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第17話 石嶺家のリベンジ遠足です。

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あの涙の撮影中断から数日後の日曜日。石嶺家は一家のの大黒柱・コテツの粋な計らいによりつぼみが仕事のため行くことができなかった遠足の地・カミバタパークにやってきた。石嶺家からは車で30分ほど。石嶺家の暮らす神奈川県上川畑市にある関東を代表するテーマパークだ。どれぐらい人気かっていうと上川畑市民は関東のテーマパークなら千葉にある夢の国よりもこっちのほうが好きって人が多いぐらい集客が多い!
そして最近になってアトラクションの追加や新エリアの登場などのリニューアルでさらに盛り上がりを見せているのだ。

ケイコ「ここって中学生以下はだれでも無料だし、規模の割には入園料もリーズナブルで、しかも上川畑市民は高校生以上の学生も学生証を提示すれば無料だし、大人も市民割があるからほんとに市民の味方なのよね!」
コテツ「オマケにアクセスもいいときたもんだ!子育て世代や地元の学生たちが来る理由があるってモンだな!」
ダイゴ「突然の説明口調は置いといて…天気にも恵まれてよかったなつぼ…つっくん!」
つぼみ「おう!オレも家族みんなと晴天の中出かけられてうれしいぜ!」
…ここで読者の皆様に説明せねばならない。つぼみは第三者に気づかれてパニックになるのを防ぐため、レジャーの時は毎回かつてメイクの仕事をしていたケイコさんのプロデュースのもと、毎回名前を隠して様々なキャラに変装しているのだ。
今回はショートカットのウィッグにベースボールキャップにボーイッシュメイクでクールな口調のボーイッシュキャラのオレっ娘「つっくん」。声色もボーイッシュに変えている。ちなみにウィッグはつぼみが撮影でお世話になったメイクさんから譲ってもらったもの。
…さて、説明してるうちに一家はさっそく園内に入場したようだ。

ケイコ「やっぱり人が多いわね…リニューアルしたてってのもあるけど…」
ダイゴ「早くしないと人気のアトラクションはすぐ行列ができちゃうかもよ!つっくんまずはどこに行く?」
つぼみ「え~とオレがまずのりたいのはメリー…あっ!マカイヴァルキリーズだ!4人そろってる!」
つぼみは大好きなアニメキャラを見かけてすぐさま走って行ってしまった。
ダイゴ「つっくん!勝手に行っちゃ迷子になっちゃうよ!」
ダイゴはつぼみを追いかける。
コテツ「あれ?今日ヴァルキリーズショーなんてあったっけ?公式サイトや入口のポスターには書いてなかったはずだが…ってあれ着ぐるみじゃなくてコスプレだ!よく見たら園内でちょくちょくレイヤーの姿を見かけるな…」
ケイコ「ここは関東を代表するコスプレイヤーの聖地としても知られているんですよ!西洋風の建物とか、バラエティに富んだロケーションがレイヤーさんたちに人気なんですって!つっくんのお友だちのレイヤーさんもよく撮影できてるって言ってました!」
…お友だちのレイヤーとは、つぼみと同じ事務所に所属するレイヤーのことである。パチパチプロにはコスプレイヤーも何人か所属している。

つぼみ「お兄ちゃん!写真写真!」
大好きなキャラのレイヤーを目の当たりにしてつぼみはすっかりボーイッシュキャラを忘れて素が出てしまっている。
ダイゴ「コラコラ!無断撮影はマナー違反!まずはヴァルキリーズに許可を取らなきゃ…すみません!この子が一緒に写真撮りたいみたいなんですけどいいですか?」
レイヤー「いいですよ!」
ダイゴ「…それじゃ、撮るよ!」
つぼみはヴァルキリーズのレイヤーたちと一緒にヴァルキリーズの決めポーズを決めて笑顔で撮影に臨んだ。被写体になるのは手馴れているから笑顔はお手の物。といっても今回は自然な笑顔だが。
スマホのカメラを構えて妹の笑顔をしっかり記録しようとする兄・ダイゴも同じように笑顔になっていた。
ダイゴ「ありがとうございました!ほら、つっくんもお礼を言って!」
「ありがとうございました!またね~!」
…すっかりボーイッシュキャラを忘れ、声色もしゃべり方も素が出てしまったつぼみ。兄妹が両親のもとへ戻った後、レイヤーたちはこんな話をしていた。
「ねえさっきのボーイッシュな子、矢澤つぼみちゃんに声似てなかった?」
「私も思った…でもまさかね…」

コテツ「よかったな!一緒に写真撮ってもらえて!遠足の時に行ってたらヴァルキリーズのお姉さん方にも会えなかったかもしれないぞ!お前はラッキーガールだな!それじゃあアトラクションに…あっ!オレの初恋・ホ〇ノルリのレイヤーだ!写真お願いしよう!」
ダイゴ「親父!勝手に行っちゃ…あっ!あっちにはナ〇ジャモのレイヤーがいるじゃないか!写真写真!」
ケイコ「こ、こら2人とも!きょうはつっくんのための日なのに…」
つぼみ「やれやれ、いつまでたってもおこちゃまだぜ…オレのほうが年齢的に一層おこちゃまだけどな。」

