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第1部
フェーズ4-4
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もうすぐクリスマスだ。毎年わくわくする時期ではあるけれど、今年はひとしおだ。だって今年は、生まれて初めての恋人がいるクリスマスだから。
私は愛音と一緒に繁華街に出かけ、お気に入りの雑貨店に入った。クリスマスのデコレーションが施され、ジングルベルが流れる店内は混雑している。カップル客も多く目につく。お互いにプレゼントを選び合っているのかもしれない。愛音も彼氏へのクリスマスプレゼントを探すようだ。私も涼に何かプレゼントしたいな。高いものは買えないけれど、ちょっとしたもので何かないだろうか。
「イブはさすがに何かあるでしょ~」
商品棚に並ぶペアのマグカップを見ながら愛音が言った。
「そうかな。普段と変わらないと思うよ」
婚約はしていても私と涼がまだプラトニックであることを知っている愛音は、クリスマス・イブに何かあると睨んでいるようだった。私自身はそんな予感は特になくて、イブを涼と過ごせることが単純にうれしくて仕方がない。彼氏がいるクリスマスとはどんな気分なんだろう、とずっと憧れてきた。
イブが土曜日だったならお泊まりして、それならさすがに何かあるかもと思うかもしれない。でも今年のイブは日曜日だ。夜はいつものようにご飯を作って一緒に食べるだけ。それで十分幸せだ。何を作ろうかなと、考えるだけで楽しい。
「彩も先生に何かあげる? あ、下着屋さんのほうがいいか? あとで行く?」
「行きません」
期待しすぎだ。それに下着ならプレゼントではなく自分用だろう。買わないけど。
「愛音はあれから彼とケンカしてない?」
「うん、順調。あれから今まで以上に優しくなった気がするんだよね」
夏に二人がケンカすることになったAV事件のことだ。あのあと仲直りはしたものの、愛音はしばらく彼に触れさせなかったらしい。彼女が今、バスグッズコーナーでスイーツのようにかわいらしい形をしたバスボムを手に取っているところを見ると、もう完全に仲直りしたのだろう。
「彩もこういうの買う? 一緒にお風呂入る口実になるよ」
「買いません」
呆れて返した。どうしてもそういう方向に持っていきたいらしい。私は他の売り場を見てこよう。
「絶対に何かあると思うんだけどなあ」
商品を眺めたまま愛音がぼそりと呟いた。そう何度も言われると、さすがに少し意識してしまう。いや、ない。きっとない。卒業まであと三カ月近くもあるのだ。
クリスマスグッズの売り場で、もみの木の形をしたおしゃれなキャンドルに惹かれた。クリスマスツリーやオーナメントだと、クリスマスが終わったあとの収納場所に悩む。涼の部屋は余計な物がなくてすっきりしているから、季節イベントでしか出番のない物を贈るのは気が引ける。キャンドルなら使ってしまえば役目は終わりだからいいかもしれない。リビングのテーブルに置いてみよう。
来年のクリスマスにはもう涼と私は結婚していて、夫婦として過ごすんだ。ということは、恋人同士としてのクリスマスは今年が最初で最後ということだ。なんだか、ちょっと寂しいな。夫婦でのクリスマスは、それはそれでいい。でも、恋人同士でのクリスマスの思い出も何か欲しいかも。思考が愛音寄りになってきた。いや、ない。だからないんだってば。きれいな下着やバスボムがなくても、楽しい時間は過ごせるはず。そう、大事なのは気持ちなのだ。恋人同士としてのクリスマスを、かみしめながら一日大事に過ごそう。
私は愛音と一緒に繁華街に出かけ、お気に入りの雑貨店に入った。クリスマスのデコレーションが施され、ジングルベルが流れる店内は混雑している。カップル客も多く目につく。お互いにプレゼントを選び合っているのかもしれない。愛音も彼氏へのクリスマスプレゼントを探すようだ。私も涼に何かプレゼントしたいな。高いものは買えないけれど、ちょっとしたもので何かないだろうか。
「イブはさすがに何かあるでしょ~」
商品棚に並ぶペアのマグカップを見ながら愛音が言った。
「そうかな。普段と変わらないと思うよ」
婚約はしていても私と涼がまだプラトニックであることを知っている愛音は、クリスマス・イブに何かあると睨んでいるようだった。私自身はそんな予感は特になくて、イブを涼と過ごせることが単純にうれしくて仕方がない。彼氏がいるクリスマスとはどんな気分なんだろう、とずっと憧れてきた。
イブが土曜日だったならお泊まりして、それならさすがに何かあるかもと思うかもしれない。でも今年のイブは日曜日だ。夜はいつものようにご飯を作って一緒に食べるだけ。それで十分幸せだ。何を作ろうかなと、考えるだけで楽しい。
「彩も先生に何かあげる? あ、下着屋さんのほうがいいか? あとで行く?」
「行きません」
期待しすぎだ。それに下着ならプレゼントではなく自分用だろう。買わないけど。
「愛音はあれから彼とケンカしてない?」
「うん、順調。あれから今まで以上に優しくなった気がするんだよね」
夏に二人がケンカすることになったAV事件のことだ。あのあと仲直りはしたものの、愛音はしばらく彼に触れさせなかったらしい。彼女が今、バスグッズコーナーでスイーツのようにかわいらしい形をしたバスボムを手に取っているところを見ると、もう完全に仲直りしたのだろう。
「彩もこういうの買う? 一緒にお風呂入る口実になるよ」
「買いません」
呆れて返した。どうしてもそういう方向に持っていきたいらしい。私は他の売り場を見てこよう。
「絶対に何かあると思うんだけどなあ」
商品を眺めたまま愛音がぼそりと呟いた。そう何度も言われると、さすがに少し意識してしまう。いや、ない。きっとない。卒業まであと三カ月近くもあるのだ。
クリスマスグッズの売り場で、もみの木の形をしたおしゃれなキャンドルに惹かれた。クリスマスツリーやオーナメントだと、クリスマスが終わったあとの収納場所に悩む。涼の部屋は余計な物がなくてすっきりしているから、季節イベントでしか出番のない物を贈るのは気が引ける。キャンドルなら使ってしまえば役目は終わりだからいいかもしれない。リビングのテーブルに置いてみよう。
来年のクリスマスにはもう涼と私は結婚していて、夫婦として過ごすんだ。ということは、恋人同士としてのクリスマスは今年が最初で最後ということだ。なんだか、ちょっと寂しいな。夫婦でのクリスマスは、それはそれでいい。でも、恋人同士でのクリスマスの思い出も何か欲しいかも。思考が愛音寄りになってきた。いや、ない。だからないんだってば。きれいな下着やバスボムがなくても、楽しい時間は過ごせるはず。そう、大事なのは気持ちなのだ。恋人同士としてのクリスマスを、かみしめながら一日大事に過ごそう。
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