? 詳しく教えてよ」

 あたしの問いかけに上機嫌で答えるタマちゃん。

≪レベルメンターって魔物は、物質系の魔物でゴーレムとかと同じ系統だね。この魔物のいいところは、周囲にいる魔物を強制的に活性化させる能力を持つことだね。周囲に回っている個数が使用回数で使う度に一つずつ減って時間が経つと回復していく。戦闘向きではないけど、いい魔物だよ」

「強制的に活性化ねぇ~一回でどのくらい活性化させられるの?」

≪そこまではわからないけど数体じゃないかなぁー使っただけ本体も成長していくから能力も大きくなると思うよ≫ 

(なるほど育てたい魔物を活性化させれば……ヤバいね!!)

 取り敢えず後で、スラリンを実験台にして試してみようかな。
 レベルメンターから画面に視界を戻し、今度は〈召喚券-7-〉を使う。

「この召喚券はレア度7以上が確定らしいが……ポチッと」

 今度は目の前に虹の魔法陣が出現すると、かなり大きい魔法陣に期待が膨らむ。
 次第に小さくなり中心から黒くひょろ長いものが作られていく。
 魔法陣からは、黒いスーツにハット帽、片目に眼鏡を付けた白髪の渋いオッサンが出てきた。
 素早く首を振り、タマちゃんに説明を求める。

≪おおぉここでヴァンパイアか~なるほど。それにオールドのほうね。ああぁー説明するとヴァンパイア系の種族でオールドタイプ。タイプって言うのは、何向きかって意味ね。オールドは万能型よりちょっと頭脳寄りだったかな≫

 魔法陣の消えた位置には、頭を下げたオールドヴァンパイアが佇む。

「ご紹介に与りました。吸血族のオールドヴァンパイアでございます」

 レベルメンターとオールドヴァンパイアが並ぶと不自然さを感じてならない。
 丁寧な挨拶をしてきたヴァンパイアに声を掛ける。

「まあ、そう畏まらずに気楽に行こう!! それとヴァンパイアって何ができるの?」

(取り敢えずは何ができるか把握しておかないと、何処に配置すればいいのかわかんないからね)

 下げていた頭を持ち上げるとあたしの問い掛けに答える。

「ある程度の事はできるつもりです。強いてあげるなら頭を使うことなら得意にございます」

(ふむ、ならあのポジションしかないね)

「ならあなたには、各階層の魔物を管理してくれる? 外敵が侵入した際、素早く対応できるようにしといてね。それとレベルメンターを使っていいから魔物の強化もお願い。レベルメンターは、そこのヴァンパイアの指示に従うように」

「畏まりました」

 ヴァンパイアには階層間の転移が出来るよう設定しておく。

「これでよしっと、階層間の移動は転移できるようにしたからそれ使て。触れてものにも干渉できるから上手く使うように!」

 スラリンに沈みながらヴァンパイアに命令を出す。

「承りました」

 レベルメンターに触れると早々転移していった。

(一応魔物についてはこれでいいとして、次は各階層のレイアウトか……)

 暫く休憩してから階層を弄っていく。
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