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第7話 ダイゴ、久しぶりの登校ですべてを話します…がその前に話されちゃいます。

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あの家族4人初めてのお出かけから1日、楽しい日曜日も終わって今日からまた1週間が動き出す。
そしてこの石嶺家にも新たに一歩動き出すことを決意した人物が…

「そんじゃ、そろそろ行ってくるわ!」
コテツ「ダイゴ!つらくなったら早退しても構わんが、みんなに久しぶりのあいさつは忘れるなよ!」
「わ~ってるよ親父それぐらい!」
つぼみ「お兄ちゃんがんばれ~!つぼみも今日の幼稚園終わった後のレッスンがんばるよ~!」
「は~い!お兄ちゃんがんばってきますよ~つぼみちゃんもがんばってくださいね~」
コテツ「つぼみが声かけりゃ急に態度変えやがって…」
ケイコ「でも、久しぶりに学校に行くって決断はよくしたと思うわ!もちろん辛くなったら逃げるのも道ですけどね!コテツさんもお仕事頑張ってくださいね!」
コテツ「もちろんです!…といってもうちの会社はリモートワークが主ですのでココが仕事場なんですけどね!」

それからダイゴが約1ヵ月とちょっとぶりに自分の通う『上川畑元町中学校』の2年1組の教室に入ってきて…
「おっ!ウワサのダイゴ様がやってきたぞ!」「久しぶりー!」「みんなまってたよー!」「ごめんなあの時は笑っちまって…お前がそこまで傷ついてるとは思わなかったんだ…」
ダイゴ「いいんだそのことは…それよりみんながオレのことを暖かく出迎えてくれたことが今はうれしい!みんなありがとな!」
ミヒロ「どういたしまして!…そうだ!ダイゴくん!あなたお兄ちゃんになったんだってね!」
「おめでとー!」「頑張ってねお兄ちゃん!」「今度妹さんに会わせて~!」
「えっ!?なぜそのことを…」
隣の席の女子、ミヒロの衝撃発言、そしてなぜかソウジ以外には語ってないはずの父の再婚を知るクラスのみんなにダイゴ動揺…
「今日ソウジくんが朝一で学校中でこれ配ってたわよ!あなたが学校に来る5分前ぐらいに”そろそろダイゴが来そうだから”って撤収したけど…」
ミヒロがダイゴに見せたのは学校新聞。説明しよう!町田ソウジは新聞部であるのだ!ちなみにダイゴは帰宅部である。
「ん?なになに?”元町中新聞緊急号外 石嶺ダイゴお兄ちゃんになる 父親再婚、お相手は幼稚園の女児持ちのシングルマザー 今日久しぶりの登校、本人は何を語るか”
…これは私の記者人生でも最大のスクープだ。長らく不登校状態が続いていた石嶺ダイゴくんの父で”若き孤高のナイスガイ”でおなじみの石嶺コテツさんが再婚されたのことだ。お相手はなんと幼稚園児の女児を持つシングルマザー。つまりダイゴくんはお兄ちゃんになるのだ。これは去年のカタールW杯で日本がドイツとスペインを破った時と同じぐらいの衝撃といっても過言ではないだろう。西から太陽が昇る世界線があっても、ダイゴくんがお兄ちゃんになる世界線なんてどこにも存在しないと私は思っていた。だがそれが現実のものとなったのだ。本日ダイゴくんは我々の前に久しぶりに姿を現す。兄となった彼は一体何を語るのか…」
ダイゴ「ミヒロ、ソウジはどこ行った…」
ダイゴ、激おこモード突入…その血走った眼はまさに地獄で亡者たちをにらみつける鬼の形相である。
「そ、ソウジくんならトイレに行ったわよ…」
「じゃ、行ってくるわ…」

そしてトイレにて…
「ソウジ~!ソウジはどこじゃ~!」
「だ、ダイゴお兄ちゃん、来てらっしゃったのね…」
トイレにこもって隠れてたソウジはダイゴの鬼のような怒り声とたたきつけるようなドアの音にビビッて顔をみせた…
「この新聞は何なんだ?お前あんなにしゃべらないって言ったよな…」
「い、いや…僕は一切喋ってませんよ…新聞に書いただけですから一切口にはしておりません…確かに僕は迷いました…新聞を発行することを…ですがジャーナリストは権力には屈してはいけない!市民に向けて真実を伝えることこそがジャーナリストの責務だ!私はその思いで新聞を発行するという決断をいたしました次第で…」
「その権力ってのは誰のこと言ってんかな~?お前はジャーナリストじゃねぇ…ただの口軽男じゃねえか…ソウジぃ~!昨日のポ〇カの話はなし!そんでもって罰として今学期中はお前がオレからマンガやゲームを借りることのできる権利はく奪!!」
「ひいい~ごめんなさい~!」

