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2章 侵入者編

18話 ギルドマスターが出陣したようです

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 ギルドマスターにダンジョンの事を話して三日が経った。
 約束の期日である日、俺達『七色の角』レインホーンは早朝西門で待機している。

 打ち合わせによるとギルマス自らダンジョンを確認するらしくその際、スライムの現れた四階層まで探索し様子を見て帰るという段取りだ。

 早朝から西門にいる者は私達を含め数人の冒険者だけだ。
 そろそろ西門が開く時間帯になった頃、後ろからマントを羽織った二人が話し掛けてきた。

「待ったせたな。では行くとしようか」

 予め用意されていた大きな馬車に乗り込むギルマスと副ギルド長。

(この馬車俺達が乗る予定だったのか)

「貴方達も早く乗りなさいな」

 もう一人の付添人である副ギルド長が促すように声を掛けてきた。

「皆急ごう」

 用意された馬車に素早く乗り込むと西門を出発した。

 道中はこれと言って特に問題なく進みエメラフ山の麓に到着早々ギルマスが声をあげる。

「ふぅー長旅は老骨には堪えるな」

「歳の所為ね。もう若くないんだから無理しないでよ」

「お主は昔と変わらずいいのぉ」

「これでもエルフの端くれだからね」

 馬車の中で二人の関係を聞いた時、驚いたものだ。

(まさか『三英雄』がギルマスとエルダだったとは、案外世間は狭いもんだな)

「それでダンジョンの場所に案内してくれるか?」

 ギルマスが促すように言うと俺はレンを見る。

「レン、ダンジョンまで案内を頼めるか?」

「うん、任せておいて」

 レンがニント森をダンジョン目指して突き進み始めその後を追い、それから暫く歩き、森の外れに着いた。

「まだダンジョンには着かないのか?」

 しびれを切らしたギルマスが問いかけてくる。

「ええ、もう少し行った先にあります」

 皆黙々と歩くとダンジョンがある洞窟へ辿り着いた。

「ほほぉーここがそのダンジョンの入り口というわけか」

「そうらしいわね。見た目はただの洞窟だけど」

 二人がそれぞれ意見を交わすと此方を向く。

「それで陣形だがお主らが先に進んでくれ。儂らは後をついていくのでな道中は任せたぞ」

 ギルマスの言葉に皆が緊張した面持ちで各人配置につき、前回は留守番組だったセアラとルーデルも今回のダンジョン探索に加わる。
 因みにルーデルは取り回しの悪い大剣ではなく長剣に装備を変えての探索だ。

「んじゃいくか? ホント久しぶりだなぁ迷宮都市以来だぜ。前回は入れなかった今回は準備万端だぜ」

 ルーデルがダンジョン探索に早く行きたそうに声をあげた。

「皆いくぞ。お二方もいいですね?」

「いつでも構わんぞ」

「私もいいわ」

 全員の確認が取れたところでダンジョンの下り階段を下りて行く。


「はぁぁあああ」

 キィンと高い音を立てながらルーデルの長剣が盾に防がれた。
 その隙に間合いを詰めたアニスが脇から首筋に細剣を突き差しキャバリを仕留める。

「まさか1階層からキャバリやナイトが出てくるとは、相当成長が早いなこのダンジョン」

 ジンが楯を下し構えを解くと呟いた。

「確かに前回来た時は、ゴブリンだったのにね」

 アニスが細剣を払い腰に仕舞うとキャバリが落とした魔石を拾う。
 それから慎重に進み二階層への階段を見つけた。


――――――――――――――――


 ダンジョン遠征にエルダと細かく打ち合わせをしてから三日。
 西門に行くと『七色の角』レインホーンが待機していた。

 予め用意した大きめの幌馬車に乗りダンジョン向かうべく西門を発つ。
 ダンジョンはエメラフ山麓のニント森にあるという。
 麓まで馬車で行きダンジョンまで徒歩で向かう。

