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第4部 漫画・出版史

コロコロに立ち向かう新興勢力たち~ブンブン・ケロA・テレまん・最強ジャンプ~

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ボンボンの衰退期~休刊以降もコロコロに対抗する児童誌は各社から創刊されていき、どれもコロコロの牙城を崩すまでには至ってないものの、それぞれで独自のカラーを出しながら王者コロコロに立ち向かっていった。今回は00年代~10年代初頭に創刊した児童誌界4つの新興勢力を分析しよう。

まずポプラ社より2003年12月創刊の「プレコミックブンブン」。児童書界のトップランカーが児童漫画界に殴り込み。看板コンテンツは同社の最大の看板作品であるかいけつゾロリ。創刊時期はちょうど同作のアニメ開始2ヵ月前というタイミングであり、当時の坂井社長曰く「アニメ化に際して他社に雑誌掲載をとられるのを防ぐ」というのが本誌の創刊理由のこと。
ゾロリ以外にはズッコケ三人組やぼくらシリーズ(当時はポプラ社が版権を所有)などの同社の児童文学のコミカライズや「忍たま乱太郎」などの外部版権のコミカライズやゲームなどとのタイアップ(ちなみに忍たまはポプラ社からも関連書籍が出ていたことがある)、オリジナル作品などを展開。コミック界では新人でも児童書界では大ベテランのポプラ社。児童書界のトップとしての豊富なソフトと他の児童誌に倣ったタイアップ路線で戦ってゆく。
そしてこの雑誌の大きな特徴が当初のコンセプトが児童誌では珍しい「両性向け」であること。ゾロリもそうだが忍たまなど両性に人気のある作品や同社の「まじょ子シリーズ」のコミカライズなどの女児向けの作品も男児向けに混じって掲載されていた点でコロコロやボンボンとは異彩を放つ。幅広い層を取り入れてコロコロなどとの差別化を図ろうといったところだろう男女両性むけ問わずヒット作を連発してきたポプラ社らしい考えと言えよう。個人的にはもしかするとブンブンはコロコロではなく学年誌的なポジションを目指していたのではないかと考える。児童文学のコミカライズなどの教育的な側面も考えるとコンセプト的には学年誌に近いものがあるかもしれない。
だがブンブンも次第にコロコロのように男児向け色を強めていき女児向け作品や児童文学のコミカライズが少なくなっていき、2008年10月に「月刊コミックブンブン」に改題してリニューアルするも約1年後の2009年9月に休刊した。両性向けで戦うのは難しかったが、コロコロという絶対王者がいる男児向けで戦うのはもっと難しかったというところか。
ちなみにブンブンオリジナルからは1本だけアニメ化作品を出している。2008年にアニメ化した「カードライバー翔」である。「月刊コミックブンブン」への改題と同時期に始まり、1年後の休刊と同時期に終了するというまさに運命を共にすることとなった作品であった。

続いて2007年10月に角川から創刊された「ケロケロエース」。誌名どおり同社の看板コンテンツであるケロロ軍曹をメインに据えた雑誌だ。当時の時点でケロロのアニメは4年目。低年齢層にも認知されていたなかで中高生以上のオタク層に強い角川は自社が得意とする層より下の層を狙った本誌を創刊することによって「ケロロ目的で本誌を読み始めた読者が将来的に少年エースや電撃文庫などに移っていってもらう」「低年齢層に向けた自社の多彩なコンテンツへの入口」を目指したのだと思う。
ケロロ以外にもガンダムやエヴァといった同社の主要コンテンツやバトルスピリッツやヴァンガードといったカードゲームやゲームとのタイアップ作品などを連載。バトスピは当初ケロロやガンダムに次ぐ主力として、同作のアニメ内では主人公がナレーションを担当する特別なCMが放送されるなど大きくプッシュしていたが、「ヴァンガード」の掲載開始後は後述の最強ジャンプに掲載権を譲り撤退していった。単にカードゲーム同士で競合して共倒れになるのを避けたかったのだろう。
エヴァなどの高めの年齢層向けの作品を児童誌にぶち込むと言った点ではマニアックな要素を多数入れたことで知られるボンボンに近いものがあると言えよう(ちなみにボンボンでもエヴァの記事が掲載されていた)。しまいには「スレイヤーズ」のコミカライズまで掲載されるぐらいだから。
これまたブンブンとは違った意味で異彩を放った雑誌であったが、2013年7月をもって5年9カ月の歴史に幕を閉じだ。後継としてブシロード作品を中心とした「月刊ブシロード」がブシロード発行、角川発売で2024年まで刊行されていた。ヴァンガードの漫画などはこちらに移行したのだが、ブシロードのコンテンツを中心とした誌面構成ゆえに本誌よりターゲット層は高めなはずなので後継とは言いにくいだろう。
個人的にはあの当時以上にネットが普及して小学生が本来高年齢層向けのコンテンツにより触れるようになり、小学生が深夜アニメを観るのが当たり前になった2020年代の現代に創刊していたらコロコロに勝てるとまではいわなくてもそこそこ奮闘したのではないかと思う。「早すぎた雑誌」か。

