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5章 開拓編
116話 冒険者組合
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「いらっしゃいませー、癒しの尻尾亭にようこそ! お食事ですか? それともご宿泊ですか?」
ぺルナインを散策している途中、お昼時も近いという事で屋台のある場所まで足を運んだ。
山菜を鶏がらスープで煮込んだ物とリザードマンの骨付き肉を三人分注文してお昼にした。
その後もデザートとして果物を甘い蜜で加工したマルカという食べ物を最後に、宿屋を探す予定だった。
だが、始めてきた故に宿屋どころか何があるのかする分からない状況だったのでこれは迂闊に行動しては時間を浪費すると思い、デザート買ったお店のおばちゃんにおすすめの宿屋を聞いて来たのが今いる癒しの尻尾亭という訳だ。
外見は普通で二階建ての木造家屋。
一階は食事処として広めな場所、二階は宿泊者用という作りだ。
お昼過ぎという事もあってなかなか客入りが良さそうな宿屋だ。
「宿泊をお願いしたいんだけど」
「ご宿泊ですね! お一人様一拍銀貨二枚になっております」
「なら三名で取り敢えず十日分お願いします」
「三名様で十日ご宿泊ですね、ありがとうございます。朝食夕食は付きますが昼食はありませんのでご注意下さい…………此方が各部屋の鍵になっております」
宿泊の注文を取り付けた赤い髪が特徴的な店員が引っ込み、三つの鍵を渡してきた。
三人一緒で大部屋でもよかったのだが、何となく個室でという事になった次第だ。
鍵を受け取ったレイはタマちゃんとクロエに一つずつ渡し、早々二階へと上がる階段を上る。
各鍵に割り振られた番号の部屋に入って荷物を置き、支度を済ませた。
この後は、冒険者ギルドに行って身分証の発行という最重要案件が控えている。
宿屋の店員にそれとなく冒険者ギルドの場所を聞き出し癒しの尻尾亭を後にした。
店員の話では冒険者組合と言うらしいが中央通りに目的地はあるとのことなので、一先ず教えられた場所へ向かって歩く。
三人分の身分証を今回発行してもらう予定ではあるが、いきなり三人纏めてとなるとそれなりに話を合わせていた方がいいだろう。
冒険者組合に向かいがてら三人で考えた設定は、近くの田舎集落から出稼ぎに来たという在り来たりでテンプレートっぽい理由を採用した。
「あれじゃない? その、冒険者組合っていうの」
剣が交差した看板が吊られた冒険者組合と思われる建物を指を差しながら問いかけて来たタマちゃん。
やや興奮気味な問い掛けに周囲の視線が集まる。
「多分ね。それより余り目立たないようにね」
「あぁーうん、気をつけるよ」
辺りを見渡し自分に視線が集まっているのに気づき苦笑いをした。
再度、極力目立つ行為は控えるよう特にタマちゃんに言い聞かせた。
クロエは今のところ隠密に徹しているので問題ないとして、自分にも肝に銘じながら冒険者組合に入った。
通りすがりに中の様子をチラりと見ただけだったので詳しくは分からなかったが、建物の中は大分広かった。
入口正面に受付と右側に上り階段が見え、手前ではテーブルに置かれている料理を飲み食いしている冒険者。
どうやら冒険者組合の建物は酒場とも併用しているらしい。
取り敢えず受付に向かい登録を済ませるとしよう。
時間帯も昼を大分過ぎた時刻なので受付に並んでいる冒険者はいない。
「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」
声を掛けて来たのは金髪でショートヘアの受付女性だ。
マニュアル通りの対応なのかやたら笑顔が眩しいと感じたレイ。
まずはここに来た目的を果たす為、身分証発行について聞いてみることにした。
「身分証を発行できると聞いたんですが……」
「身分証の発行ですね。三名様でよかったですか? ……では此方の書類に御一人ずつご記入をお願いします。規約について簡単にですが説明しますね。それと代筆は必要ですか?」
「代筆はいらないよ」
右側には見慣れない文字で構成された依頼書が張られてある掲示板がある。
見慣れない文字ではあるが読める為、代筆について間誤付いているとそれを察したクロエがフォローに入った。
そのまま三人分の書類をクロエが受け取り、各一枚ずつ渡していく。
記入書には氏名、出身、性別、などの基本的な項目と武器、特技、能力といった冒険者らしい項目があった。
どうやらクロエは文字が書けるようで代筆はいらいなと言ったが、万が一記入ができなかったらお願いしようと思ったレイ。
受付から渡されたペンで早速記入し始めると、不思議な事に象形文字の様な物が書き込まれていく。
頭では前の世界の言葉で認識しているのに、体が勝手に変換している不思議な感覚に戸惑いつつも一通り記入し終える。
