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第1部
フェーズ7-3
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あくびが出た。寝不足だ。もう少し寝ていたかったけど、朝ご飯を作るためにキッチンに立った。だらだらと一緒に寝ていたら、そのまま朝からしてしまいそうで。
味噌汁を作っているうちに涼も起きた。洗面所で顔を洗って歯を磨いてからキッチンにやってきた。
「服なんか着なくていいのに」
私を後ろから抱きしめて、前で結んでいるエプロンの紐を解こうとする。
「裸エプロンって、知ってる?」
「知らない」
朝からふざけてるから、すげなく返した。すると紐に触るのをやめて、その腕は私の体に回された。
「やっぱり泊まっただけの日とは違うな。もう帰さなくていいんだから」
これからはここが私の帰る家なんだ。毎日こうして朝ご飯を作って、一緒に食べて一緒に生活するんだね。
「あ、そうだ」
作業を中断して涼に向き合う。
「明日からお弁当作ろうと思うんだけど」
涼の口元がわかりやすく緩んだ。これは、あきらかに喜んでる。
「毎日作ってくれんの?」
「うん」
「うれしすぎて勃起しそう」
「ちょっ……」
朝からこんな恥ずかしいことを言われて顔を赤くするのも、当たり前になるのかな。早く慣れないと、心臓がもたない。
そういうわけで、この日は一緒にお弁当箱を買いにいった。作り置きのための保存容器もいくつか買った。明日から始めて、この先何年も続くであろうお弁当作りだ。常備菜や冷凍も活用して無理なく続けていきたい。
一人暮らしの経験がないままいきなりの二人暮らしなのだ。慣れないことばかりで絶対に戸惑うだろう。料理の他にも洗濯や掃除など、早く主婦業をこなせるようになりたい。忙しい涼に代わって、家のことはしっかりできるようにならないとね。
アラームの音が遠くから私を呼び覚ます。意識がはっきりしてきて、音源の携帯電話を手に取った。
「!?」
また、だ。脚を絡ませて抱き枕にされてる。そして、当たっている。初めてお泊まりした日の翌朝もそうだった。あのときより今のほうが恥ずかしい。お互いに裸だから感触がじかだ。
「ん?」
涼も起きてしまった。起こさないようにとアラームの音量は最小に設定したのだけど、一緒に寝てるからやっぱり起こしてしまう。でもこのままだとベッドから出られないから、ちょうどよかった。
「あの、当たって……」
「何が?」
絶対にすっとぼけてる。わかってるくせに。
「太ももに……」
「男の生理現象だから仕方ない。でも彩とこうやってくっついてると、どっちかわからないな」
にやにやしながら押しつけてくる。
「入れる? まだ時間あるし」
そんなコーヒーにミルク入れるか、みたいに簡単に言われても。
「い、いい。もう、起きる、から。お弁当、作らないと」
「いいんだ」
がっかりしないで。今日は月曜日なの。
「涼だって早くシャワー浴びないと」
「シャワーなら昨夜浴びたよ」
それはベッドに入る前でしょ。何をとぼけてるんだか。しかもちょっと意地悪そうだ。
「だって……」
ああ、そういうことか。言わせたいんだ。
「エッ……チしたから。そのまま病院に出勤するわけにはいかないでしょ」
思惑通りのようで、涼がにやりと笑った。
「かわいい。時間が許すなら、このまま朝から一発でも二発でもしたい」
のん気なことを言っている場合ではない。朝は忙しい。時間との戦いなのだ。
「もう起きて。遅刻するよ?」
手足を絡ませてくる涼を振りほどいて、やっとの思いでベッドから出た。早くお弁当と朝ご飯の準備をしないと、本当に遅刻してしまう。私は急いで服をきてキッチンへ向かった。
婚姻届を出すのはまだ少し先でも、実質的にはすでに新婚生活だ。それもかなり甘々な。今のところ、営みは毎日だ。ときには朝起きてベッドから起き上がる前に、ときには涼が帰宅してすぐに。「我慢しすぎて性欲が暴走してる」らしい。いつになったら治まるのやら。
お願いがあって、私は寝室のノートパソコンで仕事中の涼を覗いた。
「どうした?」
「昼間、パソコンを貸してもらえないかな」
夜や休日はこうして涼も使うことがあるから、平日の昼間だけ貸してもらいたい。
「全然いいよ。自由に使って」
ただ、ひとつ確認しなければならないことがある。
「エッチな動画とか入ってない?」
「あ、入ってるわ」
即答した。潔いな。去年の夏にAVを隠してないかとベッド下を覗いたけど何もなくて、パソコンが怪しいと思った。案の定だった。そして、私はもう怒っていい立場だ。
「っていうのは冗談で、仕事の資料もあるし、俺が彩が使ってるのを間違って消しても悪いから、ユーザーを分けとくよ」
冗談? あやしい。
「ありがと」
「何やんの。エッチな動画見るとか?」
あなたと一緒にしないでください。
「涼のお弁当、いつも写真撮ってるから、取り込んで整理したいなって」
「ああ、それでカメラ借りたのか」
