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第七話 思い出の店で一句

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こんにちは!きごねです!
今日はいよいよ北海道から帰る日。空港に行く前にお父さんとお母さんの思い出の場所だというジンギスカン屋さん”ラム魂”でおじいちゃんおばあちゃんも一緒にみんなでお昼ごはんです!
それにしても思い出って…

お母さん「店の中もあのころと変わらない…懐かしいわ…きごねちゃん、実はこのお店ね、お母さんとお父さんが結婚するきっかけになった場所なのよ!」
「えっ!?本当!」
お父さん「そう、あれはお父さんとお母さんがお互い大学2年生の時…お父さんはバイト仲間からこの店のペアお食事券をもらったんだ。最初は友達と行く予定だったんだけどその友達が行けなくなっちゃって…店に行けぬまま月日が流れ、券の期限ももうすぐ切れるってタイミングで僕は同じ学科の女の子を誘うことにしたんだ。」
きごね「その女の子って…」
お母さん「そう、お母さんよ!あの時はお互い数えるほどしか話したことなくて、最初誘われたときはびっくりしたわ!
でも、この店で一緒にお食事して、お母さんはお父さんの謙虚で優しいところにひかれたの。
わたしの口を拭いてくれたり、食べすぎで胃をを痛めてしまった時に胃薬をくれたりね。
でもお母さん、その日帰り道で財布を落としてしまったの。冬の寒い中、しかも胃の調子が悪いという状況でお父さんは”財布は僕が探しておきますからあなたは先に帰って大丈夫ですよ。”ってお母さんに帰りの交通費を貸してくれ
て、財布を探してくれたの。」

お父さん「それからお父さんは雪の降りしきる中お母さんの財布を探し回った。寒空の中終電の時間が過ぎた後もずっと…気づけば暗かった空が明るくなっていた…」
お母さん「そして翌朝、お母さんが住んでいたアパートにお父さんが来たの。お母さんの財布をもってね。」
お父さん「これがきっかけで僕たちは付き合い始めたんだ。
それ以降も2人で何度もこの店に足を運んだ…大学を卒業して以降も僕たちは何度もこの店を訪れた…
そして月日は流れ、お互い26歳の時。僕はこの店でお母さんについに言ったんだ…」

若きお父さん「”この店で初めて2人で食事してからもう6年がたったね。僕たちそろそろカップルから次のステップに進まないか?」
若きお母さん「次のステップ?」
そして若き日の父は指輪を差し出し…
「僕と結婚してください!」
若きお母さん「…!はい!」
その瞬間、他のお客さんやスタッフからは惜しみない拍手が送られ、店は暖かい雰囲気に包まれた。
店員「おめでとうございます!若い2人の未来に幸あれ!」

時は再び現代…
きごね「そんなストーリーがあったの~!?まるでドラマみたーい!あこがれちゃう~!」
お母さん「も~大声でやめてよ恥ずかしい~」
おじいちゃん「そういってさっきまでノリノリで話してたじゃんか!」
お母さん「こりゃ失礼!」

「お待たせしました!ファミリーセットです!
…おや、あなた達ははもしかしてあの時の!」
お父さん「あっ!もしかしてあの日僕たちを祝ってくれた店員さんですか」
「どうも!その通りです!今はここの店長やってます!」
お母さん「店長さん!出世しましたねー!」
「いやーお2人こそこんな立派なお子さん授かって!」
きごね「どうも2人の娘の松尾きごねです!さっきお母さんたちから聞きましたよ!この店での思い出!」
「おー!あの時の話聞いたのか!あの後お父さんは”もし子供ができたら絶対この店に一緒に食べに行こう”って言ってたからな!念願かなって…てわけか!」
きごね「そんなことも言ってたの?」

そして思い出のジンギスカンを食す時間…
きごね「ここのお肉臭みがなくておいしい~!」
お母さん「あのころと変わらないわ!」
お父さん「こうして家族で食べれて幸せだ~!」
おばあちゃん「私もおいしすぎて寿命が300年のびたわ~!」
おじいちゃん「みんなしてオーバーリアクションじゃの…肉はうまいけどな。」

きごね「ではここで一句!
”若夫婦 時越え新芽と またこの地”
…おっとお母さんたちのストーリーにうっとりしてたら字余りしてしまったわ!」
店長「おっ!新芽ってきごねちゃんのことだね!
あの時の若き夫婦が後に生まれた新たな命とともに再び思い出のこの店に戻ってきたって意味だな!」
「ご名答です!」

そして店を出るとき、私は店長さんから何かが入った封筒を渡されました…
帰りの飛行機の中で中を開封しました。
お母さん「きごね、何が入ってた?」
きごね「えーと…ペアお食事券?」
そしてそのお食事券にはこんな文章が書かれてました。

ペアお食事券 松尾きごね様と将来その隣にいる大切な人様
有効期限 成人されたきごね様に大切な人ができた日からその人とともに家庭を築くと決めた日まで(期間中何度でも使用可能) 
松尾きごね様、将来あなたが大人になられ、大切な人ができたらその人と一緒にこの券をもってお店に来てください。
2人前カップルセットをサービスします。
あなたが大切な人とともに人生を歩むと決めるその日まで、スタッフ一同、お2人にサービスいたします。
ラム魂店長

私にともに人生を歩みたい大切な人ができるのがいつになるのかはわからない、大人になってもすぐにできるかはわからないけど、その日までこの券大切にとっておきたいと思います。
こうして松尾家の3年ぶりの帰省は幕を閉じたのでした。



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