リョーマ的Y2K子供文化史考

一刀星リョーマ

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第4部 漫画・出版史

コロコロVSボンボン時代の終焉

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今回から始まる第4部では00年代~10年代初頭の子供文化を取り囲むマンガと出版の歴史を分析してみよう。
今回は2000年代の出版史における大きな「政変」とも言えるコミックボンボンの休刊とそれによる児童誌市場におけるコロコロ一強体制の確立を分析しよう。

まずかつて最大のライバルと言われたコロコロとボンボン両誌の創刊から90年代までの戦績や状況を振り返ってみよう。
コロコロが創刊したのは1977年。当初は3カ月に一度の季刊誌で、9か月後に隔月刊に昇格。創刊から2年たった1979年春に月刊化して現在に至る。ちょうどこの時期にドラえもんのアニメ(大山ドラ)が始まり、藤子作品ブームが後押しする形で部数を伸ばしていった。
ボンボンはコロコロ創刊4年半後の1981年10月に創刊。ガンダムやガンプラを中心とした誌面作りで次第に読者を増やしていき、同時期にコロコロの後を追うように創刊していった他社の児童誌が軒並み短命に消えていったのに対して「コロコロ最大のライバル」として長年にわたって互角の戦いを繰り広げ、第一次ミニ四駆ブームの終了などでコロコロが低迷していた91年~93年の3年間は「武者ガンダム」人気でボンボンが一気に追い上げ児童誌のトップの座をコロコロから奪った。
だが差がつき始めたのはその翌年。コロコロが「爆走兄弟レッツ&ゴー」をスタートさせ、その2年後の96年にアニメ化するなど同作が第二次ミニ四駆ブームの火付け役となりコロコロに追い風が吹き始める。
ボンボンを大きく突き放す決定打となったのがポケモンブーム。96年の第一作「赤・緑」の発売とほぼ同時に別冊コロコロで「ふしぎポケモンピッピ」(後にポケットモンスターに改題。いわゆる穴久保ポケモン。またの名をギエピー。)を連載開始し、秋には月刊に昇格。ポケモンアニメの開始によるポケモンブームの加速とレッツ&ゴーの映画化によりミニ四駆二次ブームがピークに達したことにより97年にコロコロは2024年現在も破られていない史上最高の200万部を突破。一気にボンボンを突き放し、完全にコロコロが主導権を得た。
ちなみにネット上では「ポケモンは最初ボンボンにタイアップを持ち込んだがボンボンが断った」というエピソードが公然の事実のように一部で通っているが、そもそもその情報源がどこなのかは不明であり、明確に名前を出した元編集部員などの信頼できる筋からの証言はなく、ウィキペディアでもこの記述は要出典になってるのでここでは事実として扱わない。僕的には後述するボンボンの没落っぷりを過剰に揶揄するために生まれたジョークではないかと考えている。

ここからは2000年代以降の両誌の傾向を見ていこう。
コロコロは90年代末にポケモンとミニ四駆だけでなくハイパーヨーヨーやスーパービーダマンなどをヒットさせたのち2000年代もホビーやゲームでは「ムシキング」「デュエル・マスターズ」「ベイブレード」などがヒット。
ムシキングは第一部で触れたように後にアーケードカードのパイオニアと呼ばれるほどの社会現象を巻き起こし、ベイブレードもアニメが始まった2001年の上半期だけで1500万部をうりあげ、どこに行っても品薄な状況が半年以上続くという社会現象となり、現在まで4シリーズが展開されている。
デュエマは現在もなお続くコロコロの看板として定着。入れ替わりの激しいカードゲーム界で20年以上にわたって生き残り続けている。
さらに長年ボンボンの看板であったロックマンシリーズの掲載権もエグゼ以降獲得。ロックマンエグゼはアニメ化もされ00年代コロコロの看板作品のひとつとなった。
一方この時期のボンボンはというと、90年代末から00年代初頭にかけて「メダロット」や「デビルチルドレン」「ロボットポンコッツ」といったこの時期多かったポケモンフォロワー的作品とのタイアップを「数うちゃあたる」的に乱発した結果、アニメ化などの一定の成績を残したものはあったものの、多くはコロコロホビー&ゲームの前に惨敗。ロックマンエグゼも元々ボンボンでタイアップの予定がボンボン側がアニメのスポンサー料をケチって断ったという経緯がある。(これは当時の編集長が太田出版の「CONTINUE」という雑誌で語っていたことなので事実)
そしてボンボン最大の看板コンテンツであったガンダムも「SEED」あたりから角川グループに雑誌掲載の主導権を取られてしまい、ボンボンでも引き続きガンダムのコミカライズはつづくものの、角川が独占している作品のモビルスーツは出せないなど衰退していき、扱いが小さくなってしまった。
「何をやっても大抵当たる」コロコロと「何をやってもほぼ外れる」ボンボン。ここまでわかりやすいぐらい、そして悲しいぐらい差がついてしまっていた。

コロコロとの差が開いていく中でボンボンは2006年1月号にて大規模なリニューアルを実施。誌面を大判化し、タイアップ作品は多少残るもののオリジナル作品の比率を増やしていき、同じ講談社の他誌からの漫画家の加入が増える。マガジン系列はまだしも、「モーニング」などの青年系からも作家を招き、児童誌らしからぬ執筆陣の濃さはボンボンの迷走を語るうえでアイコン的存在として取り上げられるほど。
だがリニューアルした時点で10万部弱だった部数は5万部に低迷し、末期となった2007年には当時アニメが放送されていた児童文学原作の「デルトラクエスト」とアニメ五期が始まった「ゲゲゲの鬼太郎」をメインに据えるが、この年の11月をもって休刊。かつてコロコロと児童誌の王者を争った雄は26年の戦いに終止符を打った。

ボンボンが低迷して言った原因だが、もちろんポケモンブーム以降のコロコロが強すぎたというのもあるだろうが、個人的には「ポケモンブーム時に小手先で人気に対抗しようとフォロワー作品を連発したのが敗因のひとつ」と考えている。
もちろんメダロットやデビチルはヒットしたので一概には言えないが、ライバルのコロコロはボンボンがガンダムで台頭し始めたときに単に人気があるからという理由で小手先でその人気に乗るのではなく、しっかり子供たちの間ではやってるものを調査し、結果としてミニ四駆ブームやビックリマンブームにつながっていったという経緯がある。
だがボンボンはあまりに追い詰められていっぱいいっぱいだったのか小手先でコロコロゲームやホビーの人気に乗っかろうとした。もう少しボンボンがしっかり子供たちの流行をリサーチしていればこの雑誌はもう少し続いていたかもしれない。
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