ドクターダーリン【完結】

桃華れい

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おまけ

裏フェーズ8-15

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 病棟から外来や医局へ下りるときはいつも階段を使うが、頭を怪我したばかりの今日はさすがにエレベーターを使う。鷹宮が付き添ってくれている。
「奥様、メイクしてないとだいぶ印象が変わるわねえ」
 病棟ロビーでエレベーターを待ちながら鷹宮が言った。
「パーティーのときは二十二、三歳に見えたけど、それでも十分若いんだけど、もしかしてもっと下なんじゃないの?」
 俺はギクリとした。
 今朝一番で面会にきてくれた彩はすっぴんだった。本格的な化粧をしていた先々月のパーティーとはだいぶ印象が違う。パーティーでの大人びた彩しか知らなければ、二十代前半くらいだと思うだろう。鷹宮には去年の夏に俺と彩が一緒に公園を歩いているところを見られているが、距離があったのと車を運転中だったために顔はよくわからなかったらしい。
 鷹宮に彩の年齢を知られるのは厄介かもしれない。「そんな若い子に手出して」と呆れられるのが目に見えてる。俺は特に何も答えなかった。
 エレベーターが病棟フロアに到着して扉が開いた。降りてきた面会者たちがみな俺の包帯頭を一瞥していった。全員が降りてから入れ替わりでエレベーターに乗り込む。
「それに私、なんとなくあの子に見覚えがあるのよね」
 彩が退院後の初外来の日にも会っているが、さすがに憶えていないだろう。
「一階のカフェだろ」
 鷹宮も休憩時間にカフェへテイクアウトしにいくことがあるようだから、これまでに何度か彩の接客を受けているはずだ。
「それだわ! あんた、目の届くところで働かせてるの?」
 どうしてそうなるんだ。俺がそんなにあいつを束縛しているように見えるのか。
「違えよ。あいつが自分で決めた」
 カフェのバイトの面接を申し込んできたと聞いたときは、俺もうれしく思った。勤務中に彩の顔を見れるのはいい。それまではほとんど寄らなかったカフェに、頻繁にコーヒーを買いにいくようになった。おかげで今ではすっかり店員に顔を憶えられている。
「ふうん?」
 鷹宮がニヤニヤしている。まったく信用してない顔だ。ああ、うるさい。
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