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記録ノ15 おぼえてね ごめんねきみを わすれてた

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僕の通っていた幼稚園では毎年2月に郵便ごっこという園全体で行われるビッグイベントが存在する。
絵やメッセージを描いた手紙(使うハガキは本物ではなくハガキサイズの厚紙)を園内のポスト(これも本物ではなくダンボール製のもの。でも大きさはなかなかだった)友達や先生に送りあうイベントだ。

期間は1か月ほどの長期にわたるが、年中まではその期間中に送る手紙の数に指定はなし、手紙を送らない日があってもいいというルールで実際僕は年中の時はめんどくさくてほとんど送ってない。
しかし年長では期間中は必ず1日1枚送らなければならない。そして年中まではハガキの裏面には文字は書いても書かなくてもいいことになっていたが、年長では小学校入学に向けた字の勉強を兼ねて文字を描くことが義務づけられる。
園児全員に手紙に使えるメッセージ例が記された(よろしくね、おてがみありがとう 等)ひらがな五十音表が渡され、皆それを見ながら手紙を書いた。

人一倍覚えが遅く、字を書くのが苦手だった僕は常に先生に手伝ってもらってた。
字の書きかたを教えるために僕の手を引っ張る先生の手は痛かった。でもおかげで少しづつ書ける文字が増えてきた。
僕はいつも親しいクラスメイトから一人をランダムに指名し、手紙を書いていた。

そして友達からの手紙が初めて園児たちに配られる日。先生が一人一人に教室で手紙を手渡す。
そしてほかのクラスの子から手紙が届いた子には「ほかのクラスから手紙が届いてまーす」と知らせてくれた。
クラスのほとんどの子がほかのクラスの子から手紙が届いていたが、僕はほかのクラスの子との交流なんて以前に同じクラスだった子を除いてほとんどない。だからほかのクラスの子から手紙が届くことなんぞないと思っていた。しかし…

「リョーマくーん、ほかのクラスの子から手紙が届いているよー」
なぜかショックだった…ほかのクラスの子から手紙が届けば本当はうれしいはずなのに…自分の予想が外れたのだか
らだろう。

その送り主だが、個人的に心当たりがあったのは年中まで2年間同じクラスで、年長で別のクラスになった後も家族ぐるみで交流がつづいていた「マヒト」という男子。彼からの手紙だろうと予想していた。
しかし手紙を見てみると違った。その送り主は「ヤマウチ ミイナ」という女子であった。
「誰やねん!」僕はピンとこなかった…
そして手紙に書かれていたのは「おぼえてね!」の文字。
「おぼえてねってそりゃオマエのこと知らんもん!」僕の心はそんな感じだった。
しかし僕は彼女と接点があったのである…

帰宅後、その手紙を見た母は彼女のことを覚えていた。
ミイナは年中まで2年間、僕とクラスメイトで、僕自身も母と一緒に彼女の家に遊びに行くなど親しくしていた。
しかしクラスが変わってすっかり交流がなくなってしまい、自分のことなんぞ忘れられてるだろうと思った彼女が僕に自分のことを思い出してほしいと手紙を出したのだろう。とは母は推測した。

そして彼女への返信だが、僕は何の根拠があってかは知らないが、自分の意味不明なプライドで返信はしなかった。
彼女には今となっては申し訳ないと思っている。

最後に15年以上越しに彼女に謝罪の一句。
おぼえてね ごめんねきみを わすれてた
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