しっかりと絞られたソウジとダイゴが教室に戻った直後、担任の林田ススム先生(35歳独身)がちょうど教室にやってきて、ホームルームへ。
林田先生「…では、僕からのお話ですが…聞きましたよダイゴくん!お父さん再婚おめでとうございます!そしてお兄ちゃんになったんですね!頑張ってくださいね!」
「先生まで…ありがとうございます!」
林田先生「でもソウジくん…この新聞はダイゴくんに無許可で作ったらしいですね…放課後職員室ね。」
ソウジ「ご、ごめんなさい…」
ダイゴ「先生からもこってり絞られて反省するこったな!」

ソウジにもしっかりお灸をすえ、久しぶりの登校に平和が訪れたと確信したダイゴ…しかし1時間目の終了後、一目の付きにくい廊下の隅で悲劇は起こる…
ソウジ「ダイゴ、さっきはすまなかった…それとひとつ聞きたいことがある…」
ダイゴ「しっかり反省しているようだな…で、聞きたいこととは?」
ソウジ「昨日は黙ってたが、今から話す質問に正直に答えてくれ…お前の妹、みーちゃんっていってたな…サングラスで隠してたが彼女の正体、子役の矢澤つぼみなんだろ?」
ダイゴ(き、気づかれてた!?こいつにも!?)
ソウジ「昨日みーちゃんとアイス屋にいたときもアイス屋の店員たちが横目でこしょこしょ話してたぜ…”あのこ矢澤つぼみじゃない?”って…エスコートしてたときにすれ違った人たちも同じこと言ってたぜ…
それにフードコートでオレやお前のご家族がお前に熱く語ってた時に、みーちゃんはオーディ…とかマネー…とか言いかけて訂正してた場面があったな…それは”オーディション”や”マネージャー”という子役を連想させるフレーズを言いかけて、それらを口にしてしまったら正体がバレてしまうからあわてて訂正したんじゃないのか!?どうなんだよダイゴお兄ちゃん!!」
ダイゴ「おまえ!?すまなかったって言っておきながら!」
ソウジ「安心しな…今度は絶対に新聞に載せたりしないし外部に話したりもしないからさ…オレが信用ならんのか!?」
ダイゴ「勝手に人の親の再婚のネタを新聞に載せたやつなんか信用できるか!!」
「おい、なんだかあっちが騒がしいぞ…」「なんかダイゴの妹が矢澤つぼみだがなんだかって…」「えっ!?本当に!?」
いつの間にかウワサを聞き付けた生徒たちで廊下の隅はパニックに…
ダイゴ「…ああ、ここまでパニックになっちまったらもう白状するしかねえな…はいそうですよ!オレの妹は子役の矢澤つぼみ、その人ですよ!」
「本当だったの!?」「今度是非会わせて!」「妹がファンなの!サインちょうだい!」「一緒に写真おねがい!」
ダイゴ「サインとか写真とかは後で本人に確認してみるが…いいかみんな、このことは絶対外部にはもらすな!再婚のことはケイコさん…オレの新しい母ちゃんが公に報告する方針で調整しているが…もし外部に住所が特定される事態になったら我が家だけでなくつぼみの子役生命にかかわることになっちまうからな…と・く・にソウジ!もしもらしたらお前と絶交も辞さないぞ!」
ソウジ「イヤイヤ、さすがの僕でもそんなことは致しませんよ…すべてはつぼみちゃんのため、そして石嶺家のため…」
ダイゴ「お前は口軽いし前科があるから言われるんだよ!」
ソウジ「まあ、自業自得だよな…失礼…ダイゴお兄様、我々はしっかりとつぼみちゃんの秘密を守ります!信じてください!もしもれてしまうことがありましたら私はポケ〇でもなんでもあなた様に捧げます!」
林田先生「聞きましたよ…私たち教職員一同も協力します!私もつぼみちゃんのドラマをいっぱい見てきたファンのひとりですからね!」
「先生まで…ありがとうございます!」
こうしてダイゴは妹の真実を思わぬ形で学校の皆に話し、約一名心配な人はいるが強力な協力体制が整い、投稿再開1日目はその後無事に幕を閉じた…
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