リョーマ的Y2K子供文化史考

一刀星リョーマ

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第3部 アニメ・特撮総合史

親世代のアニメの子供たちへの再生産~鬼太郎5期、平成版ヤッターマンを例に~

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過去のヒット作のリメイクや再アニメ化は昭和の時代から行われてきた。「アニメは子供のもの」という認識が強かった時代からだ。
だがそんな認識が強かった昭和の時代は子供たちがまだ旧作を覚えているぐらいのブランクの作品から選ばれていた。
しかし昭和末期~平成初期あたりになるとアニメのある幼少期を過ごした世代が親となっていき、十数年以上のブランクのある親世代の作品のリメイク・新作が目立つようになってきた。1989年から2年間放送された「魔法使いサリー」第2作がその例だ。すでに旧作から23年経過し、親となった旧作世代からも支持された結果2年続く旧作同様のヒット作となった。
もちろんこの傾向は2000年代以降でも健在だ。今回は2000年代のリメイク系作品から「ゲゲゲの鬼太郎5期」と「平成版ヤッターマン」を分析してみよう。

「鬼太郎5期」は2007年に放送開始。1996年~98年まで放送された4期以来9年ぶりの新作だ。
この時点ですでに5回目のアニメ化。当時の子供たちの親世代は1期~3期あたりを見ていた世代が多く、鬼太郎は「2世代キャラクター」としてすでに成長していた。
鬼太郎のアニメといえば「人間のレギュラーヒロインを置き、人間と妖怪の融和をテーマとした3期」「原作の怪奇性とクールさに原点回帰した4期」といったようにシリーズごとに特色があるのが特徴だが、5期の特徴は「妖怪の住む町」。
妖怪たちが住む「妖怪横丁」が物語の基点となる。これまでのシリーズの基点である「ゲゲゲの森」は名前通りの単なる森だったが、妖怪横丁は「横丁」の名の通りノスタルジックにあふれた開発された町である。おなじみのレギュラー陣からマイナー妖怪までさまざまな妖怪たちが住まい、妖怪たちが営む店も多数点在。あずき洗いが営む饅頭屋(あずき→あんこの発想だろう)、豆腐小僧の営む豆腐屋のように各妖怪の特徴を生かした店も多い。妖怪が住む町を舞台としたことでより多くの妖怪を一度に出すことができるようになったので視聴者的にも飽きが来ないしこの設定は発明だと思う。鬼太郎のアニメは「映像で観る妖怪図鑑」の役割もあると僕は考えている。「妖怪横丁」自体が「町の形をした妖怪図鑑」といえるのではないか。妖怪というタレントが多い題材。その多くのタレントたちを一つの街の住人として描くことによりにぎやかな画面作りにも成功している。
さらに2年目からはさらなる独自要素として各都道府県を代表する妖怪から1体ずつ選出された「妖怪四十七士」が登場。こちらも砂かけ婆(奈良代表)や一反木綿(鹿児島代表)といった鬼太郎ファミリーにくわえてざしきわらし(岩手代表)といったメジャー妖怪、亀姫(福島代表)のようなマイナー妖怪や当時はまた一般の知名度はなかったアマビエ(熊本代表)までそろい踏みのまさに「妖怪日本代表」だ。
各都道府県から必ず1体選出されるのは地方の視聴者にはうれしいだろうし、地元の人間でも知らないような妖怪も出てきて「自分の地元にこんな妖怪がいるんだ」とより妖怪や地元に興味を持つきっかけにもなる視聴者が鬼太郎を通じてより妖怪や地元に興味を持ってもらうと言った点で考えても良い取り組みだ。
こういったエンターテインメント要素に振ってより親子二世代で楽しめる作品となった5期鬼太郎の世間の評価はそれなりにあった。視聴率も二桁いくことがあったし、2008年のバンダイこどもアンケートでも男女別、総合、年齢別ともにトップ10入りこそしてないものの、名前が結構上がっていたようだ。実際僕の周りにも視聴者はいっぱいいた。
だがそれは残念ながらグッズ等の売り上げにはつながらなかったようだ。四十七士の導入に始まりスタッフはさらなる長期化を見据えていたようだが、グッズの売り上げ不振や放映期間に発生したリーマンショックの影響などにより2年で幕を閉じることとなった。四十七士もTVシリーズでは半分ほどの24体しかそろわず、一応放送期間中に公開された劇場版「日本爆裂」が5期最終回後の後日談となっているためTVシリーズ未登場のメンバーを含めてそこで全員集合してるので一応そろい踏みは描かれたのだが、スタッフとしても不完全燃焼で終わってしまったのは悔しい限りだろう。

続いて2008年より始まった「平成版ヤッターマン」
1作目の放送から当時の時点で30年ほど経過。こちらも当時の子供たちの親世代の作品だ。
ストーリーは旧作の「ドクロストーン争奪戦」から「いくつか集めると願いをかなえることのできるドクロストーン争奪戦」に変更となり、ストーリー面も当時の時事ネタや流行ネタのパロディが多いが、ドロンボーのインチキ商売やメカ戦、そしてドクロベエ様のおしおきなど旧作の魅力はほぼ余すことなく引き継がれ、見事に親子2世代で楽しめる作品に仕上がっている。
ヤッターマン側のメカも本編では旧作の1年目に登場したヤッターワン・ペリカン・アンコウの3体がレギュラークラスで登場。特にアンコウは旧作よりもキャラクター的な見た目をしている現代(当時)の子供の趣向にあわせたアレンジがしてあるがあとの2体は原作にほぼ忠実。
タイアップ面でもタカラトミーから主要メカの玩具化やコロコロコミックではまさかのボヤッキーが主役の漫画「ボケボケボヤッキー」の連載など当時の子供たちに大いにアピール。
こういった施策により放送開始3か月後の上記のこどもアンケートでは男子6~8歳部門でトップ10入り。
確かに一定の反響はあったのだが、それ以上にネックとなったのが「放送回数の少なさ」であった。
放送枠はコナンの手前の枠でもある日テレ系月曜夜7:00。だが特番による長期の休止も多く、この枠での最後の放送である2009年3月15日放送分の時点で番外編含めても37話。放送から1年3カ月としては異例の少なさである。
前番組である結界師もゴールデン時代は休止が目立ち月曜夜での放送期間は1年に対してそこで放送された話数は本作と同じ37話。だが結界師よりも3カ月長く放送されているヤッターマンが同じ話数しか放送できてないのはかなりの大問題だ。実際ヤッターマンには2ヵ月も休止した期間があった。結界師だって長くて1ヵ月だったのに。
このことは日テレとは系列にあたる読売新聞の読者投稿欄にもファンからの苦言が載せられたほどであった。
実際視聴率は3月3日放送分が10.0%、5月1日放送分が8.5%、9月1日放送分が7.9%(日付はすべて2008年)と回を重ねるごとに低下傾向にあったようだがそれでも低視聴率に苦しみ続け、最高でも8%と2ケタになることはなかった結界師よりは奮闘していた数字だ。だが局側としてはもっと期待していたのかもしれない。もっと親子に見てもらいたかったのだろう。
そういったリスク回避もあって2009年4月からは日曜朝に移行(ちなみにコナンも同時期に現在の土曜夕方に移動している)。その半年後に終了してしまうのだが、それでもこの期間中の休止は24時間テレビのために休止した1回のみであった。
ゴールデン時代にもっと放送していれば、もしくは最初から日曜朝にやってればもっと長続きしていただろうか。
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