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第5話 おもちゃ売り場ブルース~DJ店員の生まれた日~
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本日の舞台はターボモール札樽札幌館3階、ターボマートおもちゃ売り場。
今日は平日金曜日、時刻はおもちゃ売り場オープン1時間前の朝8時。しかし平日とはいえこの売り場のスタッフたちはいつになくバタバタしている。
なぜなら今日は…
「わっ!売り場オープン1時間前なのにもう50人ぐらい並んでるよ~!そりゃ品薄だもんな…うちの息子も欲しがってるし…
あっ!申し遅れました!私はおもちゃ売り場担当・パートで主婦の田中、29歳です!
今日は”トレミーゲームカード”の最新弾発売日です!トレミーゲームは今幅広い世代に大人気のアニメなのですが、いまは特にそのカードゲームが大人気で品薄が続いてるので発売日には開店前から行列ができるという現象が各地で相次いでいるんです…それでお客さんには1階に設けた整列場所に並んでもらって、私は誘導や呼びかけを担当しているんですけど…」
「田中さん、私は前のほうの警備と人数の計測をするからあなたは最後尾を引き続きお願い!」
「わかりましたリーダー!…こちら最後尾となっております!トレミーゲームカードをお求めの方はこちらにお並びください!なお本日はお一人様5パックまでとなっております!」
「…え~私は今札幌と小樽にまたがるターボモール札樽に来ております!おもちゃ売り場の開店一時間前なのですが、20~30代ぐらいの方や、子供のために買いに来た親御さんを中心にすでにこれだけのお客さんが並ばれております!」
「えっ!?TVの取材も来てるの!?すごいなトレミーゲーム…」
リポーター「まずは先頭の方に聞いてみましょう。本日は何時ぐらいから並ばれていたのでしょうか?」
「夜中の12時から店の前で徹夜で…」
田中「て、徹夜組!?従業員入り口から入ったから店の入口は見てないけど、リーダーは何人か店の前で待ってる方がいるって言ってたっけ…」
そうこうしているうちにあっという間に販売開始30分前…まだまだひっきりなしにお客さんが次々と並んでいきます…この30分ほどでヘタすりゃ倍以上になってるかも…
リーダー「田中さん…今人数を計測したけどこのペースでもっとお客さんが増えていけばもしかしたら全員に商品が行き届かない可能性が出てきたわ…5パックの予定だったけどひとり3パックに変更するわ!あなたはそのことをお客さんに伝えて!私も今無線で上で待機してるスタッフに知らせるから…」
「はい!了解しました!…本日、大変多くのお客様にお並びいただいているため、少しでも多くのお客様に商品を提供させていただくために購入制限を誠に勝手ながら3パックに変更させていただきます!落ち着いてお並びいただきますようお願いいたします!」
それから時が流れて開店10分前…行列はついに店の外にまで伸びていきました…
しかもこの日は例年より寒いうえにあいにくの雨…私も悪天候の中頑張っています!
あまりの人数に、上で待機していたスタッフの一部も応援に駆け付けました!
そしてリーダーから無線で連絡が…
「田中さん、この状況じゃ確実にすべてのお客様には行き届かないわね…それでいま連絡があったけど、小樽館3階の古本屋「ブックワーク」でもカードを扱っていて、そこでは10時から売るそうよ!あなたはそのことを伝えて!」
「了解しました!…本日はお足元の悪い中、大変たくさんのお客様にお並びいただいております!残念ながらお並びいただいても商品をお買い求めいただけない場合があります!カードは小樽館3階の「ブックワーク」でも午前10時から販売します!お買い求めいただけなかった場合はそちらにお並びいただきますようお願いします!」
その直後、またリーダーから無線が…
「田中さん、いまブックワークのスタッフと相談したんだけど、多くのお客様に商品を行き届かせるために、おもちゃ売り場で購入したお客さんには手にライトで確認するスタンプを押して、ブックワークで購入のお客さんにはそのスタンプがないことを確認してから売ることになったわ!そのことを伝えて!」
「わ、わかりました!…本日、おもちゃ売り場でトレミーゲームカードをご購入のお客様は、ブックワークでトレミーゲームカードをご購入できません!おもちゃ売り場でカードをご購入のお客様にはまことに勝手ながら手にスタンプを押させていただきます!ブックワークでカードをご購入の際にはそのスタンプがないことを確認させていただきます!多くのお客様に商品をご購入いただくためにご理解とご協力をよろしくお願いします!」
客「ふたつの店で買えねーのかよ!」「せっかくハシゴできるからここ来たのに…」「そりゃねーぜねーちゃん!」
田中「ああ…怒号が…このままじゃお客さんが暴走しかねない…こうなったら!
…皆さんはトレミープレイヤーでしょ!?なら正々堂々ならんでください!正義を貫くものこそ真のトレミープレイヤーでしょ!?」
「そ、それはトレミーゲームのリュウセイの名言!…ねえちゃん、オレらが間違ってた…」「ごめんなさい…」
田中「なんとか収めたわ!息子と一緒に観てるからトレミーゲームは学習済みよ!」
その後、売り場は開店時間を迎え、大きな混乱はなくおもちゃ売り場の販売分は1時間弱で完売。
ブックワークの販売分も混乱なく完売した…
そして田中の今回の行動は動画としてSNS上にアップされた後2日で800万回以上再生され、ニュースや地元の新聞にも取り上げられ、一躍彼女は”DJ店員”として時の人となるのだがそれはまた別の話…
今日は平日金曜日、時刻はおもちゃ売り場オープン1時間前の朝8時。しかし平日とはいえこの売り場のスタッフたちはいつになくバタバタしている。
なぜなら今日は…
「わっ!売り場オープン1時間前なのにもう50人ぐらい並んでるよ~!そりゃ品薄だもんな…うちの息子も欲しがってるし…
あっ!申し遅れました!私はおもちゃ売り場担当・パートで主婦の田中、29歳です!
