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1章 準備編

1話 プロローグ

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 私は何処にでも居るごく普通の女子高生である。
 母からは、冗談まじりに矢霧家の玲香さんと言われていたりする。
 母はおっとり系のふわふわした人だ。
 そう言う所が父は好きだと、この前食卓で惚気ていた。

 下には妹が一人いる。
 中学二年生で吹奏楽部に入部していると言っていた。
 クリッとしたお目々が可愛い自慢の妹だ。
 私より背が低い事がコンプレックスらしい。

 家族共に仲は良好で何の不満もない。
 この両親から生まれてきて良かったと常々思っている。

 最近、私は遅くまでオンラインゲームをしている。
 これがなかなか面白く気づいたら深夜を過ぎている事などざらにある。
 母親は、そんな私を心配しているらしい。
 らしいと言うのは妹経由で聞いたからだ。

 母の常套手段は、妹を私に差し向けると言う痛い所を突いて来る。
 私が妹には甘いと母は知っているのだろう。
 寧ろ無意識だったらちょっと怖い。

 今日も朝早く起き制服に着替えるとリビングへ向かい、朝食を摂ると近くに通っている高校へ徒歩で行く。

 朝から学校へ行き、日中退屈な授業を受け、帰宅する。
 夕食、お風呂とする事してから自室に籠りパソコンを起動する。
 そこから深夜過ぎまでオンラインゲームの続きをするのだ。
 これが私の一日のサイクル。

 勿論、部活動などは所属していない。
 理由は単純に面倒くさいからだ。
 それとゲーム時間が短くなる事も理由の一つだ。
 
(さてと、ゲームの続きをしましょうか)

 ゲームの種類は、一般的なRPG主体のゲームだ。
 主人公を育ててモンスターを狩って強くしボスと戦うと言うシンプルなやつだ。

 今日も深夜まで魔法職のキャラ育成に励みセーブすると画面を落とす。
 セミロングの髪をヘアゴムで纏める。

 ベッドへダイブし枕に顔を埋めると、早くも眠気に襲われ寝入る。


――――――――――――


 真っ暗な中、遠くに扉が見える。
 上の方が丸い扉である。

 扉まで近づきドアノブを回すと小さい部屋があった。
 正面に机と椅子だけというシンプルな部屋だ。

 見渡しながら部屋へ入りと机に不思議な物が置かれていた。
 奇妙な長方形の板が不自然に置かれ、この部屋には異質でミスマッチな雰囲気を感じる。

(ん? 何だろこの板っぽいの)

 真っ黒い板に触れるとひんやりとした冷たく硬い感触が返って来る。
  板を持ち上げようと縦横に引っ張り色々と試みたがどういうわけかビクともしなかった。
 どうやら相当重いらしい。

 それから一通り部屋の中を見たり、板を弄ってみたが特に反応は無かった。

 仕方なく椅子に座り机に頬杖をつき悪戯に目の前の板を突っつくが反応はない。
 椅子にもたれ掛かり手を前に突き出し伸びをした。

(やけにリアルな夢だよねぇ)

 伸びをした腕を緩め掌が板に触れると、板に細かい線が走り光出した。

「おわっ! 光った!」

 板からは仄かに光が漏れ、次第に弱まると目の前に文字が現れる。

≪生体認識確認≫

≪炭素体#829012848≫

≪思考速度α。初期値b-4236≫

≪思考安定を確認。シーケンスを開始≫

 触れた板から理解できない言葉が次々と浮かんでは消えていく。

≪思考処理を開始。……完了≫

≪言語認識インストール。……完了≫

≪視覚情報インストール。……完了≫

≪五感認識拡張開始。…………完了≫

≪レゾンネーター起動。簡略化を実行……完了≫

≪再起動します≫

 黒い板が明滅を繰り返す事数分、目の前には再び文字が浮かび上がる。。

≪タッチパネルに触れて下さい≫

(パネルってこの板のことかな?)

