上 下
22 / 24

第22話 ダイゴお兄ちゃんだって大変です。窓口として。

しおりを挟む
兄・石嶺ダイゴ、彼はただ妹のつぼみをめでているだけじゃない。しっかり兄貴としての責務を全うしている。
そして忘れてはないだろうか。一般人とはいえ彼は芸能人の兄。兄姉は何かと大変なことを背負わされるのが宿命だがスーパースターの兄貴には他の兄姉にはない忙しさがある。
今回は彼の学校での「スーパースター・矢澤つぼみの兄」としての責務と苦悩をご覧いただこう。

「すいませ~ん!ダイゴくん!」
石嶺ダイゴのもとを訪ねてきたのは隣のクラスの女子。
「つぼみちゃんのサインお願いできる?おばあちゃんが欲しいんだって!」
「OK!転売防止のためこの契約書におばあちゃんの名前を書いてくれ!」
「すいませ~ん!僕もお願いします!」「オレは写真撮影を!いつ空いてる?」「私のおじいちゃんと一緒に写真とサインお願い!誕生日プレゼントにしたいの!」
「はいはい!順番に並んで!」
学校における兄としてのダイゴの仕事…それはつぼみのサインや写真撮影に関する窓口受付業務。
ダイゴの妹がつぼみであるという事実を2年生のみならず学校中が知ることとなった現在、彼のもとにはつぼみとの写真撮影やサインをお願いする者が後を絶たない。つぼみはサインも写真もOKだが、事務所の方針として「転売防止のためサインには送り先の氏名・店名を書くこと」「一般人がタレントと撮った写真のSNSへのアップ禁止」のルールが定められている。しっかりそのルールを守ってもらうため、そして希望するすべての人へサインと撮影の機会をきちんと与えるため、兄が窓口としての役割を果たしているのだ。
ちなみに生徒・先生一同は家族や親戚等にダイゴがつぼみの兄であることを話しても、ネットとかに晒したりはしてないのでご安心を。

一方最近はこんな人も現れてきた…
「ダイゴ~!つぼみのことでお願いがあるんだが!」
「なんだ?またサインか?こないだ親戚一同の分やったばっかじゃねーか…」
「つぼみのサインじゃなくてえ○このサインだよ!今度番組で共演するんだろ?」
「…でもサインOKか本人に確認しないとわかんね~からな…一応聞いてみるがもしダメでもノークレームな…」
…つぼみではなくその共演者のサインをお願いしたいという申し出だ。当然、タレントによってサインOKな人とそうでない人がいるのでもしダメでもクレームは受け付けない。その約束のもとダイゴはこれを受託する。
日によってはつぼみのサインよりも共演者のサインの申し出のほうが上回る日も少なくない。

更にはこんな人まで現れる始末…
「すみませ~ん、つぼみちゃんがCMに出てるヨーグルトくれませんか?最近品薄でさ、CMタレントならメーカーからいくつかもらってるんじゃないの?」
「ヨーグルト!?こっちは忙しいんだ!悪いがヨーグルトなら自分で買ってくれ!ウチにもない!品薄なら辛抱して待て!!メーカーのお偉いさんもこないだ生産追いつかなくて困ってるって言ってたぞ!」
…サインでも写真でもなけりゃ「CMの商品」。もちろんメーカーから石嶺家に商品が贈られてくることもあるが、毎回ではない。商品が大量に贈られてきて、1家族で消費できないときは希望者に分けたりもするが。

そんなこんなで帰宅後、ここでも仕事は続く。今日お願いされたサインや写真の申し出の整理だ。
「今日はサイン20件、写真12件、共演者のサインも20件、そんでもってCMの商品をくれってのが3件だがどの商品も今家にないからこれは無効…つぼみちゃん!疲れてたら明日でもいいからサイン20枚よろしく!みんなには数日かかる場合があるって言ってあるから焦らなくても大丈夫!あと明日は撮影の申し出が3組あるからよろしく!」
「ふえ~!まだ書いてないの8枚あるのにさらに追加か~…」
「スターはつらいよな!でも大丈夫!受付はしばらくお休みしておくからゆっくりでいいぞ!」
一番忙しいのは実際にサインや写真撮影を行うつぼみ本人なのは間違いないが、受付業務を行うダイゴも大忙しなのは読んでくださった方ならお分かりだろう。
スターの兄は忙しいのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

明日もいい天気 〈GANA. 短編集〉

GANA.
ライト文芸
◇短編集◇

モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件

こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。 だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。 好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。 これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。 ※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ

ニコちゃん店長辞めるらしいよ

ムロヒ
ライト文芸
【世界一の美容師会長のロム・ヒ(38)は空前絶後の容姿、頭脳共に完璧主義だが自分勘違い野郎の自分大好きな超絶ナルシスト男 そんな彼と共にオープン当初からずっと支えてきた唯一の存在で10年間一緒に働いてきた美容師店長のニコ(28) 彼女無しではここまでなし得なかった世界一の称号 そんな彼女が突如、恋や結婚をして後々独立を目指しのんびりと自分の人生を歩みたいと辞職を申し出た ロム・ヒはショックを受けあの手のこの手で引き止める 有ろう事か「俺が結婚してあげようそれで美容業界を一緒に盛り立て働き続けろ」とパワハラとセクハラ発言をする。】

惹かれて満ち足りて

蒼キるり
ライト文芸
束縛の強い恋人から別れたばかりの有紗は友人に紹介されたバーで素敵な人に出会う。目が会うたびに話すたびに触れ合うたびに惹かれていく想いが、満ちるまでのお話。

死に戻りの魔女は溺愛幼女に生まれ変わります

みおな
恋愛
「灰色の魔女め!」 私を睨みつける婚約者に、心が絶望感で塗りつぶされていきます。  聖女である妹が自分には相応しい?なら、どうして婚約解消を申し込んでくださらなかったのですか?  私だってわかっています。妹の方が優れている。妹の方が愛らしい。  だから、そうおっしゃってくだされば、婚約者の座などいつでもおりましたのに。  こんな公衆の面前で婚約破棄をされた娘など、父もきっと切り捨てるでしょう。  私は誰にも愛されていないのだから。 なら、せめて、最後くらい自分のために舞台を飾りましょう。  灰色の魔女の死という、極上の舞台をー

『少女、始めました。』

葵依幸
ライト文芸
心と体を満足させる「少女宅配サービス」 “貴方に寄り添うパートナー”! 失ってしまったあの想いを、傷ついてしまった心を癒すために、貴方にピッタリな一体をお届けいたします。 そんな詐欺のようなサイトを間違ってクリックしてしまった男の元に届けられたのは一人の少女だった。

処理中です...