隣のタマちゃんを見ると此方もどういう訳か分からないが、しっかりと記入できていた。
「始めに言っておきますが身分証の発行に御一人様、銀貨五枚掛かりますが宜しかったでしょうか?」
「一人銀貨五枚だね大丈夫…………はい、銀貨十五枚」
懐から硬貨の入った袋を取り出したレイは、三人分の登録料を取り出し受付に支払った。
それとついでに各自記入した書類も一緒に提出する。
「三人分で銀貨十五枚ですね……確認取れました。それでは冒険者組合の規約について簡単にですが説明致します。今ご記入された書類を元にこちらの冒険者証を発行しますが幾つか注意点があります」
そう言って先ほど記入した書類を差し、脇に置いてあった見本の冒険者証を取り出し説明をし始めた。
「まず始めに、冒険者証を発行するにあたって年会費が掛かるということです。ランク毎によって費用は変わりますが、年内に支払いがされない場合失効するので気をつけて下さい。それに伴ってですが一定期間、組合に集まる依頼を受けない場合も失効対象になります」
それからは組合のルールや仕様について説明がなされる。
この組合証、俗に言う冒険者証には依頼を熟していくとランクというものが上がって行く仕様で、ランクが上がると受けられる依頼の種類や利用できる施設の利用料金割引といった待遇がよくなるとのこと。
ランクは下からF、E、D、C、B、A、Sと七段階あるが、現状努力で到達できるのはBランクまででそこから先は才能がないとダメだとか。
それとこの身分証に限って都市或いは街へ入る際に掛かる税金を免除されるというもの。
他に商売をする人達が登録する組合証があるが、それでも全額免除されないらしく、そう言った点を考えると冒険者証は結構人気だとか。
だが登録料と年会費が他の組合証に比べて高いというデメリットがあったりするが。
あと一定期間中に依頼を受けないと失効することについてだが、ランクが低ければ低い程失効期間が短くなるので注意が必要。
毎年、高い登録料を払って期間中に依頼を受けないで失効する者が割かし多いのだそうだ。
因みに一番低いFランクの失効期限は一週間で、期間内に依頼を受けないと失効する。
「簡単ではありますが以上で説明は終わります。何かご不明な点や質問が有れば答えられる範囲で返答したします」
それから程なくして説明は終了し、別の組合員から三枚の身分証を受け取った受付が各自に手渡していく。
渡された鉛色で横長の身分証には先ほど記入した情報が刻まれていた。
ぺルナインを散策している途中、お昼時も近いという事で屋台のある場所まで足を運んだ。
山菜を鶏がらスープで煮込んだ物とリザードマンの骨付き肉を三人分注文してお昼にした。
その後もデザートとして果物を甘い蜜で加工したマルカという食べ物を最後に、宿屋を探す予定だった。
だが、始めてきた故に宿屋どころか何があるのかする分からない状況だったのでこれは迂闊に行動しては時間を浪費すると思い、デザート買ったお店のおばちゃんにおすすめの宿屋を聞いて来たのが今いる癒しの尻尾亭という訳だ。
外見は普通で二階建ての木造家屋。
一階は食事処として広めな場所、二階は宿泊者用という作りだ。
お昼過ぎという事もあってなかなか客入りが良さそうな宿屋だ。
「宿泊をお願いしたいんだけど」
「ご宿泊ですね! お一人様一拍銀貨二枚になっております」
「なら三名で取り敢えず十日分お願いします」
「三名様で十日ご宿泊ですね、ありがとうございます。朝食夕食は付きますが昼食はありませんのでご注意下さい…………此方が各部屋の鍵になっております」
宿泊の注文を取り付けた赤い髪が特徴的な店員が引っ込み、三つの鍵を渡してきた。
三人一緒で大部屋でもよかったのだが、何となく個室でという事になった次第だ。
鍵を受け取ったレイはタマちゃんとクロエに一つずつ渡し、早々二階へと上がる階段を上る。
各鍵に割り振られた番号の部屋に入って荷物を置き、支度を済ませた。
この後は、冒険者ギルドに行って身分証の発行という最重要案件が控えている。
宿屋の店員にそれとなく冒険者ギルドの場所を聞き出し癒しの尻尾亭を後にした。
店員の話では冒険者組合と言うらしいが中央通りに目的地はあるとのことなので、一先ず教えられた場所へ向かって歩く。
三人分の身分証を今回発行してもらう予定ではあるが、いきなり三人纏めてとなるとそれなりに話を合わせていた方がいいだろう。
冒険者組合に向かいがてら三人で考えた設定は、近くの田舎集落から出稼ぎに来たという在り来たりでテンプレートっぽい理由を採用した。
「あれじゃない? その、冒険者組合っていうの」
剣が交差した看板が吊られた冒険者組合と思われる建物を指を差しながら問いかけて来たタマちゃん。
やや興奮気味な問い掛けに周囲の視線が集まる。
