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38.白狼
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ありったけ魔力を込めたボムは番人エンキンドゥの喉下で炸裂した。周囲のツララを巻き込みながらの魔法は圧倒的火力だ。入口付近のツララの陰に待機していた場所まで爆風が襲い掛かってくる。
流石、魔力の消費軽減が付いている高級な杖だけある。それに加えて魔道具店で購入した装飾品の影響も相まって凄まじい火力だった。さしものエンキンドゥもこの不意打ちには耐えられまい。
「ユーリ!」
「ん……うえ! あれでかすり傷程度とか」
爆風で舞った氷の破片やら何やらが収まり敵が姿を現す。喉元の真っ白毛並みが多少すすけている程度で特にこれと言ってダメージは見られない。何事も無かったように佇んでいた。
「ウオォォオオオオオンンン!」
「やべ、ばれた!!」
こちらに気づいたエンキンドゥが咆哮を轟かせ氷の礫を飛ばしてきた。無数の礫が私達のいるツララにぶつかり亀裂が走る。エリカの隠れているツララが一番攻撃を受け今にも崩れそうだ。
エリカ自身もツララが持たないと判断したようで別のツララへ素早く移動した。移動の際にチャージライフルで反撃するのも忘れない。チャージされたエネルギー弾が氷の礫諸共融解させエンキンドゥの胴体へぶち当たる。ジジジっと胴体を焦がしながら着弾したエネルギー弾に若干怯みを見せた。
「エリカ!! 今の効いてるみたいだよ!」
「わかった、なるべく狙ってみるけど私一人だけじゃ厳しいわ」
「うん、こっちはこっちで有効打がいないか調べてみる!」
「お願い!」
エリカのチャージライフルから放たれる弾は高密度のエネルギーだ。弾倉からチャージしたエネルギーを一度分解させてその爆発を利用することで超電磁砲のよに発射する。
高密度の熱エネルギーはエンキンドゥにとって弱点である炎属性に分類されるようだ。
「チカ! 次のボムは至近距離で爆発させてみて!」
「わかった! ……クイック、ボム!」
二発目の全力ボムは左前足の真横で炸裂した。急激な圧縮の後、爆発が起きてエンキンドゥ自体を吹き飛ばした。
「よし! 今がチャンス!!」
これ見よがしと私は前線へ駆けこんだ。氷の台の上で転げ回っているエンキンドゥへ急いで近づき影虎を抜く。チカの魔法の巻き添えをくらったツララを踏み台にして中央の台へ飛び移った。
「うわっ!! あ、ちょちょおち……うぐぅ」
しがみ付いた場所もまた氷で出来ていたため滑り落ちそうになった。が、そこは影虎をピックのように差して踏ん張り登り切った。
台の上で今だ転げ回っているエンキンドゥに近寄りチャージ連撃をお見舞いした。しかし、まるで氷を攻撃しているみたいな感触に思わず引きつる。全く攻撃が通らずメルさんの言っていた情報どおり斬撃耐性が備わっているようだ。
「くぅ……耐久値が回復しきっていな現状で朧火を使うのは嫌なんだけど、仕方ない……朧火!」
武器の耐久値をごりごり削る朧火だがその効果は絶大だ。攻撃するたび相手のステータスを減少させ最大で三十%削ることが出来る。十%ずつステータスが下がっている感覚を感じながらひたすら攻撃を加えていく。まるでフルボッコ状態に申し訳なさとこれほど苦労せず楽して討伐していいのかと葛藤しつつも手を緩めることは一切しない。
しかし、それも長くは続かなかった。エンキンドゥの長い尻尾が急に伸びて来て私を弾き飛ばした。それこそボールが飛んでいくように。
弾き飛ばされた私はそのまま台を飛び越え二メートルほどの高さから落下。地面に落ちていたツララの欠片に頭をぶつけた痛みに頭を押さえた。
「痛ぁぁ~くぅ」
敵の残り体力は七割。朧火を使って乱舞してもその程度のダメージしか与えられない。確かに、他の番人と比べて一味違うようだ。
態勢を立て直したエンキンドゥは礫に加え、氷の槍を飛ばしてきた。太い氷の柱が礫と同じくらいの速さで飛んでくる様は身震いものだ。今はエリカを狙い撃ちして氷槍は飛んでいっている。
