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第2部
フェーズ8-1
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今年も夏祭りの日がやってきた。花火はマンションから見ることにした。それでも浴衣を着たのは、去年に涼が「来年も浴衣着て」と言っていたからだ。私には浴衣をリクエストしておきながら、自分は普段通りのTシャツとチノパンだ。もしも病院に呼び出されたら浴衣姿ではさっと駆けつけられないから仕方ないか。
夕方から繁華街でショッピングデートをして、祭りの縁日だけ見てまわってきた。今日は街全体の空気が熱い。
帰宅するなりすぐにエアコンをつけた。冷たいお茶で喉を潤しながら涼んでいると、いよいよ打ち上げが始まった。部屋の明かりを消し、リビングの大きなガラス戸から夜空を見上げる。
今日指にはめているのは結婚指輪ではなく婚約指輪だ。今日はこちらのほうがふさわしい気がした。
「去年の花火大会の日にこの指輪をもらったんだよね」
ガラス戸の前に立つ私を、涼が後ろから抱きしめた。
「いい思い出?」
「うん、とても。一生忘れないよ」
「あの混雑の中、行ってよかったな」
本当にすごく混んでた。はぐれないように涼が手を繋いでくれてた。
今年は落ち着いて、二人だけでゆっくり見られる、と思ったのも束の間だった。
「浴衣、今年は脱がせていい?」
涼が私の首筋に唇を這わせながら言った。
「今年は、って……」
「去年も脱がせたくてたまらなかった。でもあの頃はまだ触れられなかったからな」
帯のリボン結びが解かれていく。
思い出した。去年、花火大会が終わって帰ってきてから、なんとなく涼はそっけなかった。
「それで去年、冷たかったの?」
「そうだった?」
「怒らせたのかと思ってた」
「怒ってないよ」
「来年も浴衣着て」なんて気が早いことを言ってたのも、そういうことだったんだ。
二周巻いてあった帯が外されて床に落ちた。帯を外してもその下には着崩れを防ぐための紐を結んである。緩まないようにしっかり結んであるから、浴衣を脱がせるのは難しいと思う。涼が脱がせることに慣れていなければ。
「ごめんね、いっぱい我慢させて」
「謝ることじゃない」
顔だけ横を向かされ、キスされた。すぐに舌が入ってきて、同時に浴衣の上から胸を揉まれる。
「いっぱい歩いて汗かいたから、シャワー浴びたい」
「どうせすぐにまた汗だくになる」
「そういう問題じゃ……」
また唇を塞がれる。紐を解くのはあきらめたようで、涼は紐よりも上の部分の浴衣を私の肩からずり下ろした。このほうが手っ取り早い。ブラジャーの後ろのホックが外され、ふわりと浮く。そのまま取り外されて床に落ちた。涼の手が膨らみを大きく揉む。
「ん……っ」
手の動きに合わせて腰が勝手にうねる。胸に触れていないほうの手が下腹部へと伸びる。普段の格好なら軽くて柔らかいスカートの生地を持ち上げるだけで下着に到達できる。今日は分厚くごわごわとした浴衣が、涼の手の侵入を阻む。
「浴衣着てもらったの、失敗か?」
思わず不満が口からこぼれた。自分が望んだくせに、と私はくすりと笑った。
抱き上げられて、ベッドに連れていかれた。このお姫様抱っこのことも、去年の花火の帰りにコンビニでおんぶしてもらったときに言ってたっけ。ベッドに連れていくときにするって。本当にそうだった。
私だけを先にベッドに下ろすと、涼は自分の服を脱いだ。窓の外では次々と花火が打ち上がっている。花火に照らされているおかげで、部屋の明かりをつけなくても涼の顔と体が見える。横たわった私の浴衣の裾を、涼が捲り上げていく。膝と太ももがあらわになり、腰紐の位置まで浴衣を上げ切ってしまうと、邪魔なパンツが足から抜き去られた。彼の指がぬるっと私の中に入ってきた。
「は……ぁん」
中の形状を確かめるように指が動いている。たっぷりと全体をかき回したあとは、迷いなく定位置に落ち着いた。
「そこ……だめっ……あっ」
