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第1部

フェーズ6-1

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 今日は手みやげを持参した。外食費や食材費をいつも涼に払ってもらっているお礼に、ときどきこうして途中で買ってきたり、自分で作って持ってきたりする。今日は、家でも食べたことがある、自宅近くのケーキ屋のプリンを買ってきた。ほろ苦い大人のカラメルプリンで、甘いものが苦手な涼でも食べられそうだと思ったからだ。
 暖房の効いたリビングダイニングを見わたすも、涼の姿がない。キッチンにも、ベッドにも。出かけたのかな。不思議に思っていたら、後ろでドアが開く音がした。振り向くとバスルームに続く洗面所から涼が出てきたところで、その姿は腰にバスタオルを巻いただけのほぼ裸だ。
「悪い、シャワー浴びてた。おはよ」
「お、はよう」
 固まる私とは対照的に、涼は事も無げに挨拶した。カウンターの上に置いたプリンの入った紙袋に気がついたようで、涼がこっちにきた。
「何これ?」
「プリン。涼も、食べられそうなのだから、どうかな、って」
 触れられそうなほどすぐ近くに、涼の素肌がある。見ちゃいけないと思いながらも、目が離せない。男の人の体だ。きれい。引き締まっててたくましい。半乾きの髪が、シャンプーの香りと相まってセクシーだ。頭のてっぺんから足のつま先まで大人の色気が全開で、くらくらする。
「サンキュ。でもきっと、お前のほうが甘いよ」
 そんな格好で、そんなこと言わないで。私を見た涼が何かに気がついた。
「顔、赤くない? まさかまた熱が……」
 涼が手を伸ばして私に触れた瞬間、何かが走り抜けたかのように全身がゾクッとした。
「ふぁっ」
 変な声が出てしまった。とっさに私は両手で口を押さえた。
「熱ではないみたいだな」
 涼が意地悪そうに笑う。うろたえていると、真っ赤になってるであろう私の耳元で彼が囁いた。
「かわいい声、もっと聞きたい」
 その囁きだけでまた変な声が出そうになった。ふいに体がふわりと浮いた。涼に抱き上げられて、思わずその素肌にしがみつく。向かう先は、もちろん寝室だ。
 ベッドに降ろされた。このままだときっといつものようにキスして、触られるだけでおしまい。それだけじゃ嫌、もう我慢できない。私は勇気を振り絞って言った。
「最後まで、して?」
 涼、驚いてる。それと、困ってるはず。私のためを思って、卒業まで我慢するって決めてくれたのに、私からこんなこと言ったら困るよね。
「いいのか?」
 これはきっといきなりにして最終確認だ。始めてしまったら止められない。私は頷き、さらに言った。
「お願い」
 まっすぐに目を見つめて、懇願する。お願い、もう焦らさないで。
「わかった」
 唇が重ねられる。これは始まりのキスだ。ああ、これで、やっとしてもらえる。そう思ったのも束の間、私は大事なことを忘れていた。
「待って……私もシャワー浴びたい」
 最終確認をしたばかりなのに、いきなり中断を申し入れることになってしまった。自分から言ったんだし、シャワーを浴びるのがマナーだよね。
「いいよ、このままで」
 聞き入れられなかった。涼が唇を近づけてこようとしたところで、私はもうひとつ思い出した。さらに大事なことを。
「ま、待って」
 二度目の中断に涼が苦く笑う。
「今度は何」
 嫌なわけではないのに、これでは誤解されてしまう。ものすごく緊張しているせいで、あとから大事なことを思い出す。
「私、用意してない」
「何を?」
「コ、コ、コ……っ」 
 言い出せなくてニワトリみたいになっていたら、涼が察してくれた。
「ああ、心配しなくていいよ」
 もう中断させないと言わんばかりに、唇を塞がれた。一枚ずつ服が脱がされていく。今日に限っていつも以上の重ね着をしてきてしまった。
「何枚着てんの」
 ワンピースとその下のトップスを脱がせてもまだ着ているから、案の定、涼が笑みを浮かべながら言った。
「だって寒いから」
 今朝は気温が氷点下で、昼間もほとんど上がらないらしいから、たくさん着込んできた。玄関で脱いで掛けてきたコートを除くと、ブラジャー以外に三枚着ている。あとはインナーだけだ。
「だよな。次からは迎えにいく」
「疲れてるのに悪いよ」
「遠慮するな。脱がせるの大変だし」
 そっちか。
「やっとご対面」
 インナーを脱がされ、ブラジャーだけになった。後ろのホックを一瞬で外され、胸があらわになる。
「あっ……」
 揉むのと吸い付くのを同時にされてたまらない。涼が私の素肌に触れている。その光景を見るだけでのぼせそうだ。
 先端を口に含まれ、舌で転がされる。やっぱり、それをされると下も反応してしまう。気づかれたくなくて、無意識に力を入れて左右の脚を合わせていた。
 下腹部へ涼の手が伸びて、いつものようにパンツの中に手が入った。敏感な部分に触れながら涼が訊ねる。
「本当にいいのか?」
 しっかりと頷くと、そのまま邪魔なものをするすると下ろして、脚から抜き去られた。
「やっ……」
 膝を立てられて開かされ、涼が間に顔を埋める。慌てて隠そうとした手は彼によって退けられてしまった。
「見せて」
 私は思わず顔を背けた。恥ずかしくて、涼がそこに顔を埋めている様を見ていられない。それでもわかってしまった。合わさったところを指で広げて見ているのが。誰も受け入れたことがない、見られたこともない、これから涼だけのものになる場所を、まるで診察するかのようにじっくりと。
「やだっ……恥ずかし……」
 繋がるだけでも恥ずかしいのに、こんなふうに見られるなんて。見つめられて、そこが反応してしまっているのが自分でわかる。恥ずかしすぎて耐えられない。そう思った瞬間、熱い舌に舐め上げられた。
「あっ……!」
 熱くて、柔らかくて、動きが繊細で、指でされたときよりもさらに気持ちいい。おかしくなりそう。
「やぁ……」
 涼が特に舐めてるのが、これから繋がるところ。そこだけ執拗にしてるからわかる。優しい動きでほぐしてくれている。私が初めてだからだろう。でもそこ、あんまりされると欲しくてたまらなくなっちゃう。
「ひゃっ!」
 舐められてる場所が変わった。他のところとは全然違った鋭い刺激が私を襲う。クリスマス・イブから数度、指で触れられてたところだ。そこを触られると、私はいつもおかしくなってしまう。
「そこ……ダメ……」
 手を伸ばすも、涼が舐めていて届かない。脚を閉じようしても叶わない。その間にも柔らかい舌は小刻みに動き、容赦なく私に刺激を与えつづけた。
「ダメ……ダメ!……あっ……んんっ!」
 もう、限界。全身がビリビリして、何も考えられなくなった。あっという間に絶頂を迎えた。
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