…男ども2人のレイヤー撮影が終わったところでようやくアトラクションに。
最初はつぼみが1番乗りたかったメリーゴーランド。
つぼみ「オレ昨日馬に乗る夢見てさ、これってメリーゴーランドに乗ったらいいことがあるって言う暗示かもと思ってな!…でも今日はアニキと一緒に乗りたいから馬じゃなくて馬車のほうにするぜ!」
ダイゴ「(つぼみちゃんとメリーゴーランド…何度も夢見た光景だ…)よし!いくかつぼみちゃん!」
コテツ(ダイゴのやつ嬉しさのあまり今のつぼみの設定忘れちまってる…)
そのころ、メリーゴーランドの付近に撮影場所を移していた先ほどのヴァルキリーズのレイヤーさんたちも、この一部始終を見ていた…
「さっきのお兄ちゃん、今帽子の子につぼみちゃんって言ったよね?それじゃあやっぱり…?」
「そんな短縮的な考えもよくないと思うよ…単に同名かもしれないし…」
そんなこんなでメリーゴーランドは動き始めた。
つぼみ「最高だなアニキ!…ってあれ?」
ダイゴ「はい~最高でござますね~」
そのころ、別の馬車に夫婦で乗っていたコテツは…
「ここからじゃ見えないが多分ダイゴは今頃デレデレに溶けてるぞ絶対…」
「でもダイゴくんはお兄ちゃんとしてしっかりやってると思うわ!つっくんはダイゴくんに任せて私たちは今夫婦の時間を楽しみましょう!」
兄妹の時間を満喫するダイゴとつぼみ、夫婦の時間を満喫するコテツとケイコ…2人は回り続けるメリーゴーランドのうえでそれぞれの時間を過ごした。

…メリーゴーランドがとまってもリベンジ遠足はまだまだ終わらない。
つぼみ「次はコーヒーカップだぜ!」
次なる目的はコーヒーカップ…兄妹と夫婦は同じカップの中で再び同じ時間を過ごす。
ダイゴ「つっくん、オレグルグルまわると酔いやすいからあんまり回さんどいて…ってギャァァァァァ!」
「遠慮すんな!ガンガン回してやる!大サービスだ!」
「イヤ、オレ回ると酔いやすいって…」
そのころ、大人チームも…
ケイコ「どんどんいきますよ~!わたし子供のころからコーヒーカップでガンガン回すの大好きで…!」
コテツ「すみませんケイコさん…自分回りまくるの苦手で…子供の頃回しまくって酔ったトラウマが…」
ケイコ「あら…ごめんなさいね…」
コーヒーカップ終了後…
ダイゴ「すまない…ちょっとトイレに行かせてくれないか…出そう…」
コテツ「オレも同じ…」
つぼみ「す、すまなかった回しすぎて…親父もやられたんか…」

それから10数分後、2人の体調も無事回復し、次はできたばかりの新エリアへ…
童話の世界を彷彿とさせる西洋の街並みをベースとしたアトラクション以外にも様々な仕掛けが用意された歩くだけでも楽しい遊び心満載の「マジックユーロエリア」。
つぼみ「まずはここで運試しだ!」
一家が訪れたのは「真実のおみくじ」。真実の口を模した装置の中におみくじが入ってる。1回100円。そしてこのおみくじには様々なサプライズが…それはまた後で。
つぼみ「それじゃあみんな一斉に開けるぞ!…オレは超大吉だ!」
…このおみくじは普通の大吉とか吉とか以外にも様々なパターンが存在。バリエーションの豊かさも人気のひとつで、SNSではおみくじの画像を投稿するのがゲストの間で人気となっている。
コテツ「おっ!よかったな!それなかなかレアなやつだって話だぞ!オレのは…吉か。まあ、悪くはないけど…面白味ないというか…変わったやつが欲しかったって言うか…」
ダイゴ「ま、ちょうどいいんじゃない?で、オレのは…超絶大凶!?最悪やん…」
つぼみ「よかったな!ラッキーじゃんアニキ!超絶大凶なんて超大吉以上にレアなんだぞ!」
「そうだとしても嬉しくね~よ!!ラッキーなワケあるかぁ!」
「まあまあ、おみくじの下の欄を見てみろって!!」
「ん…!?”超絶大凶を引いてしまっても大丈夫!こちらのおみくじを園内ショップにお持ちいただくと『邪気退散お守りストラップ』を差し上げます!”…まじでラッキーじゃん!サプライズじゃん!」
「だから言ったろ?…そういえば母ちゃんは…」
ケイコ「わたし…ラッキー吉クーポン引いちゃった!ソフトクリーム無料券!しかもめったに出ないと言われている4つまで無料券よ!」
つぼみ「すごいじゃん母ちゃん!」
…これもサプライズのひとつ、ラッキー吉クーポン。園内のワゴンやレストラン、ショップで使える無料クーポンや割引券もおみくじの中に入っているのだ!このサプライズもおみくじの人気のひとつである。