指が増え、挟むようにして敏感な部分に触れられる。気持ちよくて腰が勝手に浮き上がってしまう。律動的に快感を与えられ、次第に昇りつめていく。もうたまらない。昇り切る寸前、指が抜かれた。
「や……っ」
ひどい、ここでやめるなんて。続きをしてもらうためなら、今の私はなんだってしてしまいそう。しかしその必要はなかった。直後にまた満たされたからだ。
「っ……ああっ!!」
衝撃で一気に達してしまった。指よりもずっと太くて硬くて、奥まで届いている。再び入れられたものが、指ではないことはすぐにわかった。でも、いつもと違う。いつもより熱くて、体に馴染むような感覚がある。
「涼……つけない、の?」
声を絞り出して訊ねた。コンドームをつけていない。生で繋がってしまっている。
「ん……」
余裕のない顔と荒い息、激しくするときはいつもだけど、今日は特にそう見える。
本当にいいの? わからない。私も今は冷静に考えられない。
「あっ!」
涼が腰を揺らす。
「あん……っ、ダメ……またイっちゃ……」
めいっぱい張りつめた熱いものが、内壁を擦り上げる。降り立つ暇もなく、更なる高みへ連れていかれる。
前にも一度、じかに触れ合ったことがある。卒業旅行の夜に、旅館の露天風呂で立ったまま後ろから。それまでに味わったことのない感覚にとろけたけれど、堪能しきる前に抜かれてしまった。今は正面からしっかりと、そしてすでにあのときよりもずっと長く繋がっている。
「ぁ……ああっ!」
また体が震える。
「彩……中で出していい?」
息を荒らしながら涼が言った。今日は最後までしてくれるの? 勢いでも、過ちでもない。私も、欲しい。私は涼の目を見つめながら答えた。
「うん……」
外では大輪の花がひっきりなしに打ち上がっている。そろそろフィナーレだ。花火と連動するかのように激しく打ちつけられ、やがて胎内に熱いものが放たれた。
尽き果てた涼を抱き止める。耳元に彼の熱い吐息がかかる。私も余韻が続いていて、しばらく動けそうにない。
涼が体を起こし、収まっていたものをゆっくりと引き抜いた。
「んっ」
中に注がれたものが垂れる感覚がした。シーツを汚してしまうとひやりとした瞬間、涼がティッシュを当てて拭ってくれた。
いつの間にか花火も終わっていた。外も部屋の中も静寂に包まれている。さっきまでの激しさが嘘のように感じられる。
力が抜けたままの私の隣に涼が横になった。
「デキたら浴衣の花の名前でもつけようか」
しわくちゃになって腰まわりに溜まっている浴衣に目をやった。浴衣の柄はユリの花だ。
「男の子だったらどうするの」
二人で笑い合う。
「今日は危険な日ではないと思うけど」
「安全ともいえないよ。お前、不規則だし……」
そのとき、コードレスホンが鳴り始めた。夢心地だったのが現実に引き戻される。
「もう少し余韻に浸らせろ」
涼が苦笑いを浮かべながら言い、素早く上体を起こして電話を取り上げた。
「はい」
受話器から声が漏れ聞こえてくる。相手の言葉を聞き取ることはできないけれど、女の人の声のようだ。夜勤の看護師さんかな。
「祭りで? ………わかった、すぐ行きます」
行っちゃうんだ。
「気をつけてね」
受話器を戻した涼に言った。
「乱闘騒ぎで怪我人が大勢出たらしい。当直の先生だけじゃ手が足りないようだから、行ってくるよ」
涼はベッドから降りてクローゼットを開けた。
「汗だくなんだけど、俺」
「そこにタオルあるよ」
くすくすと笑いながら、洗濯してたたんであるタオルを指差す。涼は手早く汗を拭き取ってから、服を取り出して着始めた。
前にもこんなことがあった。あのときは最中だったから、今日のほうがマシだ。
服を着た涼が私の額にキスをした。
「先に寝てて、ママ」
「ちょっ……」
聞き慣れない言葉を言われて取り乱す。そんな私を残して、涼は出かけていった。
「ママ」なんて、何言ってるんだか。私も汗をかいたからシャワーを浴びてから寝よう。その前に浴衣がしわくちゃだ。早く脱いでしわを伸ばさないと。
起き上がろうとしたら、涼と繋がっていた部分から液体が流れ出る感覚がして、はっとした。彼の言う通り、不規則な私に安全日なんてきっとない。本当にできちゃうかもしれない。私は下腹部にそっと触れた。文字通り、愛の結晶なんだ。幸せのひと言では言い表せないくらい、満ち足りた気分がした。