今日は”トレミーゲームカード”の最新弾発売日です!トレミーゲームは今幅広い世代に大人気のアニメなのですが、いまは特にそのカードゲームが大人気で品薄が続いてるので発売日には開店前から行列ができるという現象が各地で相次いでいるんです…それでお客さんには1階に設けた整列場所に並んでもらって、私は誘導や呼びかけを担当しているんですけど…」
「田中さん、私は前のほうの警備と人数の計測をするからあなたは最後尾を引き続きお願い!」
「わかりましたリーダー!…こちら最後尾となっております!トレミーゲームカードをお求めの方はこちらにお並びください!なお本日はお一人様5パックまでとなっております!」
「…え~私は今札幌と小樽にまたがるターボモール札樽に来ております!おもちゃ売り場の開店一時間前なのですが、20~30代ぐらいの方や、子供のために買いに来た親御さんを中心にすでにこれだけのお客さんが並ばれております!」
「えっ!?TVの取材も来てるの!?すごいなトレミーゲーム…」
リポーター「まずは先頭の方に聞いてみましょう。本日は何時ぐらいから並ばれていたのでしょうか?」
「夜中の12時から店の前で徹夜で…」
田中「て、徹夜組!?従業員入り口から入ったから店の入口は見てないけど、リーダーは何人か店の前で待ってる方がいるって言ってたっけ…」
そうこうしているうちにあっという間に販売開始30分前…まだまだひっきりなしにお客さんが次々と並んでいきます…この30分ほどでヘタすりゃ倍以上になってるかも…
リーダー「田中さん…今人数を計測したけどこのペースでもっとお客さんが増えていけばもしかしたら全員に商品が行き届かない可能性が出てきたわ…5パックの予定だったけどひとり3パックに変更するわ!あなたはそのことをお客さんに伝えて!私も今無線で上で待機してるスタッフに知らせるから…」
「はい!了解しました!…本日、大変多くのお客様にお並びいただいているため、少しでも多くのお客様に商品を提供させていただくために購入制限を誠に勝手ながら3パックに変更させていただきます!落ち着いてお並びいただきますようお願いいたします!」
それから時が流れて開店10分前…行列はついに店の外にまで伸びていきました…
しかもこの日は例年より寒いうえにあいにくの雨…私も悪天候の中頑張っています!
あまりの人数に、上で待機していたスタッフの一部も応援に駆け付けました!
そしてリーダーから無線で連絡が…
「田中さん、この状況じゃ確実にすべてのお客様には行き届かないわね…それでいま連絡があったけど、小樽館3階の古本屋「ブックワーク」でもカードを扱っていて、そこでは10時から売るそうよ!あなたはそのことを伝えて!」
「了解しました!…本日はお足元の悪い中、大変たくさんのお客様にお並びいただいております!残念ながらお並びいただいても商品をお買い求めいただけない場合があります!カードは小樽館3階の「ブックワーク」でも午前10時から販売します!お買い求めいただけなかった場合はそちらにお並びいただきますようお願いします!」
その直後、またリーダーから無線が…
「田中さん、いまブックワークのスタッフと相談したんだけど、多くのお客様に商品を行き届かせるために、おもちゃ売り場で購入したお客さんには手にライトで確認するスタンプを押して、ブックワークで購入のお客さんにはそのスタンプがないことを確認してから売ることになったわ!そのことを伝えて!」
「わ、わかりました!…本日、おもちゃ売り場でトレミーゲームカードをご購入のお客様は、ブックワークでトレミーゲームカードをご購入できません!おもちゃ売り場でカードをご購入のお客様にはまことに勝手ながら手にスタンプを押させていただきます!ブックワークでカードをご購入の際にはそのスタンプがないことを確認させていただきます!多くのお客様に商品をご購入いただくためにご理解とご協力をよろしくお願いします!」
客「ふたつの店で買えねーのかよ!」「せっかくハシゴできるからここ来たのに…」「そりゃねーぜねーちゃん!」
田中「ああ…怒号が…このままじゃお客さんが暴走しかねない…こうなったら!
…皆さんはトレミープレイヤーでしょ!?なら正々堂々ならんでください!正義を貫くものこそ真のトレミープレイヤーでしょ!?」
「そ、それはトレミーゲームのリュウセイの名言!…ねえちゃん、オレらが間違ってた…」「ごめんなさい…」
田中「なんとか収めたわ!息子と一緒に観てるからトレミーゲームは学習済みよ!」
その後、売り場は開店時間を迎え、大きな混乱はなくおもちゃ売り場の販売分は1時間弱で完売。
ブックワークの販売分も混乱なく完売した…
そして田中の今回の行動は動画としてSNS上にアップされた後2日で800万回以上再生され、ニュースや地元の新聞にも取り上げられ、一躍彼女は”DJ店員”として時の人となるのだがそれはまた別の話…
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