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第1部

フェーズ6-4

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 休み時間に愛音と一緒にトイレに入ると、話し声が耳に入ってきた。
「次はきっとできるって」
 何やら励ましている。手洗い場の前に、同じクラスの仲よし二人組がいた。目が合い、励ましていたほうの子が私たちに声をかけてきた。
「二人は、彼氏いるんだよね?」
 私が頷き、愛音が二人に訊ねる。
「いるけど、どうしたの?」
「この子、昨日、彼氏と初めてしようとしたんだけど、できなかったんだって」
 まさに昨日、彼氏とその初めてを済ませた私がここにいますよ。
「できなかったって、どういうこと?」
 愛音が興味深そうに訊くと、悩んでいた子が少し言いづらそうに口を開いた。
「彼のが、入らなくて……」
 こんなところで何を話し込んでいるのかと思ったら、納得だ。男子や大勢のクラスメイトがいる教室では話せない。
「痛すぎて耐えられなかったから、彼には悪いんだけど途中でやめてもらったの」
「体が準備できてなかったんじゃないの?」
 答えたのは愛音だけど、私も同じことを思っていた。
「そんなことないと思うんだけど……」
「彼も初めて?」
 今度は私から訊ねた。彼女は頷いた。
「それならお互い不慣れなんだし、仕方ないよ」
「そうそう、何度かリトライするつもりで」
 愛音ともう一人の子が一緒になって明るく励ますが、彼女の表情は晴れない。
「もしかしたら私の体がおかしいのかなって考えちゃって。狭すぎるとか……」
 彼女は身長百六十センチの私より十センチは低く、体型も細身だ。だからといって、そんなことあるのだろうか。
「だとしても、ガバガバよりマシじゃない? ってさっきも話してたの」
「言えてる!」
 愛音が賛同した。
 ガバガバ? 私は大丈夫かな。昨日は涼が私の様子を見ながらゆっくりしてくれたからそれなりに時間はかかったけど、わりとすんなり入ったような。もしかして私、ガバガバ!?
 青ざめる私に、小柄な彼女が言う。
「彩、最近きれいになったよね」
「え?」
 思いがけないひと言に私は目を丸くした。すると、愛音が楽しそうに説明した。
「彩は年上の彼とつり合うために努力してんの。一緒にご飯行くと必ずサラダは食べるし、飲みものはウーロン茶しか頼まないんだから」
 それは、どちらも体の内側からきれいにしてくれそうなイメージだからだ。
「年上って大学生? 確か愛音の彼もそうだよね」
「もうちょっと上」
「じゃあ社会人? いいなー。いつも奢ってくれるんだろうなー」
 私がまだ高校生で親からお小遣いをもらってる身だからだろう。基本的に涼は私にお金を出させない。外食の際はもちろん、スーパーで食材を買うときも必ず払ってくれる。私が勝手に買っていった場合でも、あとでくれる。昨日のプリンは、いつものお礼にと私がお小遣いで買ったものだ。
 休み時間が終わってしまうため、相談に乗るのを中断してトイレに入った。二人は先にトイレから出たようだった。
 手を洗いながら鏡に映る自分の姿を見る。どこか変わっただろうか。先週の私とは、もう違うんだ。きれいになるとか肌つやがよくなるとか聞いたことがある。頬に軽く触れてみる。つやも弾力も特に変わらない気がした。
「どうしたの? 肌荒れ?」
 個室から出てきた愛音が、鏡越しに言った。
「ううん」
「さっきの話、もしかして彩も心配になっちゃった?」
「うん、ちょっと」
 別の心配だけど。愛音に報告しようかな。でも、昨日の今日でまだ照れくさい。もう少し胸の中に秘めておきたい。
「大丈夫でしょ、先生なら」
 実際、大丈夫だった。私は仰向けに寝ていただけでことが進んだ。やっぱり慣れてるのか。初体験同士と言った彼女が、ちょっとうらやましく思う。
 チャイムが鳴り始めてしまった。私たちは急ぎ足でトイレを出た。
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