夕方から繁華街でショッピングデートをして、祭りの縁日だけ見てまわってきた。今日は街全体の空気が熱い。
帰宅するなりすぐにエアコンをつけた。冷たいお茶で喉を潤しながら涼んでいると、いよいよ打ち上げが始まった。部屋の明かりを消し、リビングの大きなガラス戸から夜空を見上げる。
今日指にはめているのは結婚指輪ではなく婚約指輪だ。今日はこちらのほうがふさわしい気がした。
「去年の花火大会の日にこの指輪をもらったんだよね」
ガラス戸の前に立つ私を、涼が後ろから抱きしめた。
「いい思い出?」
「うん、とても。一生忘れないよ」
「あの混雑の中、行ってよかったな」
本当にすごく混んでた。はぐれないように涼が手を繋いでくれてた。
今年は落ち着いて、二人だけでゆっくり見られる、と思ったのも束の間だった。
「浴衣、今年は脱がせていい?」
涼が私の首筋に唇を這わせながら言った。
「今年は、って……」
「去年も脱がせたくてたまらなかった。でもあの頃はまだ触れられなかったからな」
帯のリボン結びが解かれていく。
思い出した。去年、花火大会が終わって帰ってきてから、なんとなく涼はそっけなかった。
「それで去年、冷たかったの?」
「そうだった?」
「怒らせたのかと思ってた」
「怒ってないよ」
「来年も浴衣着て」なんて気が早いことを言ってたのも、そういうことだったんだ。
二周巻いてあった帯が外されて床に落ちた。帯を外してもその下には着崩れを防ぐための紐を結んである。緩まないようにしっかり結んであるから、浴衣を脱がせるのは難しいと思う。涼が脱がせることに慣れていなければ。
「ごめんね、いっぱい我慢させて」
「謝ることじゃない」
顔だけ横を向かされ、キスされた。すぐに舌が入ってきて、同時に浴衣の上から胸を揉まれる。
「いっぱい歩いて汗かいたから、シャワー浴びたい」
「どうせすぐにまた汗だくになる」
「そういう問題じゃ……」
また唇を塞がれる。紐を解くのはあきらめたようで、涼は紐よりも上の部分の浴衣を私の肩からずり下ろした。このほうが手っ取り早い。ブラジャーの後ろのホックが外され、ふわりと浮く。そのまま取り外されて床に落ちた。涼の手が膨らみを大きく揉む。
「ん……っ」
手の動きに合わせて腰が勝手にうねる。胸に触れていないほうの手が下腹部へと伸びる。普段の格好なら軽くて柔らかいスカートの生地を持ち上げるだけで下着に到達できる。今日は分厚くごわごわとした浴衣が、涼の手の侵入を阻む。
「浴衣着てもらったの、失敗か?」
思わず不満が口からこぼれた。自分が望んだくせに、と私はくすりと笑った。
抱き上げられて、ベッドに連れていかれた。このお姫様抱っこのことも、去年の花火の帰りにコンビニでおんぶしてもらったときに言ってたっけ。ベッドに連れていくときにするって。本当にそうだった。
私だけを先にベッドに下ろすと、涼は自分の服を脱いだ。窓の外では次々と花火が打ち上がっている。花火に照らされているおかげで、部屋の明かりをつけなくても涼の顔と体が見える。横たわった私の浴衣の裾を、涼が捲り上げていく。膝と太ももがあらわになり、腰紐の位置まで浴衣を上げ切ってしまうと、邪魔なパンツが足から抜き去られた。彼の指がぬるっと私の中に入ってきた。
「は……ぁん」
中の形状を確かめるように指が動いている。たっぷりと全体をかき回したあとは、迷いなく定位置に落ち着いた。
「そこ……だめっ……あっ」
指が増え、挟むようにして敏感な部分に触れられる。気持ちよくて腰が勝手に浮き上がってしまう。律動的に快感を与えられ、次第に昇りつめていく。もうたまらない。昇り切る寸前、指が抜かれた。
「や……っ」
ひどい、ここでやめるなんて。続きをしてもらうためなら、今の私はなんだってしてしまいそう。しかしその必要はなかった。直後にまた満たされたからだ。
「っ……ああっ!!」
衝撃で一気に達してしまった。指よりもずっと太くて硬くて、奥まで届いている。再び入れられたものが、指ではないことはすぐにわかった。でも、いつもと違う。いつもより熱くて、体に馴染むような感覚がある。
