ドクターダーリン【完結】

桃華れい

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第1部

フェーズ6-11

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 登校してホームルームが始まる前に、愛音と一緒にロビーの自販機へ行った。
「たまにはイチゴ牛乳でも飲もーよ」
 イチゴのが描かれたピンクのかわいらしいパッケージを見せられながらも、私はいつものようにウーロン茶を選んだ。教室に戻ろうとしたところで、登校してきたあの二人組に呼び止められた。
「彩、愛音、おはよー」
 以前にトイレで相談に乗ったあの二人組だ。昨日ショッピングセンターで見かけたあの子が、私と愛音に耳打ちをしてきた。
「彼と無事にできました」
「ほんと? おめでとう」
「ありがとう」
 よかった。涼が言っていた稀なケースも若干心配していた。普通にできたようで何よりだ。
 四人で並びながら教室へ向かう。
「彩の彼、かっこいいね」
 褒められたことよりも、恋人同士として見られたことがうれしい。ああ、でもあのとき抱き寄せられて密着してたせいかも。
「会ったの?」
「昨日、港のショッピングセンターで。もうね、手繋ぎじゃなくて腰に手回しちゃって、二歩も三歩も先をいってるって感じ。ラブラブだった」
 だから恥ずかしいって言ったのに。
「どこで知り合ったの?」
「彼の職場、に、私が、通って?」
 たどたどしく説明する私を、事情を知る愛音が横でにやにやしながら見ている。
「職場? 通う? まさかホストとか?」
 愛音が吹き出した。
「確かに見た目はホストっぽいかも」
「愛音も会ったことあるの?」
「あるある。ね、彩?」
「うん」
 ホストって、サラサラの髪で細身のスーツを着ていて、シャンパンタワーとかコールとかやったり、キザなこと言ったりするのよね。涼の髪もサラサラだし、スーツが似合うのは言うまでもないし、たまにキザなことも言う。そう遠くかけ離れたイメージでもないかもしれない。いや、むしろ近い。
「また別の相談なんだけど、みんなはお泊まりってどうしてる? 親は許してくれる?」
「あー、うちは絶対ダメ」
 先に答えたのは愛音だ。
「彩は?」
「私は、親に紹介済だから許してもらえてる」
「マジで? もうそこまでいってんの?」
「彩の場合は、両親が彼のことをとーっても信頼してるからね」
「ホストなのに?」
 からからとみんなが笑う。すっかり涼のイメージがホストとして定着してしまったようだ。
「お泊まりしたいけど、やっぱりなかなか難しいよね」
「もう夢中って感じ?」
「だって……」
 確かに、最初は夢中になるのもわかる。涼でさえ、あんな感じなんだもの。
「アリバイなら協力するよ? 私も彩に頼んだし」
「お願いしよっかなあ。日中だけじゃ時間が全然足りないんだもん」
 朝からなんて刺激的な話をしてるんだろう。私はドキドキして落ち着かなかった。
 親が許してくれてるのは、涼のことを信頼してくれてるからだということを忘れかけていた。涼だけではない。私のこともだ。今さらながら私は罪悪感に苛まれた。もう卒業するまではしない。せめてそれは守ろう。
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