写真が趣味の父から、先日会ったときに一眼レフカメラを借りた。正確にはもらってしまった。借りるつもりでお願いしたら、「結婚祝いだ」と初心者でも使いやすいというモデルをくれた。そのカメラで毎朝、涼のために作ったお弁当を撮っている。せっかくだからSNSを始めて投稿してみようかな。
味噌汁を作っているうちに涼も起きた。洗面所で顔を洗って歯を磨いてからキッチンにやってきた。
「服なんか着なくていいのに」
私を後ろから抱きしめて、前で結んでいるエプロンの紐を解こうとする。
「裸エプロンって、知ってる?」
「知らない」
朝からふざけてるから、すげなく返した。すると紐に触るのをやめて、その腕は私の体に回された。
「やっぱり泊まっただけの日とは違うな。もう帰さなくていいんだから」
これからはここが私の帰る家なんだ。毎日こうして朝ご飯を作って、一緒に食べて一緒に生活するんだね。
「あ、そうだ」
作業を中断して涼に向き合う。
「明日からお弁当作ろうと思うんだけど」
涼の口元がわかりやすく緩んだ。これは、あきらかに喜んでる。
「毎日作ってくれんの?」
「うん」
「うれしすぎて勃起しそう」
「ちょっ……」
朝からこんな恥ずかしいことを言われて顔を赤くするのも、当たり前になるのかな。早く慣れないと、心臓がもたない。
そういうわけで、この日は一緒にお弁当箱を買いにいった。作り置きのための保存容器もいくつか買った。明日から始めて、この先何年も続くであろうお弁当作りだ。常備菜や冷凍も活用して無理なく続けていきたい。
一人暮らしの経験がないままいきなりの二人暮らしなのだ。慣れないことばかりで絶対に戸惑うだろう。料理の他にも洗濯や掃除など、早く主婦業をこなせるようになりたい。忙しい涼に代わって、家のことはしっかりできるようにならないとね。
アラームの音が遠くから私を呼び覚ます。意識がはっきりしてきて、音源の携帯電話を手に取った。
「!?」
また、だ。脚を絡ませて抱き枕にされてる。そして、当たっている。初めてお泊まりした日の翌朝もそうだった。あのときより今のほうが恥ずかしい。お互いに裸だから感触がじかだ。
「ん?」
涼も起きてしまった。起こさないようにとアラームの音量は最小に設定したのだけど、一緒に寝てるからやっぱり起こしてしまう。でもこのままだとベッドから出られないから、ちょうどよかった。
「あの、当たって……」
「何が?」
絶対にすっとぼけてる。わかってるくせに。
「太ももに……」
「男の生理現象だから仕方ない。でも彩とこうやってくっついてると、どっちかわからないな」
にやにやしながら押しつけてくる。
「入れる? まだ時間あるし」
そんなコーヒーにミルク入れるか、みたいに簡単に言われても。
「い、いい。もう、起きる、から。お弁当、作らないと」
「いいんだ」
がっかりしないで。今日は月曜日なの。
「涼だって早くシャワー浴びないと」
「シャワーなら昨夜浴びたよ」
それはベッドに入る前でしょ。何をとぼけてるんだか。しかもちょっと意地悪そうだ。
「だって……」
ああ、そういうことか。言わせたいんだ。
「エッ……チしたから。そのまま病院に出勤するわけにはいかないでしょ」
思惑通りのようで、涼がにやりと笑った。
「かわいい。時間が許すなら、このまま朝から一発でも二発でもしたい」
のん気なことを言っている場合ではない。朝は忙しい。時間との戦いなのだ。
「もう起きて。遅刻するよ?」
手足を絡ませてくる涼を振りほどいて、やっとの思いでベッドから出た。早くお弁当と朝ご飯の準備をしないと、本当に遅刻してしまう。私は急いで服をきてキッチンへ向かった。
婚姻届を出すのはまだ少し先でも、実質的にはすでに新婚生活だ。それもかなり甘々な。今のところ、営みは毎日だ。ときには朝起きてベッドから起き上がる前に、ときには涼が帰宅してすぐに。「我慢しすぎて性欲が暴走してる」らしい。いつになったら治まるのやら。
お願いがあって、私は寝室のノートパソコンで仕事中の涼を覗いた。
「どうした?」
「昼間、パソコンを貸してもらえないかな」
夜や休日はこうして涼も使うことがあるから、平日の昼間だけ貸してもらいたい。
「全然いいよ。自由に使って」
ただ、ひとつ確認しなければならないことがある。
「エッチな動画とか入ってない?」
「あ、入ってるわ」
即答した。潔いな。去年の夏にAVを隠してないかとベッド下を覗いたけど何もなくて、パソコンが怪しいと思った。案の定だった。そして、私はもう怒っていい立場だ。
「っていうのは冗談で、仕事の資料もあるし、俺が彩が使ってるのを間違って消しても悪いから、ユーザーを分けとくよ」
冗談? あやしい。
「ありがと」
「何やんの。エッチな動画見るとか?」
あなたと一緒にしないでください。
「涼のお弁当、いつも写真撮ってるから、取り込んで整理したいなって」
「ああ、それでカメラ借りたのか」
写真が趣味の父から、先日会ったときに一眼レフカメラを借りた。正確にはもらってしまった。借りるつもりでお願いしたら、「結婚祝いだ」と初心者でも使いやすいというモデルをくれた。そのカメラで毎朝、涼のために作ったお弁当を撮っている。せっかくだからSNSを始めて投稿してみようかな。
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