「涼……つけない、の?」
声を絞り出して訊ねた。コンドームをつけていない。生で繋がってしまっている。
「ん……」
余裕のない顔と荒い息、激しくするときはいつもだけど、今日は特にそう見える。
本当にいいの? わからない。私も今は冷静に考えられない。
「あっ!」
涼が腰を揺らす。
「あん……っ、ダメ……またイっちゃ……」
めいっぱい張りつめた熱いものが、内壁を擦り上げる。降り立つ暇もなく、更なる高みへ連れていかれる。
前にも一度、じかに触れ合ったことがある。卒業旅行の夜に、旅館の露天風呂で立ったまま後ろから。それまでに味わったことのない感覚にとろけたけれど、堪能しきる前に抜かれてしまった。今は正面からしっかりと、そしてすでにあのときよりもずっと長く繋がっている。
「ぁ……ああっ!」
また体が震える。
「彩……中で出していい?」
息を荒らしながら涼が言った。今日は最後までしてくれるの? 勢いでも、過ちでもない。私も、欲しい。私は涼の目を見つめながら答えた。
「うん……」
外では大輪の花がひっきりなしに打ち上がっている。そろそろフィナーレだ。花火と連動するかのように激しく打ちつけられ、やがて胎内に熱いものが放たれた。
尽き果てた涼を抱き止める。耳元に彼の熱い吐息がかかる。私も余韻が続いていて、しばらく動けそうにない。
涼が体を起こし、収まっていたものをゆっくりと引き抜いた。
「んっ」
中に注がれたものが垂れる感覚がした。シーツを汚してしまうとひやりとした瞬間、涼がティッシュを当てて拭ってくれた。
いつの間にか花火も終わっていた。外も部屋の中も静寂に包まれている。さっきまでの激しさが嘘のように感じられる。
力が抜けたままの私の隣に涼が横になった。
「デキたら浴衣の花の名前でもつけようか」
しわくちゃになって腰まわりに溜まっている浴衣に目をやった。浴衣の柄はユリの花だ。
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二人で笑い合う。
「今日は危険な日ではないと思うけど」
「安全ともいえないよ。お前、不規則だし……」
そのとき、コードレスホンが鳴り始めた。夢心地だったのが現実に引き戻される。
「もう少し余韻に浸らせろ」
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「はい」
受話器から声が漏れ聞こえてくる。相手の言葉を聞き取ることはできないけれど、女の人の声のようだ。夜勤の看護師さんかな。
「祭りで? ………わかった、すぐ行きます」
行っちゃうんだ。
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受話器を戻した涼に言った。
「乱闘騒ぎで怪我人が大勢出たらしい。当直の先生だけじゃ手が足りないようだから、行ってくるよ」
涼はベッドから降りてクローゼットを開けた。
「汗だくなんだけど、俺」
「そこにタオルあるよ」
くすくすと笑いながら、洗濯してたたんであるタオルを指差す。涼は手早く汗を拭き取ってから、服を取り出して着始めた。
前にもこんなことがあった。あのときは最中だったから、今日のほうがマシだ。
服を着た涼が私の額にキスをした。
「先に寝てて、ママ」
「ちょっ……」
聞き慣れない言葉を言われて取り乱す。そんな私を残して、涼は出かけていった。
「ママ」なんて、何言ってるんだか。私も汗をかいたからシャワーを浴びてから寝よう。その前に浴衣がしわくちゃだ。早く脱いでしわを伸ばさないと。
起き上がろうとしたら、涼と繋がっていた部分から液体が流れ出る感覚がして、はっとした。彼の言う通り、不規則な私に安全日なんてきっとない。本当にできちゃうかもしれない。私は下腹部にそっと触れた。文字通り、愛の結晶なんだ。幸せのひと言では言い表せないくらい、満ち足りた気分がした。
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