続いて2008年3月に講談社から創刊した「テレまんがヒーローズ」。テレビマガジンの増刊扱いだが、ボンボンの事実上の後継誌と言える雑誌で、ゲゲゲの鬼太郎やデルトラクエストなど計4作品がボンボンより移籍。「へろへろくん」のかみやたかひろ先生などボンボン連載経験作家も参加した。
さらにテレマガの増刊、「ヒーローズ」という誌名もさることながら、戦隊・ライダー・ウルトラと言った特撮関連のコミカライズも連載。コンセプト的にはテレマガとボンボンの間を狙った雑誌で、ボンボン末期の迷走の反省からボンボンより低年齢層を狙ったものだったのだろう。
この雑誌は不定期刊で2009年8月までに計5号発売されたがその第5号をもってすべての連載作が完結。公式のアナウンスがないまま以降は刊行されずに事実上の休刊状態となった。ある意味ボンボンより悲しいラストである。

最後に取り上げるのは2010年12月創刊の「最強ジャンプ」。漫画界の不動の王者・ジャンプが児童誌に殴り込み。
ワンピースやドラゴンボールなどの低年齢層にも人気のあるジャンプ作品のスピンオフを中心とした誌面構成。
低年齢層にアピールしなくてもすでにジャンプ作品は大人気なのになぜ低年齢層向けの施策をとったのか?と思う方もいるかもしれないが、ジャンプとしては「将来のジャンプ読者を育てる=本誌を読んだ読者に卒業後そのままWJに行ってもらう」というのが最大の目的。少子化と雑誌不況で将来的にもさらなる雑誌読者の最大分母の減少がすでに謳われていたなかで早めに手を打って少なくなる読者候補をできるだけ多く獲得しておきたいというのがジャンプ側の思惑だろう。ジャンプといえど部数の減少は最大の問題。単行本は売れているが雑誌本体の部数も増やしたいという思いは絶対にある。だからこそ「ジャンプの体験版」としてこの雑誌を創刊させたのだろう。
当初はほぼ季刊ペースで刊行したのち創刊から約1年後に月刊に昇格。
月刊化直後の部数は30万部。そのご2012年は20万部台、13年は19~18万部台で推移。同時期のコロコロが70万部~56万部台で推移していたことを考えるとその牙城を崩すことはできなかったがジャンプ自体のブランド力もあり、そこそこ奮闘したほうだろう。
だが2014年夏に隔月刊に降格。ちょうどこの時期コロコロは妖怪ウォッチブームでウハウハだった時期、個人的に「今の無双状態のコロコロにはかなわなかったか」とおもい、失礼ながら数年以内に消えてしまうものと思っていた。
だがジャンプのブランド力は強し。他の雑誌なら隔月刊に降格したら数年以内に消えてしまうことが多いものの最強ジャンプは刊行を続け一定の支持を維持し、7年後の2021年に再び月刊に昇格。隔月刊に降格したのち再昇格はなかなかない例だろう。ジャンプのブランド力の強さを物語っている。ちょうどジャンプ自体も鬼滅やら呪術やらでウハウハで低年齢層にもそれらが認知されたからここいらで月刊にしようと思ったのだろう。
この雑誌は2024年現在も刊行中。コロコロのライバルの中ではボンボン以来の奮闘勢と言えるだろう。
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