(ふぅー儂も大分歳を取ったな。それに対してエルダが羨ましわい)

 ダンジョンと思われる洞窟に辿り着くと年甲斐もなく興奮してしまった。

 先発はレインホーンに任せて後方で若者の勇姿を見届ける。
 隣には同じくエルダが付き添う。

「1階層にはゴブリンと言う話だったがキャバリが出てくるとは、予想外だったな」

 儂の呟きに反応してエルダが返事をする。

「ええ、このダンジョン間違いなく高難易度よ。万が一の場合……わかってるわね?」

「うむ、わかっておる」

(若く未来ある者をここで無くすのは惜しいからな)

 それから順調に進み、二階層へ辿り着くと、二階層からはゴブリン系とスカル系、それとゴーレムが出てきた。
 合間にガーディアンが出て来た時は少しひやっとしたがそこはエルダが瞬殺した。
 三階層ではいきなりミノタウロスが出現したため、儂も後方から戦況を見て魔法で援護する。

(三階層でミノタウロスとは、ちと不味いな引き返すか?)

 すると考える暇もなく四階層への階段を探り当てるレインホーン。

(ここにきて嫌な予感がしてきたな)

 チラりとエルダを見ると視線が重なり、どうやら同じことを思ったらしい。

「お主らちょっといいか?」

 儂の声で振り返るレインホーンのメンバー一同。

「探索はここで終了だ。このダンジョンについてよくわかった。4階層を少しみたら引き返すのでそのつもりでな」

 レインホーンは皆頷く。

(この人数だけでは対応するのは難しい。ここら辺が引き時だな)

 それから森林地帯という四階層へ降りて行くとそこに森は無かった。
 代わりにあるのは一面草原の広域フィールドだ。

「おい!! どうなってる!? 始め来た時は間違いなく森林地帯だったよな?」

「ああ、間違いない。4階層は森林地帯だった」

 四階層の地形が変わっている事に騒ぎ出すレインホーン。

「ベゼフこれは……」

 エルダが小声で話しかけてくる。

「恐らく成長過程で地形が変わったのだろう。短期間でフロアそのものを変えるとは、間違いなく成長型だという事はわかった。それも異常な……」

 異常な成長型のダンジョンと発する前に遮られた。

「これはこれは皆さん御揃いで何よりです」

 そこには黒い服を着た執事風の男が何の前触れもなく佇んでいた。
 片目にはモノクルを付けており手には白い手袋が嵌められている。

(!?)

 儂とエルダは素早く前に立つとレインホーンを庇う形で男を見据え問いかける。

「お主何者だ!! どこから現れた!!」

 儂の問いかけに返事をする男。
 
「どこからと言われましても、ここからですが」

 何者かは答えず、右手で足元の地面を差す。

「なにが目的で現れた? 答えによっては……」

 腰に差す長杖を構えるが男はこれと言って反応をしめさない。
 腰から抜いた杖は長年愛用している儂の相棒だ。

「なに簡単な事です。貴方方に、マスターがお会いしたいとおしゃいましたので迎えに伺ったしだい」

 執事の発言に一同驚く。

「マスターとは、ダンジョンマスターのことか?」

「そうです」

 短く返答した男から視線を外し、チラりとエルダを見ると左右に小さく頭を振った。

(エルダも同意見とみて間違いないな)

「断ると言ったら?」

「それは困りますね、マスターのお言葉は絶対ですので。それと危害を加えるわけではありませんのでご安心を」

 そう言って男が右手を真上に持ち上げる動作をした為、構えを取るが指をパチンと鳴らした男を中心に巨大な魔法陣が現れた。
 その魔法陣は儂らの足元まで及んでいる。

(不味いな!)

「ベゼフ!!」

 エルダが魔法を唱え応戦しようとしたが、男の魔法が先に完成したようだ。
 魔法陣が光を放ち視界一面、真っ白になった。
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