ドクターダーリン【完結】

桃華れい

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第1部

フェーズ5-2

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 大晦日は家で家族と過ごし、元日の午前中に涼に迎えにきてもらった。運が悪いと大晦日から元日にかけて当直の場合もあるらしい。今年は休みが取れたようでよかった。おかげで新年早々、顔を合わせることができた。
 一緒に近所の神社へ初詣に行った。たくさんの参拝客とすれ違いながら大きな鳥居をくぐり、拝殿で並んで手を合わせた。
「初詣なんて久しぶりだ」
 帰りの参道を歩きながら涼が言った。
「そうなの? 毎年忙しくて?」
「それもあるけど、わざわざ一人では行かないから」
 一人なんだ。前に涼が言ってた、私が久しぶりというのは案外本当かもしれない。それか、相手と休みが合わなかったのか。麗子さんも正月は忙しそうだし。
 直近の恋人が麗子さんだとは思っていない。在学中にだけ付き合っていたのなら、そのあとに五年はあいている。次はどんな人と付き合ったんだろう。一番最近は、いつからいつまで付き合ってたんだろう。
 やめよう。涼の過去をあれこれ想像して、元日から暗い気持ちになるのは。せっかく一緒に初詣にこられたのだから。
「お願い事、何てしたの?」
 気持ちを切り替えて、涼に質問してみた。
「彩と早く身も心も結ばれますように」
「なっ……」
 神様になんてことをお願いしてるの。
「っていうのは冗談で、夫婦円満」
 涼が私を見て微笑んだ。私とのことを願ってくれたのがうれしくて、私は自分から腕を組んだ。今年は夫婦になるんだね。まだ実感はない。ないけど、私も同じようなことをお願いしたの。涼とずっとずっと一緒にいられますようにと。

 母がおせちを詰めて持たせてくれていた。マンションに戻って一緒に食べて、一息ついたところで私はまたソファに押し倒された。
 また触られて、弄られている。元日のそれも真昼間から、なんて破廉恥な。
「クリスマスプレゼントじゃ、なかったの?」
「触ってほしいって、彩の顔に書いてある」
 まったく期待していなかったと言ったら嘘になる。キスだけではもう物足りない。でも、私そんなに物欲しそうな顔してたのかな。
「あっ……」
 ぬるぬるになった入口に涼が指を当てて、わずかに力を入れた。
「入りそう」
 ほんの少し、指先がそこを押し広げる。それだけでも気持ちよくて、私の欲望が目覚めさせられそうになる。
「でも、ここに最初に入るのは指じゃないよな」
「もう……」
 拗ねてるのは涼に弄ばれてることに対してではなくて、またお預けにされたことに対してだ。私、本当はもうしたくなってる。したいけど、そんなこと恥ずかしくて自分からは言えない。それに卒業までまだ二カ月ある。あと二カ月も。我慢できるかな。とりあえず今日も指でされただけて満足してしまった。


 高校生活最後の三学期が始まった。学校で久しぶりに愛音と顔を合わせた。
 朝のホームルームが始まる前に、席でお互いの冬休みの報告会をする。愛音は年越しを彼氏と神社を参拝しながら迎えたらしい。お泊まりは親に許されてないため、初詣のあとは彼氏に送ってもらって家に帰ったと、不服そうに語った。
「彩はどうだった? クリスマスとお正月、進展あった?」
「愛音が期待してるようなことは、ないよ」
 本当は少し進展があったけど、言えない。大丈夫、嘘はついていない。私はまだ処女でパンツも脱がされていない。
「なーんだ」
 愛音はあからさまにがっかりした。
「両家で食事会ならしたよ」
「顔合わせってやつ? いよいよって感じだね」
 三が日の最終日に、両家の顔合わせをした。もともとは、入籍直前か入籍後に顔合わせをする予定だった。私が高校を卒業してからのほうがいいだろうと、涼が考えたからだ。それを私の両親に伝えたところ、やっぱり先に顔を合わせておくのがセオリーだし、早めに先方にご挨拶しておきたいと希望したため、前倒しすることになった。
 顔合わせの前、十二月初めに私は初めて涼の実家へ連れていってもらった。優しそうなご両親で、お二人とも高校生の私を温かく迎えてくれた。その際に都合のいい日時をうかがい、私の両親も合わせてくれて、正月の顔合わせが実現した。ただ一人、兵庫県の病院に勤務しているらしい涼のお兄さんだけは、都合が合わなくて不参加だった。
「でもさ、先生とまだしてないんでしょ?」
 私は頷いた。
「両家の顔合わせをしたからにはもうあと戻りできない感じだけど、もしあっちの相性が悪かったら、先生どうするつもりなんだろうね」
 もしかして、涼はそれを考えて入籍後に顔合わせをしようとしてたのかな。重要なことだろうからあり得る。
「やっぱり大事だよね」
「そりゃそうでしょ。新婚早々、レスなんてことになったら最悪だよ?」
 どうなんだろう。涼は気にしていないように見える。もしかして、実際に肌を合わせなくても、フィーリングや今までの経験などでなんとなくわかるものなのか。
「そういえば、前にお泊まりして一緒に寝たときに、『すごく相性よさそう』って言ってたけど」
「やらしー」
 愛音が眉間にシワを寄せて笑った。
 相性がいいとか悪いとか、私にはよくわからない。もし本当に悪かったらどうするつもりなんだろう。ちょっと怖い。
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