「多分ね。それより余り目立たないようにね」
「あぁーうん、気をつけるよ」
辺りを見渡し自分に視線が集まっているのに気づき苦笑いをした。
再度、極力目立つ行為は控えるよう特にタマちゃんに言い聞かせた。
クロエは今のところ隠密に徹しているので問題ないとして、自分にも肝に銘じながら冒険者組合に入った。
通りすがりに中の様子をチラりと見ただけだったので詳しくは分からなかったが、建物の中は大分広かった。
入口正面に受付と右側に上り階段が見え、手前ではテーブルに置かれている料理を飲み食いしている冒険者。
どうやら冒険者組合の建物は酒場とも併用しているらしい。
取り敢えず受付に向かい登録を済ませるとしよう。
時間帯も昼を大分過ぎた時刻なので受付に並んでいる冒険者はいない。
「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」
声を掛けて来たのは金髪でショートヘアの受付女性だ。
マニュアル通りの対応なのかやたら笑顔が眩しいと感じたレイ。
まずはここに来た目的を果たす為、身分証発行について聞いてみることにした。
「身分証を発行できると聞いたんですが……」
「身分証の発行ですね。三名様でよかったですか? ……では此方の書類に御一人ずつご記入をお願いします。規約について簡単にですが説明しますね。それと代筆は必要ですか?」
「代筆はいらないよ」
右側には見慣れない文字で構成された依頼書が張られてある掲示板がある。
見慣れない文字ではあるが読める為、代筆について間誤付いているとそれを察したクロエがフォローに入った。
そのまま三人分の書類をクロエが受け取り、各一枚ずつ渡していく。
記入書には氏名、出身、性別、などの基本的な項目と武器、特技、能力といった冒険者らしい項目があった。
どうやらクロエは文字が書けるようで代筆はいらいなと言ったが、万が一記入ができなかったらお願いしようと思ったレイ。
受付から渡されたペンで早速記入し始めると、不思議な事に象形文字の様な物が書き込まれていく。
頭では前の世界の言葉で認識しているのに、体が勝手に変換している不思議な感覚に戸惑いつつも一通り記入し終える。
隣のタマちゃんを見ると此方もどういう訳か分からないが、しっかりと記入できていた。
「始めに言っておきますが身分証の発行に御一人様、銀貨五枚掛かりますが宜しかったでしょうか?」
「一人銀貨五枚だね大丈夫…………はい、銀貨十五枚」
懐から硬貨の入った袋を取り出したレイは、三人分の登録料を取り出し受付に支払った。
それとついでに各自記入した書類も一緒に提出する。
「三人分で銀貨十五枚ですね……確認取れました。それでは冒険者組合の規約について簡単にですが説明致します。今ご記入された書類を元にこちらの冒険者証を発行しますが幾つか注意点があります」
そう言って先ほど記入した書類を差し、脇に置いてあった見本の冒険者証を取り出し説明をし始めた。
「まず始めに、冒険者証を発行するにあたって年会費が掛かるということです。ランク毎によって費用は変わりますが、年内に支払いがされない場合失効するので気をつけて下さい。それに伴ってですが一定期間、組合に集まる依頼を受けない場合も失効対象になります」
それからは組合のルールや仕様について説明がなされる。
この組合証、俗に言う冒険者証には依頼を熟していくとランクというものが上がって行く仕様で、ランクが上がると受けられる依頼の種類や利用できる施設の利用料金割引といった待遇がよくなるとのこと。
ランクは下からF、E、D、C、B、A、Sと七段階あるが、現状努力で到達できるのはBランクまででそこから先は才能がないとダメだとか。
それとこの身分証に限って都市或いは街へ入る際に掛かる税金を免除されるというもの。
他に商売をする人達が登録する組合証があるが、それでも全額免除されないらしく、そう言った点を考えると冒険者証は結構人気だとか。
だが登録料と年会費が他の組合証に比べて高いというデメリットがあったりするが。
あと一定期間中に依頼を受けないと失効することについてだが、ランクが低ければ低い程失効期間が短くなるので注意が必要。
毎年、高い登録料を払って期間中に依頼を受けないで失効する者が割かし多いのだそうだ。
因みに一番低いFランクの失効期限は一週間で、期間内に依頼を受けないと失効する。
「簡単ではありますが以上で説明は終わります。何かご不明な点や質問が有れば答えられる範囲で返答したします」
それから程なくして説明は終了し、別の組合員から三枚の身分証を受け取った受付が各自に手渡していく。
渡された鉛色で横長の身分証には先ほど記入した情報が刻まれていた。
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