こちらに攻撃が向かない内に二メートルくらいの台をなんとかよじ登った。正直、これだけで大分疲れる。疲労した体に鞭を打ってエンキンドゥへ接近、極炎属性を纏った影虎でチャージ連撃から流れるような連撃をお見舞いした。
途中、装飾品の効果で体力が魔力へ変換されているので体力ゲージが半分の辺りで緑のヴェールが体を包む。ちゃんとチカは自身の仕事を全うしてることに嬉しさを覚え、私も! と影縛りで敵を拘束する。
完全に拘束出来ていないが多少動きに制限が掛かった状態だ。マナポーションを飲んで魔力を全開にしたあと、影喰いを横っ腹へ放った。
私の切り上げる動作を引き金に一本の伸びた影から巨大な怪魚が浮かび上がり、動きの制限されたエンキンドゥの横っ腹を影喰いが襲う。ステータスを三十%減少させられた状態で影喰いが直撃、多大なダメージを与えた。具体的に三割ほど体力を削った。
「ごふっ!!」
再び尻尾の薙ぎ払いを喰らって場外へ飛ばされ、落下した衝撃で影虎が手元から飛んでいってしまった。これはまずい! と思うのも束の間、追い打ちとばかりにエンキンドゥが私へ攻撃の矛先を向けると巨大な氷の槍をクルクル回転させて形成ているのが目に映った。
ああ、こりゃ死んだ……、と諦めモードの私を他所にエリカとチカが極炎属性を宿らせた武器で応戦した。特に凄かったのはエリカのフルバーストだ。あり得ない高密度のエネルギー弾が無数に飛び交いエンキンドゥへ直撃。エリカの弾幕攻撃に先ほど作っていた巨大な氷の槍を盾に使う始末だ。
そして大本命と言わんばかりのこれまた巨大なボムを放とうとしているチカ。マナポーションを口に咥え魔力を回復しながら超高密度のボムを放った。
エンキンドゥが立っている空間を圧縮し、次の瞬間、大爆発が起こった。空間が割れる音を立て爆発しその衝撃で私も数十メートル吹き飛ばされる。視界がグルグルと回ってどうなったのかわからない。次に視界が安定した時に移っていたのは――
――チリーン。
《討伐クエスト:白の番人一体討伐。 1/1 報酬:討伐の証‐白‐》
《領主ポイント211800pt獲得しました。所属する立候補者へポイントが加算されました。》
クエスト達成を知らせる通知だった。
流石、魔力の消費軽減が付いている高級な杖だけある。それに加えて魔道具店で購入した装飾品の影響も相まって凄まじい火力だった。さしものエンキンドゥもこの不意打ちには耐えられまい。
「ユーリ!」
「ん……うえ! あれでかすり傷程度とか」
爆風で舞った氷の破片やら何やらが収まり敵が姿を現す。喉元の真っ白毛並みが多少すすけている程度で特にこれと言ってダメージは見られない。何事も無かったように佇んでいた。
「ウオォォオオオオオンンン!」
「やべ、ばれた!!」
こちらに気づいたエンキンドゥが咆哮を轟かせ氷の礫を飛ばしてきた。無数の礫が私達のいるツララにぶつかり亀裂が走る。エリカの隠れているツララが一番攻撃を受け今にも崩れそうだ。
エリカ自身もツララが持たないと判断したようで別のツララへ素早く移動した。移動の際にチャージライフルで反撃するのも忘れない。チャージされたエネルギー弾が氷の礫諸共融解させエンキンドゥの胴体へぶち当たる。ジジジっと胴体を焦がしながら着弾したエネルギー弾に若干怯みを見せた。
「エリカ!! 今の効いてるみたいだよ!」
「わかった、なるべく狙ってみるけど私一人だけじゃ厳しいわ」
「うん、こっちはこっちで有効打がいないか調べてみる!」
「お願い!」
エリカのチャージライフルから放たれる弾は高密度のエネルギーだ。弾倉からチャージしたエネルギーを一度分解させてその爆発を利用することで超電磁砲のよに発射する。
高密度の熱エネルギーはエンキンドゥにとって弱点である炎属性に分類されるようだ。
「チカ! 次のボムは至近距離で爆発させてみて!」
「わかった! ……クイック、ボム!」
二発目の全力ボムは左前足の真横で炸裂した。急激な圧縮の後、爆発が起きてエンキンドゥ自体を吹き飛ばした。
「よし! 今がチャンス!!」
