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おまけ

裏フェーズ0-2

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 術後の不調を訴える患者の経過を診るため、病棟に寄った。医局へ戻る前にもう一人、様子を診ておこうか。昨夜眠れなくて、深夜に廊下の突き当たりに置いてある椅子に座っていた女の子だ。
 手術を怖がっていた。入院前に外来で手術の説明をしたときは気丈に見えた彼女が、入院してからは怖くて眠れていないらしい。
 主治医である俺がもっと話を聞いてあげられればいいが、時間的になかなか難しい。医師で男の俺よりも、身近にいる同性の看護師相手のほうが話しやすいのではと思うが、彼女について担当看護師からそういう報告は受けていない。一人で抱え込むタイプかもしれない。
 彼女の病室に入る。同室の三十代の患者はベッドにいない。確かこの時間は、麻酔科で術前の説明を受けているはずだ。
 二人部屋の病室の、窓に近い側が彼女のベッドだ。
「伊吹さん――」
 呼びかけながら、半分閉められた仕切りカーテンに手をかけて開けると、彼女はベッドの上ですやすやと寝息を立てていた。おっと、眠っていたか。
 眠れないと言っていたから心配していた。夜に眠れなかった分、今寝てるんだろう。昼間に寝すぎると、夜また眠れなくなりそうだが。
 あどけない寝顔をしている。十七歳の高校生なのだから当然だ。しかし昨夜廊下で会ったときは、月明かりに照らされて大人っぽく見えた。一瞬見惚れたくらいだ。こうして昼間見れば、やはり十七歳の年相応な女の子だ。
 ベッドに片手をつき、彼女の寝顔に顔を近づける。頭ひとつ分離れた距離から、彼女の寝顔を見つめた。よく寝てるな。
 ふいに廊下で看護師が患者を呼んだ。呼ばれたのは自分ではないが、俺ははっとして彼女から離れた。
 平然を装って病室をあとにする。高校生相手にどうかしている。馬鹿な考えは捨ててさっさと医局へ戻ろう。
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