 取り敢えずパネルと思われる板へ掌を置くと光が走った。
 どうやらスキャンしているようだ。

≪生体認識一致。ラルブフェル起動≫

 板の表面を真っ直ぐ線が走るとホログラフィックが目の前に現れる。

≪上記の手順に従って構築を行って下さい≫

 ホログラフィックには山にポッカリ空いた洞窟が映し出されている。
 パネルを見ると隙間を縫うように光が走っており何だか細密な電子機器みたいだ。
 その下に見慣れたキーボードがあり手慣れた手つきでパネルを操作するとグラフィックが塔へと切り替わる。

「洞窟の次は塔か。次はポチッと」

 塔の次は、荒野にある洞窟が映され操作する度に映し出される景色が変化する。
 次々と切り替えていくと始めの洞窟へ戻って来る。

「これって何の意味があるんだろう? 何か全部薄暗い場所しかないんだけど……と言うかダンジョンだよねこれって」

 キーボードを操作しもう一度繰り返し切り替え確認する。

「まさかダンジョンをカスタマイズできるゲームとか?」

 試しに森の中にある洞窟を選択すると更に細かく設定項目が出現。

 環境、気候、周辺、魔素量、などの外の設定。
 質度、硬度、金属、規模とは内側の設定の事だろうか……。

 他にも沢山項目あるがまずは分かり易い内部から設定していく。

「この質度って何だろう? そのまま質の良いとかかなぁよくわからんパス! 硬度は硬さだよね、えぇっと硬度を最大まで上げて金属って鉄とか銅とかの? まぁ鉱山っぽくしとくか。規模は並みで!」

 洞窟内部を好き勝手設定してお次は外の設定を編集していく。

「環境は……四季折々は暑いのは嫌だから比較的過ごし易い秋をメインにして、気候も同じく雨、晴れ、風、時には雪と……周辺はパス、魔素量はそこそこ多めに設定してっと」

 次々と詳細に設定すると最後の項目に目が留まる。

「このダンジョンステータスって何だ? ダンジョンってステータスがあるんだっけ?」

 項目を選択するとステータスウィンドウが現れた。

――――――――――――――――――――
    所持値30 覚醒値3 減衰値6
――――――――――――――――――――
[活性頻度] 〈  0  〉〈  α  〉
[召喚速度] 〈  0  〉〈  α  〉
[成長補正] 〈  0  〉〈  α  〉
[迎撃補正] 〈  0  〉〈  α  〉
[能力補正] 〈  0  〉〈  α  〉
[繁殖補正] 〈  0  〉〈  α  〉
[吸収補正] 〈  0  〉〈  α  〉
[真核補正] 〈  0  〉〈  α  〉
[限界突破] 〈  0  〉〈  α  〉
――――――――――――――――――――

 何だか本当にステータスっぽいのが出て来た。

(こう言うの見ちゃうとゲーマー魂が疼くのよね)

「さぁーってお待ちかねのステ振りタ~イム!!」

(何々所持値は割り振れるポイントで間違いないとして、覚醒値と減衰値って何だろう)

 あれこれ試しながら割り振り弄ってみる。

(なるほど、覚醒値は今一分からないが減衰値はマイナス補正って訳ね)

 因みに割り振り値は最大5が限界だということがわかった。

 最終的には満足のいく割り振りが出来たと思う。

――――――――――――――――――――
     所持値0 覚醒値0 減衰値0
――――――――――――――――――――
[活性頻度]  〈  3  〉〈α0130e〉
[召喚速度]  〈  3  〉〈α0130e〉
[成長補正]  〈  5  〉〈α1050e〉
[迎撃補正]  〈  2  〉〈α0120e〉
[能力補正]  〈  4  〉〈α0040e〉
[繁殖補正]  〈  1  〉〈α0310e〉
[吸収補正]  〈  2  〉〈α0020e〉
[真核補正]  〈  5  〉〈α1050e〉
[限界突破]  〈  5  〉〈α1050e〉
――――――――――――――――――――

(おっし! こんなもんだろ……さて次はどうなるかな)

 ステータスウィンドウを閉じると目の前に文字が浮かび上がる。

≪補正値確認。再振り分け開始……完了≫

≪リマインダー開始。パネルに触れて下さい≫

 パネルに触れると掌の周りに光が行き交うと、脳内で過去で起きた記憶の映像が見える。

(これって走馬燈って言うのかな?)

 数分後完了したようで、次に浮かんだ文字に戦慄が走った。

≪承認を確認。転移を開始します≫

「えっ!? 転移って何? 今流行のやつ? と言うかこれって夢だよね?」

 辺りに虚しい私の声が響く。
 次第にパネルが発光して視界がホワイトアウトしていく。

「うそでしょぉ………………」

 部屋の中は光で塗りつぶされた。
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