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第13話 上には上がいるのが世の常のようです。

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どうも!石嶺ダイゴです!今日はまたまたつぼみちゃんのレッスンに見学に来ています!親父は仕事でまた留守番だけども…
今日は「泣きの演技」のテストがあるそうです!「泣きのつぼみ」の異名を持つぐらいの定評があるつぼみちゃんだから楽勝だよね!!オレも練習台として毎日練習に協力したもんだ!練習台って何のことかって?それは後でわかるさ!それとひとつ気になることが…

「ケイコさん、そういえばオレが前回見学に来た時とメンバー入れ替わってますよね?前いなかった子が何人も…もしかして昇格した子たちですか?」
「そう、ちょっと前に下のクラスからAクラスに昇格した子もいるけど、前回お仕事やほかの習い事とかでいなかった子もいるわ。」
「そうなんですね。そういえば前にいたタケルくんって子見かけませんね?僕結構いい演技する子だと思ったんですけど他の子が昇格したってことはもしかして…」
「…そう、タケルくんこないだBクラスに落ちちゃったの…このクラスに残れるのは子供部の幼児クラス(満3~6歳)の200人ほどいる中からわずか30人ほど…厳しい世界なのよ…」
「う~ん…やはり芸能界で生き残るということは子役の世界であれ難しいことか…そんなことはないと思うがつぼみちゃんももしスランプにおちいったら落とされてしまうかもしれないのか…」

そんな中でテストが始まりました!審査を担当するのは鈴井先生。第9話でつぼみちゃんに喝を入れたあの怖~い先生です…あの時は作者がまだ名前を考えてなか…じゃなくて名前を紹介するの忘れてたけど…
今回のテストは10点満点中7点で合格だそうです!つぼみちゃんなら余裕だよね!
「それではテストを始めていきますよ!まずはほたるさん!」
ダイゴ「あの子知ってる!こないだドラマで広瀬す〇の幼少期役やってた子だ!」
「あの子も最近の実績が認められてこっちのクラスに上がってきたのよ!」
ほたる「はい!今回は”お母さんが死んじゃった”という題材でやります!」
…実は今回のテストはセリフやシチュエーションなど完全なアドリブなんです!子役たちが各々で考えたシチュエーションとセリフで披露するというかなり難易度高めのテストです!”芸能界では時にアドリブが武器になる”との考えで考案されたのです!ちなみにつぼみちゃんのシチュエーションは…あとでのお楽しみ!
ほたる「やだっ…お母さん…お母さ~ん!なんで死んじゃったの…!ほたる、お母さんのシチューもっと食べたかったのに…」
ダイゴ「やっぱりプロはすごいな…悲しい気持ちがひしひしと伝わってくる演技力だ…それにアドリブ力も…まるで本当に悲しんでるかのように…こっちまでもらい泣きしてしまいそうになる…でもあの先生のことだからこんな演技でもダメ出しするかも…」
「ほたるさん…10点満点中2点で不合格!あなた本当にAクラスになったんですか!?Bクラスなのに間違えてきちゃったんじゃないですか!?今のは先生には”芝居くさい芝居”にしか見えません!もっと”芝居と思わせない芝居”をしなさい!」
ダイゴ「芝居と思わせない芝居か…きっと本当に目の前で起こってるかのようなリアルな芝居って意味だよな…オレには十分芝居と思わせない芝居に思えたが…オレの見る目が素人なのか、あの先生が辛口なだけなのか…」

それからもテストは多くの子役たちが不合格に泣く結果になっていき、レッスンに参加している27人のうち、25人が終わってここまで合格者はわずか5人。終わったメンバーのうちのわずか5分の1…満点合格者はひとりもいません…
残るは2人、そしていよいよつぼみちゃんの番です!泣きのつぼみの真骨頂であの先生をギャフンと言わせてくれ!
「では次はつぼみさん!」
「はい!私は”お兄ちゃんが学校帰りに車にひかれて死んじゃった”という題材でやります!」
…そう!なんとつぼみちゃんの題材はオレが事故死してしまったという設定です!演技の台本とはいえ、自分が死ぬのは…と思ったけどつぼみちゃんのためなら!とオレは毎日死んだふりをしてつぼみちゃんの練習台となっていたのです!おかげて親父からは「日に日に死体役うまくなったな。パチパチプロに死体役専門の役者として履歴書送ってみるか?」とかしょうもない冗談言われましたが…っと、そうこうしてるうちにつぼみちゃんの演技が始まりますよ!
「お兄ちゃん…帰ってきたらいっぱい遊ぼうねって言ってたのに…今度のお休みの日に一緒に遊園地いくって言ったのに…なんで…なんでっ…お兄ちゃん起きてよ!目を覚ましてよ!つぼみ、お兄ちゃんとまだまだやりたいことがいっぱいあるのに!」
「すごい!」「さすがつぼみちゃん!」「私も見習わないと…」
ダイゴ「拍手喝采!さすが”泣きのつぼみ”!!自分で言うのもなんだが兄の特訓のおかげでますます磨きがかかったな…!ハナが高いぜ!!満点間違いなしだな!!」
「つぼみさん…合格です。10点満点中9点ですね。」
ダイゴ「え!?満点じゃない!?」
「え~!?」「なんで~!?」「どう考えても満点じゃん!」
…まさかの点数にほかの子役たちからもブーイングです…
「皆さん静粛に!!…たしかにつぼみさんの演技力はとても光るものがありました…アドリブ力や構成力も素晴らしかった…ですがあと一押し足りない!完成形ではない!よい演技でしたが先生はこれを”矢澤つぼみの演技”とは思いませんでした!
つぼみさん…あなたは最近”矢澤つぼみの演技”が出せてないような気がします…もっと”矢澤つぼみの演技”を出せるようにしなさい!」
つぼみ「わ、わかりました…評価ありがとうございます…」
ケイコ「つぼみちゃん…相当落ち込んでるわね…自信満々だったから…」
ダイゴ「5歳の子にその人らしい演技って言われても難しいよな…いくらプロとはいえ…」