その後、一家はお守りとソフトクリームを引き換えるためにエリア内のショップへ。ちょうどお守りを引き換えるショップとソフトクリームの店が近くであった。
ダイゴ「お守りストラップ~!明日から学校のカバンにつけてくか~!」
ケイコ「よかったわねダイゴくん!こっちもソフトクリームちょうど引き換えてきたわよ!」
「おっ!エリア限定フレーバーの巨峰+ミルクのミックス!うまそうじゃん!ところで親父は?トイレか?」
つぼみ「親父ならあちらに…」
つぼみの指さした方向にはレイヤー撮影をするコテツが…
「君たち大学生!?産まれる前のアニメだよね?若いのにレイ〇ース知ってるなんて感動だねえ…」
ダイゴ「90年代アニメのレイヤーには目がないんだから親父は…」
つぼみ「お~い親父~!早くしないとソフトクリーム溶けちまうぞ~!」
「おっ!そうだった!それでは愛する家族が呼んでるのでこの辺で…ありがとうございました!」
「最初ちょっと変な人って思っちゃったけどきちんと家族思いみたいでなかなか面白いお父さんだったわね!」
「私たちも後でソフトクリーム食べに行こうか!」
ちょっとお騒がせな遊び人なところもあるけど家族への愛は忘れないコテツはレイヤーさんからも気に入られていた。

ダイゴ「うまかったなソフトクリーム!なんかこういうところでみんなで食べるのってなんでもうまく感じるんだよな!」
ケイコ「それって本当に不思議よね…遊園地の魔法かしら?」
つぼみ「母ちゃんもなかなかロマンチックなこと言うな!次はジェットコースター!…と行きたいけどオレの身長じゃまだ乗れないからな…オレも他のお客さんみたいにスピードに乗りながらワーキャー言いたかったけどな」
コテツ「そのうちお前も乗れるようになる日が来るさ!だからこれからもたくさん食べて大きくなろう!ベタな言い回しだけど…そういえばロマンチックで思い出したが…あの新アトラクション・ロマンスフェアリーズライドに行くか!あれなら身長制限ないからみんなで乗れるぞ!」
一家はマジックユーロエリアの目玉アトラクションのひとつ、ロマンスフェアリーズライドへ。
光の妖精たちの住処をめぐるという設定で。幻想的な光あふれる暗闇のコースを進んでいく”昼間でもイルミネーション”なライド型アトラクション。ランダムなルート分岐もあるので何度乗っても楽しめるのだ。
ケイコ「まるで夜みたい…素敵ね…」
つぼみ「幻想的でキレイだよなアニキ!?」
ダイゴ「イヤ、あの光たちよりも一番きれいなのはつっくん、我が妹さ!」
コテツ「ダッサいセリフ…こりゃ当分彼女できねーな…」
「余計なお世話だ!今のオレにはつっくんが家族でいてくれればそれで幸せなんでい!」

その後も遊園地を楽しんだ石嶺家、空中ブランコにゴーカート…あっという間に空はオレンジ…
最後のシメと向かったのは遊園地の四番バッター、観覧車。
ゴンドラの窓から見える夕暮れの街並みを眺めながら4人は今日1日の思い出に浸っていた…
つぼみ「ここならいつもの喋り方で大丈夫だよな…お父さん!今日は連れてってくれてありがとう!お母さんとお兄ちゃんもありがとう!」
コテツ「喜んでくれて光栄だ!リベンジ遠足大成功ってところだな!」
ダイゴ「見ろ!あの夕日もつぼみちゃんの笑顔を見て喜んでいるぞ!」
つぼみ「え~?そんな風には見えないけどな~お兄ちゃんったら発想がおこちゃまだな~!」
「言ったな~!オレより一層おこちゃまのくせに~!そんなお前にはコチョコチョの刑だ~!」
「アハハっ!こんなところでやめてよお兄ちゃん!」
ケイコ「やっぱり仲良し兄妹ね…まるでずっと昔から兄妹だったみたい…」

楽しい時間はあっという間…夢見心地のゴンドラから降りた石嶺家は楽しい1日を終え、家路へと向かう…
ダイゴ「今日は最高だったな!でもまだまだ見たりないところもあったけどオレはつぼみちゃんの楽しい顔が見れただけでハッピーだぜ!」
つぼみ「またいつか行こうね!」
ケイコさんが家路へと車を走らせる車内。兄妹の楽しい会話が響く中、コテツはスマホで何かを確認していた。
「今日の結果は…やった!大当たりだ!つぼみ!お前のおかげだ!お前は本当にラッキーガールだな!!」
コテツ、突然謎の喜びのあまりつぼみに抱き着く。
「わわっ!急にどうしたのお父さん!?」
何が大当たりなのか?なぜつぼみのおかげなのか?以下次回!!
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