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第4部 漫画・出版史
タイトル変われど笑いは変わらず~でんぢゃらすじーさんの改題~
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月刊コロコロコミック2010年3月号、この号をもってコロコロの看板ギャグ「絶体絶命でんぢゃらすじーさん」はおよそ8年半に及ぶ笑いの物語に幕を閉じた…かに思われた。
しかし感動の最終回とその後の読者コーナーの次のページに突然じーさんと孫が現れ、次号から「でんぢゃらすじーさん邪」として新たなスタートを切ることを発表。だが内容は今まで通りと同時に発表されている。
後述するようにすでに以前から最終回に向けた動きがいろいろあった中で当時の読者誰もが「コロコロの看板作品の終了」に悲しみに暮れるかとなったタイミングでの継続発表は多くの読者を驚きと歓喜に包みこんだ。
ではなぜ特に内容を変えないのにタイトルを変更するに至ったのか?それにいたってはこんな事情があった。
タイトルの変更が初めて検討されたのは単行本15~16巻ごろ。すでにこれだけ巻数が出ている状況なら子供たちが新規に買いずらいのでは?との当時の担当の鶴の一声があり、曽山先生も「17巻からだと子供は買いずらいだろう。子供の気持ちを考えると1巻から読みたいよね。切りのいいタイミングで変えよう」と決断し、20巻のタイミングでタイトルを変更することとなった。
長期作品のデメリットのひとつが「新規が入りにくい」という問題点。「あの漫画読んでみたいけどもう何十巻も出てるから追いつくのは大変」ということはあるあるである。ストーリーものなら特に顕著だ。「途中から読んでも何言ってるのかわかんないから前の巻も読みたい。でも巻数がいっぱいあるから大変」というのが読むのをためらってしまう理由のひとつである。
だがじーさんは1話完結のギャグマンガ。基本的にどの巻から読んでも笑える。それでも子供たちの感覚から考えれば1巻から順番に読みたい子は多いはずだ。
それにコロコロは小学生のための雑誌であることを忘れてはならない。ジャンプやマガジンの読者層よりも低年齢のコロコロ読者は当然それらの雑誌の読者よりも少ない小遣いでやりくりしている。そんな子供たちがすぐに17巻ある単行本を一気に買えるか?当時のコロコロ単行本の値段は税込み410円。すなわち全巻まとめて買ったら6970円。大人でもためらってしまう金額だ。やっぱり読者の懐事情を考えてもリセットしたのは得策だったであろう。
最初にじーさん終了を示唆する発言が出たのは2009年10月号の別冊付録大長編「いのちときもちとぱぱぱぱぱーっ!?」。この冒頭で「最後の大長編」とのメッセージが書かれ、じーさんの終了が初めて示唆された。
僕も当時この文で「じーさん終わっちゃうのか…」とせっかくの大長編を読み始める前からお通夜ムードだった。でもこの時点では「じーさんが終わる」とは言ってないので、単に「大長編が最後」という意味だろうと予想した人も多かっただろう。
だがその翌11月号の扉絵でじーさんが突然「このマンガあと4回で終わるよ~」と爆弾発言。正直僕はこの発言がウソかホントかわからなかった。大長編の件を考えればホントの可能性が高いが、じーさんのことだし、その時の扉絵でもじーさんが悲しい顔一つもせずめっちゃ笑顔だったのでじーさんらしいジョークかもと思った。
だがこの回では2年に1度の運動ならなんでもおまかせ隊が登場したのだが、彼らの退場後にいつもだったらじーさんの口から放たれる「やつらの次の登場は2年後」のお約束のセリフが無かった。これでより完結の信ぴょう性が高まった。
同時期に発売した単行本18巻のカバーをとった裏表紙のお悩み相談コーナーでもじーさんが「このコーナーはあと3回で終了」とアナウンス。もうこれは完全にシロだ。じーさんは終わるんだ…