これ見よがしと私は前線へ駆けこんだ。氷の台の上で転げ回っているエンキンドゥへ急いで近づき影虎を抜く。チカの魔法の巻き添えをくらったツララを踏み台にして中央の台へ飛び移った。
「うわっ!! あ、ちょちょおち……うぐぅ」
しがみ付いた場所もまた氷で出来ていたため滑り落ちそうになった。が、そこは影虎をピックのように差して踏ん張り登り切った。
台の上で今だ転げ回っているエンキンドゥに近寄りチャージ連撃をお見舞いした。しかし、まるで氷を攻撃しているみたいな感触に思わず引きつる。全く攻撃が通らずメルさんの言っていた情報どおり斬撃耐性が備わっているようだ。
「くぅ……耐久値が回復しきっていな現状で朧火を使うのは嫌なんだけど、仕方ない……朧火!」
武器の耐久値をごりごり削る朧火だがその効果は絶大だ。攻撃するたび相手のステータスを減少させ最大で三十%削ることが出来る。十%ずつステータスが下がっている感覚を感じながらひたすら攻撃を加えていく。まるでフルボッコ状態に申し訳なさとこれほど苦労せず楽して討伐していいのかと葛藤しつつも手を緩めることは一切しない。
しかし、それも長くは続かなかった。エンキンドゥの長い尻尾が急に伸びて来て私を弾き飛ばした。それこそボールが飛んでいくように。
弾き飛ばされた私はそのまま台を飛び越え二メートルほどの高さから落下。地面に落ちていたツララの欠片に頭をぶつけた痛みに頭を押さえた。
「痛ぁぁ~くぅ」
敵の残り体力は七割。朧火を使って乱舞してもその程度のダメージしか与えられない。確かに、他の番人と比べて一味違うようだ。
態勢を立て直したエンキンドゥは礫に加え、氷の槍を飛ばしてきた。太い氷の柱が礫と同じくらいの速さで飛んでくる様は身震いものだ。今はエリカを狙い撃ちして氷槍は飛んでいっている。
こちらに攻撃が向かない内に二メートルくらいの台をなんとかよじ登った。正直、これだけで大分疲れる。疲労した体に鞭を打ってエンキンドゥへ接近、極炎属性を纏った影虎でチャージ連撃から流れるような連撃をお見舞いした。
途中、装飾品の効果で体力が魔力へ変換されているので体力ゲージが半分の辺りで緑のヴェールが体を包む。ちゃんとチカは自身の仕事を全うしてることに嬉しさを覚え、私も! と影縛りで敵を拘束する。
完全に拘束出来ていないが多少動きに制限が掛かった状態だ。マナポーションを飲んで魔力を全開にしたあと、影喰いを横っ腹へ放った。
私の切り上げる動作を引き金に一本の伸びた影から巨大な怪魚が浮かび上がり、動きの制限されたエンキンドゥの横っ腹を影喰いが襲う。ステータスを三十%減少させられた状態で影喰いが直撃、多大なダメージを与えた。具体的に三割ほど体力を削った。
「ごふっ!!」
再び尻尾の薙ぎ払いを喰らって場外へ飛ばされ、落下した衝撃で影虎が手元から飛んでいってしまった。これはまずい! と思うのも束の間、追い打ちとばかりにエンキンドゥが私へ攻撃の矛先を向けると巨大な氷の槍をクルクル回転させて形成ているのが目に映った。
ああ、こりゃ死んだ……、と諦めモードの私を他所にエリカとチカが極炎属性を宿らせた武器で応戦した。特に凄かったのはエリカのフルバーストだ。あり得ない高密度のエネルギー弾が無数に飛び交いエンキンドゥへ直撃。エリカの弾幕攻撃に先ほど作っていた巨大な氷の槍を盾に使う始末だ。
そして大本命と言わんばかりのこれまた巨大なボムを放とうとしているチカ。マナポーションを口に咥え魔力を回復しながら超高密度のボムを放った。
エンキンドゥが立っている空間を圧縮し、次の瞬間、大爆発が起こった。空間が割れる音を立て爆発しその衝撃で私も数十メートル吹き飛ばされる。視界がグルグルと回ってどうなったのかわからない。次に視界が安定した時に移っていたのは――
――チリーン。
《討伐クエスト:白の番人一体討伐。 1/1 報酬:討伐の証‐白‐》
《領主ポイント211800pt獲得しました。所属する立候補者へポイントが加算されました。》
クエスト達成を知らせる通知だった。
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