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第10話 ダイゴ、リコーダーリベンジマッチです。

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ダイゴの久しぶりの登校から1週間たち…
「ついにやってきたぜ…リベンジマッチの日が!!」
コテツ「リベンジマッチ?ああアレか!」
ケイコ「そうだ!アレの日だって言ってたわね!」
つぼみ「お兄ちゃん!あれだけアレを練習したんだから大丈夫!頑張ってね!」
「みんなありがとう!オレがんばるよ!」
…アレアレ言われても何のことかさっぱりわからんよ。虎の監督じゃあるまいし…という皆さんのために解説いたそう。「アレ」とはダイゴが長期間の不登校になるきっかけとなったリコーダーのテストの追試のことである。話は1週間前、ダイゴの久しぶりの登校日の下校直前にさかのぼる…

音楽の先生「ダイゴくん、リコーダーの再テストのことだけれども、君の都合の良い日時でやろうと思うんだけど、いつにする?」
「それじゃあ、1週間後の月曜日の放課後にお願いします!それまでしっかり練習してきますのでどうかよろしくお願いします!石嶺ダイゴ、お兄ちゃんとしてカッコいいところみせます!この1週間で新しい石嶺ダイゴの演奏を完成させて見せます!」
「お~!その言葉、その目、その志!あの日のダイゴくんとは180度違いますね~!それじゃあ1週間後、音楽室で!楽しみにしてますよ!」
その日からダイゴは毎日毎日血のにじむようなリコーダーの練習を続けた。ケイコさんが再婚報告動画を製作する数時間前にも、つぼみちゃんのレッスン風景を見学し芸能界の厳しさを知ったあの日の帰宅後も…
学校でも音楽の先生の許可をもらい、毎日の休み時間に音楽室を使って練習をした。音楽の授業がない日も毎日リコーダーを持ってきて練習した。クラスの間では「休み時間にダイゴに用があるなら音楽室に行け」というフレーズが生まれるほどいつのまにか彼の努力は知られていった。
ここまでの努力は決して彼一人の力だけでできたわけじゃない。つぼみちゃんはじめ家族の支えと応援、そしてもうひとり、彼を支えていたのが…
「もちろんオレ、町田ソウジのことだよな!」
…勝手に割り込んできたこの男、ダイゴ最大の悪友…もとい親友、町田ソウジである。ただいま例の号外の件により新聞部メンバーとしての今学期中の活動停止(他のメンバーはそのまま活動)の制裁を絶賛食らい中である。
コテツにラーメンをおごってもらったあの日の言葉通り、休み時間中にダイゴにリコーダーの指導を行い、彼の以外にも丁寧でわかりやすい指導があったからこそ、自分は嫌いなリコーダーにたいしてここまで情熱を注ぐことができたとダイゴは語る。
ソウジ「意外にもは余計じゃ!」

時は進みいよいよ放課後、本番。音楽室にはソウジを始め、複数人のクラスメイトや担任の林田先生も応援に駆け付けた。
友のため、家族のため、生まれ変わった自分の演奏をみせろ、石嶺ダイゴ!!
音楽の先生「ダイゴくん、準備はいいですか?」
ダイゴ「OKです!!もうリコーダーごときでくよくよするあの日の石嶺ダイゴはどこにもいません!この一週間の血のにじむような努力の結晶をどうかその耳に焼き付けてください!」
「わかりました!では演奏はじめてください!」
そしてダイゴは毎日の練習によりマメだらけになった手でリコーダーを握り、息を吹き込む。1週間の努力の演奏の開演だ。
ダイゴが豆だらけの指を動かすたび、音楽室中に美しいハーモニーが広がる。クラス中から笑われ、トラウマとなったあの日の演奏ではない。”あの日の石嶺ダイゴはどこにもいない”の言葉は本当だった。
応援に駆け付けたみんなもまるでオーケストラの演奏を聴いているかのように耳を傾けていた…
「すげえ…1週間でここまでできるようになったんだアイツ…」
「ずっと休み時間に練習してたものね!」
そして約1分半の課題曲演奏が終了。はたして先生のジャッジは…

「石嶺ダイゴくん…合格です!」
「や…やった~!ありがとうございます!!努力は決してうらぎらないんらぁ…」
林田先生「ダイゴくんが泣いている!ここまでたゆまぬ努力をおしまなかった証拠ですね…」
ソウジ「あの涙の60%ぐらいはオレの指導でできている!涙の影に町田ソウジありってことよ!」
クラスメイト「指導者面で何偉そうなこといってんだ!!部活停止中のくせに!!」
ダイゴ「いや、ソウジの言葉はあながち間違いじゃない…ソウジ、お前が毎日指導してくれたからこそオレは最高のパフォーマンスを出すことができた…ありがとな、ソウジ!」
ソウジ「…うぉぉぉ~っ!こちらこそありがとうダイゴ~!」
ダイゴ「うわっ!!だきつくな!!…それと残って応援してくれた林田先生とみんなもありがとう!!」
努力に努力を重ね、ついにリコーダーのリベンジを果たしたダイゴ。彼はこれからも一人の中学生として、そしてお兄ちゃんとして成長し続けることだろう…
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