そして1ヵ月後の2010年1月号。この時の話はいつもと違う内容で、完全に最終章だとわかるような雰囲気であった。
孫の前に突如「本当のおじいちゃん」を名乗る老人が現れ、孫を連れ去ってしまうというシリアス調のストーリーが展開。前回の発言を疑ってた人でも、この時点でじーさんの完結をシロと思った人は多いはず。
そしてこの話にはオチが無く、次回に続く形式となり、次の回で本当のおじいちゃんの正体は70年後の未来から来た孫だったことが判明。彼が「久しぶりに会えてうれしかった」とじーさんに意味深な言葉を残して帰っていった直後にここまでの出来事が孫の夢だったという夢オチ…かと思いきや孫が未来の自分が言っていた上記の発言を思い出し「あたりまえだが70年後におじいちゃんはいない」「いつかはおじいちゃんとの生活に別れを告げなければならない」ことを示唆したところで次回が最終回とついに発表。ここで多くの読者が悲しみに暮れた。
僕も発売日に出先のコンビニで買って出かける途中の車の中で読んでいたが。思わず「マジかよ!」となってしまった。
そして次の最終回。掲載号に乗っていた次号予告にはどこにもじーさんの姿はなく、これで誰もが終わると確信したであろう。
最終回は序盤で「突然じーさんが行方不明になり、その後お墓が発見された」として「じーさんの死」が描かれる(今までも数えきれないぐらい死んでその都度生き返ってきたのに何をいまさらと思った読者も多いはず)。
だがじーさんは生きており、このお墓が「おばあちゃん」のお墓だったことが判明。おばあちゃんは11年前に孫が生まれた日に死んだ。じーさんは「おばあちゃんは死んじゃったけどいなくなったと思ったことはない たとえ会えなくてもずっとつながってるのが家族」と孫に伝え、物語は幕を閉じる…
が、すぐさま予告で「でんぢゃらすじーさん邪」発表。じーさんの日常はまだまだ続く。というオチ。
じーさんの終わりが見えたときは本当にショックで、つらくてたまらなかった。
だがさんざん読者を泣かせたあげく、結局続きますというのはじーさんらしいサプライズと言えよう。
しかし感動の最終回とその後の読者コーナーの次のページに突然じーさんと孫が現れ、次号から「でんぢゃらすじーさん邪」として新たなスタートを切ることを発表。だが内容は今まで通りと同時に発表されている。
後述するようにすでに以前から最終回に向けた動きがいろいろあった中で当時の読者誰もが「コロコロの看板作品の終了」に悲しみに暮れるかとなったタイミングでの継続発表は多くの読者を驚きと歓喜に包みこんだ。
ではなぜ特に内容を変えないのにタイトルを変更するに至ったのか?それにいたってはこんな事情があった。
タイトルの変更が初めて検討されたのは単行本15~16巻ごろ。すでにこれだけ巻数が出ている状況なら子供たちが新規に買いずらいのでは?との当時の担当の鶴の一声があり、曽山先生も「17巻からだと子供は買いずらいだろう。子供の気持ちを考えると1巻から読みたいよね。切りのいいタイミングで変えよう」と決断し、20巻のタイミングでタイトルを変更することとなった。
長期作品のデメリットのひとつが「新規が入りにくい」という問題点。「あの漫画読んでみたいけどもう何十巻も出てるから追いつくのは大変」ということはあるあるである。ストーリーものなら特に顕著だ。「途中から読んでも何言ってるのかわかんないから前の巻も読みたい。でも巻数がいっぱいあるから大変」というのが読むのをためらってしまう理由のひとつである。
だがじーさんは1話完結のギャグマンガ。基本的にどの巻から読んでも笑える。それでも子供たちの感覚から考えれば1巻から順番に読みたい子は多いはずだ。
