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第22話 ダイゴお兄ちゃんだって大変です。窓口として。

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兄・石嶺ダイゴ、彼はただ妹のつぼみをめでているだけじゃない。しっかり兄貴としての責務を全うしている。
そして忘れてはないだろうか。一般人とはいえ彼は芸能人の兄。兄姉は何かと大変なことを背負わされるのが宿命だがスーパースターの兄貴には他の兄姉にはない忙しさがある。
今回は彼の学校での「スーパースター・矢澤つぼみの兄」としての責務と苦悩をご覧いただこう。

「すいませ~ん!ダイゴくん!」
石嶺ダイゴのもとを訪ねてきたのは隣のクラスの女子。
「つぼみちゃんのサインお願いできる?おばあちゃんが欲しいんだって!」
「OK!転売防止のためこの契約書におばあちゃんの名前を書いてくれ!」
「すいませ~ん!僕もお願いします!」「オレは写真撮影を!いつ空いてる?」「私のおじいちゃんと一緒に写真とサインお願い!誕生日プレゼントにしたいの!」
「はいはい!順番に並んで!」
学校における兄としてのダイゴの仕事…それはつぼみのサインや写真撮影に関する窓口受付業務。
ダイゴの妹がつぼみであるという事実を2年生のみならず学校中が知ることとなった現在、彼のもとにはつぼみとの写真撮影やサインをお願いする者が後を絶たない。つぼみはサインも写真もOKだが、事務所の方針として「転売防止のためサインには送り先の氏名・店名を書くこと」「一般人がタレントと撮った写真のSNSへのアップ禁止」のルールが定められている。しっかりそのルールを守ってもらうため、そして希望するすべての人へサインと撮影の機会をきちんと与えるため、兄が窓口としての役割を果たしているのだ。
ちなみに生徒・先生一同は家族や親戚等にダイゴがつぼみの兄であることを話しても、ネットとかに晒したりはしてないのでご安心を。

一方最近はこんな人も現れてきた…
「ダイゴ~!つぼみのことでお願いがあるんだが!」
「なんだ?またサインか?こないだ親戚一同の分やったばっかじゃねーか…」
「つぼみのサインじゃなくてえ○このサインだよ!今度番組で共演するんだろ?」
「…でもサインOKか本人に確認しないとわかんね~からな…一応聞いてみるがもしダメでもノークレームな…」
…つぼみではなくその共演者のサインをお願いしたいという申し出だ。当然、タレントによってサインOKな人とそうでない人がいるのでもしダメでもクレームは受け付けない。その約束のもとダイゴはこれを受託する。
日によってはつぼみのサインよりも共演者のサインの申し出のほうが上回る日も少なくない。

更にはこんな人まで現れる始末…
「すみませ~ん、つぼみちゃんがCMに出てるヨーグルトくれませんか?最近品薄でさ、CMタレントならメーカーからいくつかもらってるんじゃないの?」
「ヨーグルト!?こっちは忙しいんだ!悪いがヨーグルトなら自分で買ってくれ!ウチにもない!品薄なら辛抱して待て!!メーカーのお偉いさんもこないだ生産追いつかなくて困ってるって言ってたぞ!」
…サインでも写真でもなけりゃ「CMの商品」。もちろんメーカーから石嶺家に商品が贈られてくることもあるが、毎回ではない。商品が大量に贈られてきて、1家族で消費できないときは希望者に分けたりもするが。

そんなこんなで帰宅後、ここでも仕事は続く。今日お願いされたサインや写真の申し出の整理だ。
「今日はサイン20件、写真12件、共演者のサインも20件、そんでもってCMの商品をくれってのが3件だがどの商品も今家にないからこれは無効…つぼみちゃん!疲れてたら明日でもいいからサイン20枚よろしく!みんなには数日かかる場合があるって言ってあるから焦らなくても大丈夫!あと明日は撮影の申し出が3組あるからよろしく!」
「ふえ~!まだ書いてないの8枚あるのにさらに追加か~…」
「スターはつらいよな!でも大丈夫!受付はしばらくお休みしておくからゆっくりでいいぞ!」
一番忙しいのは実際にサインや写真撮影を行うつぼみ本人なのは間違いないが、受付業務を行うダイゴも大忙しなのは読んでくださった方ならお分かりだろう。
スターの兄は忙しいのだ。
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