そして最後のひとりです…その子の名は…
「では最後!みりあさん!」
「はい!私は”両親が飛行機事故で亡くなられた”という題材で行います!」
ダイゴ「御手洗みたらいみりあ!そういや彼女もパチパチプロだった!」
ケイコ「前回ダイゴくんが来た時はお仕事でいなかったけどね。彼女もご両親ともども忙しいから…今日もご両親と一緒じゃなくてマネージャーさんが保護者の代理をされているわね…」
御手洗みりあ…つぼみちゃんと同い年の子で、現在の子役界では人気、実力とともにつぼみちゃんと二分する存在!
母は元某関西の歌劇団の男役、父は元俳優で現在は映画監督という芸能サラブレットでもあります!
「お母様…お父様…みりあは…みりあは天涯孤独の身となってしまいました…いまだにこの惨事を受け入れられません…ですが…みりあは…みりあは…お2人からいただいた愛情を胸に精進してまいります…だから…だから…どうか心配しないで安らかにお眠りください…」
ダイゴ「…!間違いなく今までのつぼみちゃん以外のこの中では一番上手い!演技力といいアドリブ力といい、もはやこれは子役の演技力じゃなくて役者の演技力だ!…でもあの先生のことだからよくてつぼみちゃんと同点じゃ…」
「みりあさん…満点合格!すばらしいわ!私の目の前にいたのは紛れもなく不幸により天涯孤独の身となった悲劇のヒロインだったわ!文句なしよ!」
みりあ「ありがとうございます!これからも精進いたします!」
ダイゴ「上には上がいる…ということか…」

テスト終了後…つぼみちゃんはみりあちゃんに演技のコツを聞き出しに行きました。落ち込んで終わるのではなく、相手からしっかり学ぼうとするその姿勢…オレも見習わなきゃ!
つぼみ「みりあちゃん!今日の演技すごかったよ!つぼみもお手本に…」
みりあ「気やすく話しかけないで!」
みりあちゃんはなんとつぼみちゃんを突き飛ばしてしまいました…」
子役たち「つぼみちゃん大丈夫?」
「私なら大丈夫だよ…それよりもみりあちゃん、なんで話しかけてほしくなかったの?」
芸能界ここは弱肉強食の戦場だからよ…あなたは私の敵…いや、ここにいる全員が私の敵よ!お母様が言っていたわ…芸能界に入ったら周りは全員敵と思えって…私はここにあなた達とお友達ごっこに来たわけじゃない!この芸能界という戦場で生き延びるための術を学ぶために来てるのよ!すなわちここにいる全員を蹴落とすための術を学ぶためよ!今にも私はあなたたち全員を蹴落としてトップに立ってみせるわ!だから気安く話しかけないで!ただのほほんとお友達ごっこなんかやってたらすぐに私や他のやつらに食われるわよ!」
みりあのマネージャー「み、みりあちゃんそんなこと言わなくても…」
子役たち「みりあのヤツなんか調子に乗ってるな…」「いくら両親という後ろ盾があるからって…」「今時ちょっとでもなんかやらかしたらネットニュースに書かれちゃうぞ!」
ダイゴ「芸能界は弱肉強食…みりあのその考えは決して間違ってはいない…だがあそこまで考えすぎなくたっていいと思うが…友達を作ることは決して悪いことじゃないし…」
つぼみ「みりあちゃんも決して悪い子じゃないんだけどね…みりあちゃんにはみりあちゃんのプライドもあるし…」

御手洗みりあ…閉鎖的な彼女の心に変化が現れる日は来るのか…
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