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第23話 つぼみちゃんの初めての父の日です

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時は少しさかのぼってつぼみがアフレコの稽古をしていたころ…
「ラク子さん、もうすぐ父の日だからつぼみお父さんに初めてプレゼントしようと思うんだけれど…どんなものがいいと思う?どんなものをプレゼントすれば喜んでくれるかな?お父さんも大人だから高いものじゃないと喜んでくれないかな…つぼみお小遣いそんな持ってないし…」
「そうね…私のお父さんはお酒や甘いものが好きだから今は毎年お酒や有名なお店のチョコレートを送ってるけど…私がつぼみちゃんと同じぐらいの頃は似顔絵とかお母さんと一緒に作ったクッキーとか、もう少し大きくなってお小遣いをもらうようになってからは自分でお菓子とか仕事で使うものとかを買ってプレゼントしていたわ。でも、似顔絵でも、手作りのお菓子でも、どんなものでもお父さんは喜んでくれた…プレゼントに大事なのはお金じゃなくてその人を思う心だと思うの。つぼみちゃんのお父さんへの感謝の気持ち…それさえこもっていればどんなものでもきっと喜んでくれると思うわ…」
ダイゴ「父の日か…オレもプレゼントしないと…そういえばケイコさん、つぼみちゃんって父の日初めてですか?」
「そうね…前の夫とは物心つく前に別れてたから父の日にプレゼントしたことなかったからね。今まで幼稚園や事務所の友達が父の日のプレゼントの話をしていた時にうらやましがってたから今回は張り切ってるみたいね。」
ダイゴ「そうか…つぼみちゃん!今年はオレとつぼみちゃんとケイコさん、3人で親父にサプライズでプレゼントだ~!」
つぼみ「よ~し!がんばるぞ~!」

それから数日後…
ダイゴ「ただいま~!…おや?つぼみちゃん何か描いてる?ずいぶん大きな紙に…」
「つぼみ特製のメッセージカード!これにお父さんの似顔絵を描いて折り紙で飾りつけしようと思って!」
「おっ!いいじゃないか!ちなみにオレの親父へのプレゼントはこないだ買ってきた…このおつまみ缶詰セットだ~!家飲みのお供にぴったりな酒好きの親父にはぴったりなプレゼントだろ!?」
つぼみ「すご~い!お父さんきっと喜ぶね!」
ケイコ「お母さんはビールのセットをプレゼントするわ!喜んでくれるといいわ…」
「お母さんもすごい~!…すごいけど…」
ダイゴ「どうしたつぼみちゃん、急にしょんぼりして…」
「お兄ちゃんもお母さんもすごいプレゼントを用意していて…お父さんも大人だからつぼみの似顔絵で喜んでくれるかやっぱり心配になっちゃって…」
ダイゴ「何言ってんだ!ラク子さんも言ってただろ!?プレゼントはその人を思うことが一番大事だって!そのメッセージカードにはつぼみちゃんの親父への思いがしっかりつまっているのが見て取れるぞ!だがら親父は絶対よろこんでくれる!なにしろつぼみちゃんからの初めての父の日のプレゼントだからな!」
ケイコ「そうよ、感謝の気持ちこそが何よりのプレゼントなんだから!」
「感謝の気持ち…うん!つぼみ頑張る!」

そして父の日当日の朝…
ダイゴ「今日は父の日!親父!」
つぼみ「お父さん!」
ケイコ「コテツさん!」
3人「いつもありがとう!」
コテツ「おっ!なんだ急に!…そっか、今日は父の日か…」
ダイゴ「まずはオレから!いつもありがとう!」
「缶詰のセットか!今まではスーパーのおつまみ売り場のおつまみとかだったのに…ダイゴ、お前もお兄ちゃんになって心がデカくなったな…!」
「なんだよ今までは心がこもってなかったみたいな言い方!今までも今もしっかり心はこもってますから!」
「冗談だよ冗談!どんなプレゼントでもオレのために用意してくれたってだけで嬉しかったよ!」
つぼみ(やっぱり心がこもっていればなんでもうれしいんだ…!)
ケイコ「私からはビールのセットよ!いつもお仕事お疲れ様!」
「おっこっちもうれしいね~!よし!今夜はこのビールとダイゴの缶詰で一杯行くか!」
つぼみ「最後はつぼみから…はい!」
つぼみは折りたたんだ状態のメッセージカードを渡した。
「なんだこれは?」
「開いてみて!」
「どれどれ…!」
つぼみのメッセージカード、そこには大きな父の似顔絵と「おとうさんいつもありがとう」の文字、周りには折り紙で作った焼き鳥やビールなどのコテツの好きなものなどの飾り付けが髪一杯に施されていた。
「つぼみ…こんなに立派なものをオレのために…ありがとう~!」
コテツは嬉しさのあまり涙を流しながらつぼみに抱き着いた。
「や、やめてよお父さん、苦しい…でも大成功!」
ダイゴ「つぼみちゃん、それ親父のために一生懸命作ったんだぜ!」
ケイコ「初めての父の日だからって張り切ってたのよ!」
「そうだったのか…!本当にありがとう!」

ダイゴたちの、そしてつぼみのサプライズは大成功。その夜コテツはダイゴの缶詰をつまみにつぼみのメッセージカードを眺めながらケイコのビールで晩酌。つぼみの描いた似顔絵を眺めながら嬉しさの余韻に浸っていた。
父の日が終わった後もつぼみのメッセージカードはコテツの書斎の壁に貼られている。仕事でつらい時や大変な時もこれを見れば乗り越えられるという。
コテツにとって忘れられない父の日となった。
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