それにコロコロは小学生のための雑誌であることを忘れてはならない。ジャンプやマガジンの読者層よりも低年齢のコロコロ読者は当然それらの雑誌の読者よりも少ない小遣いでやりくりしている。そんな子供たちがすぐに17巻ある単行本を一気に買えるか?当時のコロコロ単行本の値段は税込み410円。すなわち全巻まとめて買ったら6970円。大人でもためらってしまう金額だ。やっぱり読者の懐事情を考えてもリセットしたのは得策だったであろう。
最初にじーさん終了を示唆する発言が出たのは2009年10月号の別冊付録大長編「いのちときもちとぱぱぱぱぱーっ!?」。この冒頭で「最後の大長編」とのメッセージが書かれ、じーさんの終了が初めて示唆された。
僕も当時この文で「じーさん終わっちゃうのか…」とせっかくの大長編を読み始める前からお通夜ムードだった。でもこの時点では「じーさんが終わる」とは言ってないので、単に「大長編が最後」という意味だろうと予想した人も多かっただろう。
だがその翌11月号の扉絵でじーさんが突然「このマンガあと4回で終わるよ~」と爆弾発言。正直僕はこの発言がウソかホントかわからなかった。大長編の件を考えればホントの可能性が高いが、じーさんのことだし、その時の扉絵でもじーさんが悲しい顔一つもせずめっちゃ笑顔だったのでじーさんらしいジョークかもと思った。
だがこの回では2年に1度の運動ならなんでもおまかせ隊が登場したのだが、彼らの退場後にいつもだったらじーさんの口から放たれる「やつらの次の登場は2年後」のお約束のセリフが無かった。これでより完結の信ぴょう性が高まった。
同時期に発売した単行本18巻のカバーをとった裏表紙のお悩み相談コーナーでもじーさんが「このコーナーはあと3回で終了」とアナウンス。もうこれは完全にシロだ。じーさんは終わるんだ…
そして1ヵ月後の2010年1月号。この時の話はいつもと違う内容で、完全に最終章だとわかるような雰囲気であった。
孫の前に突如「本当のおじいちゃん」を名乗る老人が現れ、孫を連れ去ってしまうというシリアス調のストーリーが展開。前回の発言を疑ってた人でも、この時点でじーさんの完結をシロと思った人は多いはず。
そしてこの話にはオチが無く、次回に続く形式となり、次の回で本当のおじいちゃんの正体は70年後の未来から来た孫だったことが判明。彼が「久しぶりに会えてうれしかった」とじーさんに意味深な言葉を残して帰っていった直後にここまでの出来事が孫の夢だったという夢オチ…かと思いきや孫が未来の自分が言っていた上記の発言を思い出し「あたりまえだが70年後におじいちゃんはいない」「いつかはおじいちゃんとの生活に別れを告げなければならない」ことを示唆したところで次回が最終回とついに発表。ここで多くの読者が悲しみに暮れた。
僕も発売日に出先のコンビニで買って出かける途中の車の中で読んでいたが。思わず「マジかよ!」となってしまった。
そして次の最終回。掲載号に乗っていた次号予告にはどこにもじーさんの姿はなく、これで誰もが終わると確信したであろう。
最終回は序盤で「突然じーさんが行方不明になり、その後お墓が発見された」として「じーさんの死」が描かれる(今までも数えきれないぐらい死んでその都度生き返ってきたのに何をいまさらと思った読者も多いはず)。
だがじーさんは生きており、このお墓が「おばあちゃん」のお墓だったことが判明。おばあちゃんは11年前に孫が生まれた日に死んだ。じーさんは「おばあちゃんは死んじゃったけどいなくなったと思ったことはない たとえ会えなくてもずっとつながってるのが家族」と孫に伝え、物語は幕を閉じる…
が、すぐさま予告で「でんぢゃらすじーさん邪」発表。じーさんの日常はまだまだ続く。というオチ。
じーさんの終わりが見えたときは本当にショックで、つらくてたまらなかった。
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